記憶喪失で類のことだけ忘れた司の話「好きだよ、司くんさえよければ僕と付き合ってください」
そう告白されオレ──天馬司と神代類は恋人になった
もちろん、オレも類と同じ気持ちの好きだったから嬉しかった
しかし付き合って3か月も経つのになんの進展もなかった。だからもしかしたら類はオレのことが好きじゃなくなったのかもしれない
そう思ったのだ
所謂マンネリ化…もしくはオレに飽きたかどっちか
「こんなことなら、……付き合ってる意味ないのでは……あの頃に、…いや、類のことさえ忘れられたら…この気持ちごと綺麗さっぱり消えれば…楽なのかもしれない」
きっと神様は冗談で言ったこの言葉を本気だと思ったのだろう
いや、そもそも神様かいるかどうかわからんが…とにかく、何を思ったのかその冗談半分を完全に本気だと思ったらしい
──ある意味で新しいセカイの始まりだった
──────
目が覚めて目の前にあったのは白い天井だった
どうやらここは病院らしい
「司くんだいじょーぶ!?」
「ちょっとえむ、司は一応病人なんだから大声出さないの」
「いや、大丈夫だ。心配してくれてありがとな」
「別に…でも当分は安静にしてなさいよ
ショーの練習も台詞合わせとかそれくらいにして、立ち稽古とかはちゃんと治ってからね
病み上がりに無茶させらんないし…」
「あぁ、ちなみになんだが、オレは何故病院に…?」
「覚えてないの?えむが水撒きしてたんだけど、ショーの機材運んでたあんたが床がまだ濡れてるところを通ってスッ転んで頭打ったってわけ」
どうやらえむがやっていた水撒きの水がまだ拭き終わってないところにオレが通り、転んで頭を打ったということらしい
「ごめんね、司くん…あたしがちゃんと事前に知らせておけば……」
「気にするな!……ところでさっきからそこにいる人は?」
「え…?」
オレが指したのは紫色の髪に水色のメッシュに猫や月という表現が合いそうな目をした男
「えっと…」
「司…なに、…言ってるの?類だよ?」
「る、い…?」
「そう、神代類。私の幼なじみでワンダーランズ×ショウタイムの演出家であんたの────」
「寧々、もうそれ以上はいいよ」
「でもっ…!」
「司くんからしたらはじめまして、だね
僕は神代類。寧々の幼なじみでワンダーランズ×ショウタイムの演出家をさせていただいているよ
それから─────君の友人、といったところかな」
神代類、と名乗った男はオレたちワンダーランズ×ショウタイムの演出家であり、オレの友人らしい
だけど寧々が言いかけていた『ワンダーランズ×ショウタイムの演出家であんたの────』という言葉が少し気になったが、当の本人である神代類がその言葉を遮ったということは言及するのはあまりよくないのかもしれない、とも思ったので口を挟まないことにした
「そうか…大切な演出家であり友人であるのに忘れてしまうとは…すまん……」
「いいや、仕方がないよ。ゆっくり休んでくれたまえ
僕はちょっと外の空気を吸ってくるよ」
「あ、ちょ、類…!」