大役 神さまは残酷だ。
家族のため、誰かのため、村のためにと奮起する人こそを、真っ先にこの世から連れて行ってしまう。善行を成そうとする立派な人々はみんなそうだった。まだまだ現世でやることがあるにもかかわらず、悪どい連中から命を刈り取られる瞬間を神さまはただ見ているのだ。
あなたが創った世界の、ほんの小さなひと握りのなかで、もがき苦しみ、それでもより良くしようと立ち上がった人々が、この世を去ることを引き留めてはくれない。
まだこの世で生きなさいと示してはくれなかった。
兄貴が残してくれた村は、少しずつだが新たな道を歩んでいる。痛みや苦しみを乗り越え希望となって、この村をいい方向へと導いてくれている。高利貸しによる理不尽な取り立てはなくなり、自殺者はうんと減った。村の家族が泣いて苦しむこともない。俺は兄貴がくれた補聴器によって耳が聞こえるようになり、妹は学校へ行けるようになった。学校で妹は、兄のようにたくさんのことを学んで、そしてまた村により良い風を起こしてくれるのだろう。そんな人々がきっとまたこの村を変えていくんだ。
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