(姉ちゃん一族の本家の当主の回想のようだ。)
ある日の事である。
分家のとある女性が子供を抱え、慌てた様子で訪ねてきた。
我々一族は代々他のイカやタコたちとなるべく交流を持たないようにしていたのだが、変わりつつある時代に合わせて我々も他のイカやタコたちに開放的になろう、という話が持ち上がっていた。
その一環として彼女の子供を近所の子供たちと遊ばせるようにしていたのだが、しばらく経ってから穏やかだった子供の様子がおかしくなったのだという。
ある日から他の子に咬みつくようになり、その時は小さい子によくあることだと思って見過ごしていたのだが、日を追うごとに暴力まで振るうようになり、今度はいつまでたっても眠らなくなったり、普段の食事も吐き戻し、まともに食べることが出来なくなっていった。さらにここ数日に至っては物陰でうずくまって出てこなくなってしまっているらしい。
「様子を見せてくれ」
ローブの中で抱きかかえられていた子供は少しぐったりとして、虚ろな表情をしている。以前会った時は青かった瞳も赤っぽくなっており、瞳孔がまるで「捕食者」のように縦に細長くなっている。
生まれたときから兆候があった、恐らく「先祖返り」の傾向が強く出てきたのだと思われるこの子供。放置すれば先祖たちのように他のイカやタコを襲って食べるようになるかもしれない。しかしどうすればこの状態を元に戻せるだろうか、と思案を巡らせる。
かつて我々の先祖は日の光を浴びることが出来なかったという。
もしやと思い、子供を抱きかかえて屋敷で一番日当たりの良い場所へと連れていく。すると、それまで虚ろな表情をしていた子供がいきなり血相を変えて「やだ!やめて!まぶしい!!」と悲鳴を上げ、じたばたし始めた。
なんとか押さえつけながら子供に太陽の方角を見続けるように言い聞かせる。
「まぶしい……いたい……くるしいよぉ……」とうめきながら目を覆う子供。少し過呼吸気味になっていたが、しばらく経つと穏やかな表情ですぅ、と寝息を立て始めた。
後日会った子供の瞳は青く戻っており、元の穏やかな感じになっていた。
しかしこれは一時的な対処である。いつあの兆候が戻ってくるかわからない。私はこの子供をなるべく他のイカやタコと会わせないように母親に言い聞かせた。
……やはり周りとの交流は避けるべきなのだろうか、と思うわけである。
(ちなみに姉ちゃん自身はこの出来事の事をあまり憶えておらず、「小さい頃に変な病気にかかったが、本家の屋敷で治してもらった」といった感じにしか認識していない。)
(じゃあなんで今姉ちゃんが他の人たちと触れ合ってんねん!!という声が聞こえてきそうだが、その後は姉ちゃんの共食い衝動が出てこなくなり、その後少しずつ外に出歩くようになっても問題はなく、妹ちゃんを拾った際も問題はなく、『1週間だけお試しで!』という名目で始めたバトルでも問題がなかったので『ア!この感じなら多分大丈夫やろw』と誰もが高を括っていたわけです 特大フラグ立てちゃいましたね あーあ)