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    かさい

    @kasaibw

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    かさい

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    🍗🍭海賊イベネタです。

    煌めく宝石 クルージング最終日。
     連日賑わいを見せた船内も最終日の早朝ということもあってか、しんと静まり返っていた。

     アッシュが船内の見廻りをしていると、船首の方に見覚えのある人影がいた。その人影は手すりにもたれ掛かり、光り始めた海の向こうをじっと見つめていた。

     そちらに向かって歩みを進めると、足音に気付いたのかこちらを振り返った。すっかり見慣れたオレンジ色の髪をした後輩のその顔には、いつものゴーグルはおろか衣装の一部である眼帯すら着けていない素顔のままだった。

    「あ、アッシュパイセン。 グッモーニン!」
    「朝から喧しいくらい元気だな、テメェは……。」
    「んふふ、褒め言葉として受け取っておきマス♡パイセンは船の見廻りかなお疲れ様デス!」
    「そう言うテメェは……。 あぁ、また海見てんの
    か。」

     このクルージングでの景色が気に入ったのか、ビリーが熱心に海を眺める姿を度々目撃していた。
    「うん、綺麗だしずっと見てて飽きないんだよね。
    それになんだか心も清められそうだし。」
    「ハッ、こんなんで清められたら苦労しねぇだろ。」
    「もうっ、こういうのは気持ちの問題ナノ!」

     ビリーがぷくっと頬を膨らませて反論してみせる。しかしアッシュとの軽口を楽しんでいるようで、すぐに楽しそうな表情に変わった。

    「それよりテメェ、眼帯はどうした。まさか無く
    したとか言うんじゃねぇだろうな….?」
     語彙を強めて凄むと、手を目の前でバタバタと
    させながら慌てた様子で答えた。
    「違う違う!ちゃんと持ってるよ、ホラ。」

     その言葉通りポケットから眼帯を取り出してみせた。
    「折角の最終日だからしっかり目に焼き付けてお
    きたくて。だから今だけ外してたんだよネ。」

     照れくさそうにはにかみながらそう言うと、再び海の彼方に目を向けた。 朝焼けを眺めるビリーの瞳は海面の光が反射し、キラキラと輝いていた。
     海よりも深い青を閉じ込めた瞳は宝石の様でありながら、そのまま海に溶けて消えてしまいそうにも見えた。

    「おい。」

     ふと、海にくれてやるなんて勿体ないと思った。
     その視線を奪いたくて、気付いたときには既に声を掛けていた。

    「どうしたの?アッシュパイセン。」

     その声に反応したビリーがこちらを振り向いた。
    先程まで海の光を浴びていた瞳は、アッシュの姿を映していた。
     その事実に満足感を抱く自分がいるのに驚きを覚えるが、不思議と嫌ではなかった。

    「……さっさと中に戻るぞ。 最終日なんだ、やる
    ことなんざ山の様にあるぞ。」
    「も〜、わかってるって。けどオイラはアッシュ
    パイセンと違ってクルージングなんて滅多に来れ
    ないんだからネ?」

     海から視線を逸らすため、中に誘導すると文句を言いつつもこちらに着いて来た。
     たったそれだけのことに機嫌が良くなるのを感じる。

    「クルージングくらいいつでも連れて行ってやる。
    ……まぁ気が向いたらだが。」
    「えっ、ホント!?」
     機嫌が良くなったことでつい甘いことを口に出すと、ビリーがパッと明るい顔をこちらに向けた。
     期待に満ちた瞳がアッシュだけを映す。 その瞳は海を眺めていたときよりもキラキラ輝いて見え
    て、こちらの方が好ましく思えた。

    「ハッ、ごほうびが欲しけりゃしっかり働くんだな。」
    「Gotcha!キャプテン・アッシュパイセンの言うとおり☆」

     にやりと笑って返すと、ビリーも元気よく返事をした。


     欲しいものは全部手に入れてきた。これまでもこれからもそれは変わらない。

     海にくれてやる気なんてさらさらない。こいつは俺が手に入れるのだから。
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