はるのおわりに「おまえって、春みたいだな」
「は?」
「なんとなく思っただけさ。別に理由は知らなくていいよ。だってそう思っただけだから」
「…やっぱりおまえはヘンな奴のままだな」
電話を掛けた。誰でもいいわけではない。一番口が堅くてこういったことに一番近しい人物。それは
「で、自分にですが?」
「こういったことはハナビには少し、聞きにくいだろう。それに何かの比喩だった場合はタイジュの方が詳しそうだ」
「そう言われましても…でも、知らなくてもいいと言うシンくんは珍しいですね。好きなものを話し出すと止まらないのに」
「確かに世界の謎だー心霊現象妖怪だーと止まらなくなるが、割とずっとしゃべりっぱなしというわけでもない」
「ふふふ」
「笑うところか?」
「だって伝わっているのに伝わりきってねーんですよ?」
「そうね…くすくす」
「メーテルまで?!」
「スピーカーで聞いてしまってごめんなさい。でもあまりにも素敵な相談事だったから」
「???」
「大丈夫。シンは意地悪をでこんななぞなぞのようなことを言ったわけではないわ」
「程度は違ぇーますが、一時期のシンくんもこんな感じでした。頑張ってください」
「答えは近くにあったりする…なんてね」
この電話では答えは出ない。
「で?僕に来たってわけか。僕もそんなに詳しいってわけじゃないけどさ、本当に僕でいいの?」
「まぁまぁこれで…」
そっと渡したのは携帯音楽再生機。そしてメロディが転がる。
「!!これは引退しとるはずのドレミファインバータ…!なんといい音質…!」
「秘蔵のものだ」
「こんなんだされたらマジメと聞くしかないやん…」
「真面目じゃなかったのか!?」
「シンにあんな表情させてたんだからちょっぴりだけね☆今度ドラマに出ることになってね、アブトはその練習台と思ってほしいな☆」
「まったく凄いな、ギンガは。」
「なんのなんの。僕なんてまだまださ。で、シンのこと?そんなんただのいけずやない?かわええやん」
「こっちはずっと気になって仕方なくなってしまっていろいろ調べてはいるんだぞ」
「あはは☆シンもやるねぇ!アブトはもうちょっと自分を見た方がいいかもよ?」
「へ?」
「それじゃあね☆シーユーアゲイン☆☆」
答えを聞きに行くことにした。もうこれ以上は答えに近いものも浮かんでこなかったから。
「どうした?」
「この間の、『春』ってどういう意味だ?」
「えっ?覚えてたの?」
「おかげで通信料と恥が嵩みそうだ」
「ちょっと通信料ってどういうことよ!浮気か!?」
「浮気って…それは違うだろう」
「ははは、でもまさか本当にわかってなかったなんて驚きだ」
手を取り、口づけをひとつ。
「言葉どおり、おまえのことだよ」
晴れた空に桃の色。菜の花の瞳。