龍羽ワンライ【銃】 石神村から離れた場所の、小さな滝がある岩場の近く。
緑と灰色の景色に混ざり、僕は今、息をひそめている。
二日前に雨が降った影響で、滝の勢いはやや強く、水の落ちゆく音が耳にはよく届いた。かすかな人の声くらいなら簡単にかき消されるだろう。僕自身はというと声を出さず、大きな岩とそこに寄りかかるような木の根元に身をおさめ、周囲の様子をうかがっていた。空気は涼しいはずなのに首筋や背中には汗が流れていて、自分の身体が緊張していることが分かった。
手の中には、鉄の重みがある。その鉄の塊には部品としての尾筒があり、スライドがあり、グリップと撃鉄があり、引き金がある。
この世界で自分がこんなものを握る日がくるなんて思っていなかった。
2305