エイプリルフール「パーイセンっ。僕ちんの事、好き嫌い」
アッシュがリビングのソファで寛いでいると、いきなり抱きついてきたビリーが問いかけてきた。
「あ?なんだよ突然……。てか暑苦しいから離れろ。」
「えぇ〜、折角二人きりなんだしちょっとくらい甘えたっていいじゃん。」
恋人同士なんだし。
そう言葉を続けると、向かい合う形で膝に座り、こちらの首に腕を絡めた。
可愛く甘えてくる年下の恋人を言葉で諌めはするも、膝から降ろさず好きにさせていたが、先程の質問の意図に気付き思わず顔を顰めた。
そう、今日は4月1日。
エイプリルフールである。
つまり嘘をついていい日に恋人がなんて答えるのか聞きたいのだろう。
「むう、そんな面倒そうな顔しないでヨ。」
「実際面倒だろうが......。」
ビリーとしてはちょっとした興味本位の問いかけで、どちらの答えであっても楽しんでしまえるのだろう。
「ねぇ、パイセン。 教えてよ。」
しかしそう言って笑う余裕そうな顔を崩してやりたくなり、期待通りに答えてやることにした。
アッシュは目の前の顔に指を添わし、するりと頬の輪郭をなぞった。
ビリーはくすぐったそうに身をよじるが、気にせず続けた。
「……そのうるさい位よく回る口も、」
指が唇を掠める。
「茶化す割に案外分かりやすい表情も、」
その手が頬に優しく触れる。
「そのゴーグルに隠れた目が熱っぽくこっちを見つめてくるのも……、好きじゃねぇ。」
最後にゴーグルを外すと、そのままビリーの顔を引き寄せる。 思わずぎゅっと目を瞑った姿に微かに笑みをこぼすと、その瞼に口付けを落とした。
好きじゃないと言った声は甘く、ビリーを見やる視線はどうしようもなく熱かっただろう。
その証拠に目の前の顔はどこもかしこも真っ赤に染まっており、瞳は僅かに潤んでいた。
「それでお前は?まさか俺だけに言わすつもりじゃないよな?」
「……いや、こんなのズルいでショ……。」
意地悪そうに笑う顔は明らかに楽しそうで、してやられたビリーは真っ赤な顔で少し眉をしかめる。
目を泳がせ暫く意味のない声を溢すが、意を決してアッシュの方を向くと、普段よりもか細い声で答える。
「………だいっきらい。」
「はっ、光栄だな。」
ビリーの答えに満足そうに返すとその唇に優しく口付けた。