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    sakura_bunko

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    2022.08.21発行予定の環壮本進捗
    告白から頑張るラブコメ

    ※読める部分は全年齢だけど最終的にR-18本になる

    環壮進捗 壮五は暴走した。必ず、相方の四葉環を落とさなければならぬと決意した。壮五には恋愛のいろはがわからぬ。壮五は、ファイブスターカンパニーを経営する逢坂家の嫡男である。逢坂家の跡継ぎとしての道を捨て、自己証明のために芸能界の世界に飛び込んだ。けれども、人から向けられる視線に対しては、人一倍に敏感であった。
     今日、環と壮五以外のメンバーは、朝早くから遠方でのロケや、日中は実家に帰るなどの理由で不在にしており、夕方まで二人きりであることが確定している。壮五には、余裕も、理性も――
    (いや、理性はある)
     ――ないと断言してはいけない。いついかなる時も、理性はしっかりと保つべきだ。
     それにしても、有名な文学作品の導入部分に自身の心情をあてはめてみたものの、かなり無理があるなと感じた。特に〝人から向けられる視線に対しては〟のくだり。なにがどう〝けれども〟なのか。最初の〝暴走〟もおかしい。暴走してどうする。少し前から音楽雑誌のコラム連載枠を持っているが、この様子では、長く連載するのは難しいかもしれない。ユーモアにあふれた文体で読者を惹きつけられるよう、もっと精進しなければ。
     環を落としたいのは本心だ。抱かれたい男ランキング上位のくせに恋を知らない彼の初恋。絶対、なにがなんでも、自分のものにしたい。
    (環くんも僕のことが好きだし……こんなの、お付き合いするしかなくないか?)
     さきほどの文はめちゃくちゃだが、自分が人から向けられる視線に対して人一倍敏感なのは本当だ。父の取引先の人たちが媚びを売ってくればすぐにわかるし、共演者が踏み込んだ関係を求めてきそうな雰囲気も察せられる。後者は今後の仕事に支障をきたさないよううまく避けるところまで含めて、うまく立ち回っているつもりだ。
     だから、環が自分に向ける視線に熱がこもっているのも、ちゃんと、わかっている。
     自分が思ったことを素直に口にするところがあるし、恋心も打ち明けてくれると信じてきたのだが、待てど暮らせど、頬を真っ赤に染めて告白してくる気配すらない。なにかと二人きりになることが多く、さあこい! と身構えても、なにも起こらないまま、二人きりの時間が終わる。
     この前だって、なにか言いたそうにもじもじしているから「ついにきた」と姿勢を正したのに、話の中身はというと、テストの点数がよくなかったというものだった。赤点よりも、僕への恋心で赤らんだ頬を見せてくれ。
     壮五だって、環に恋をしてすぐに交際を意識したわけではない。それはもう、大いに悩みまくった。だって、アイドルだから。
     小鳥遊プロダクションは恋愛を禁止しているわけではないけれど、IDOLiSH7のファン層を考えれば、恋愛は控えておくべきだと思う。ファンをがっかりさせたくないし、ステージの上ではファンが恋人だ。壮五もそのつもりで日々の仕事に向き合っている。
     それでも、逢坂壮五という人間はアイドルである以前に一人の人間だ。環への恋心の成就を願うことは、人間としての幸福を追求することでもある。目の下に薄っすらとクマができるくらい悩み抜いた日々の末、その答えに辿り着いた。要は〝周りにばれないように気を付けて、全力で恋をする〟ということ。
     プロ意識の高い業界人が聞けば、激昂するに違いない。もしくは、軽蔑の眼差しをぶつけられるか。――と、九条天の顔を思い浮かべ、心の中で謝罪した。思い浮かべて申し訳ございません。でも、九条さんなら、一晩かけたお説教のあと、最終的には応援してくれるタイプですよね。だって、天使ですから。
    (一番早く帰ってくる一織くんの帰宅まであと三時間……)
     持て余しまくった環への恋心が爆発してどうにかなってしまう前に、対処しなければならない。爆発物だって、爆発物処理班が対処するだろう、それと同じだ。さしずめ、恋心処理班といったところか。
     しかし、自分に向けられる視線には敏感な壮五も、恋愛のいろはがわからないため、どうすれば関係を進展させられるのかと、思い悩んでいたのだ。
     なぜなら、他者から散々好意を向けられても――その後の人間関係に影響しない程度に抑えつつ、相手が可能性を感じなくなるくらいにはばっさりと――華麗なまでに躱し続けてきた壮五は、恋愛経験ゼロ、性交渉経験ゼロの、正真正銘、童貞処女。興味のない人間の恋愛感情は躱せても、自分の恋愛となるとなにもわからない。
     わからないけれど、環と交際に発展したらキスやその先も絶対に完遂させたいと思っている。仕事でキスシーンを演じる前にファーストキスを済ませたい。もちろん、環の童貞も、なにがなんでも自分のものにしたい。彼に抱いてもらえるなら喜んで後孔の処女を捧げるし、自分は童貞のままで一生を終えてもいいと思っている。というか、交際する以上は、別れるつもりなんて毛頭ないので、――まだ交際にすら至ってはいないけれど――自分が童貞のまま処女を散らすのは確定事項だ。
     環への恋心を自覚し、かなり脈ありと判断して、交際を考えるようになった時から、壮五の頭の中では、環とのキスやあれやそれが繰り広げられている。もしも彼がプラトニックな恋愛を考えていた場合は、身体的接触を伴う交際におけるメリットを提示して、可及的速やかに説得するつもりだ。環に抱かれる想像をしながらの自慰より、本人と思いっきりいちゃいちゃして気持ちよくなりたい。壮五は欲に正直な男だった。
     なにはともあれ、まずは恋人へと関係を進展させなければ。タイムリミットまで残り二時間四十五分。そろそろ決行の時だ。

     ◇

     オフの日の日中、ゲームをしているかもしれない環を部屋に呼び出す。一見、難しいように見えて、実は容易なことだ。今日が夏休みシーズンの火曜日でよかった。
     火曜日といえば、コンビニエンスストアのデザート商品棚に新作が並ぶ曜日だ。寮周辺のコンビニエンスストアに配送トラックが来る時間帯は普段からリサーチ済みだ。一番近い店舗ではなく、少し離れたところにある別のチェーン店のほうが早くて、入荷数も安定傾向にある。灼熱地獄といっていい気候の中、自転車をかっ飛ばして購入してきた。
     少しでもひんやり感を保ったまま持ち帰ろうと猛スピードで漕いだからそこまでぬるくはなっていないものの、冷蔵庫で冷やしたほうがいいに決まっている。環が部屋にこもっているのを確かめて、ダミー用の――スパイスの詰め合わせを購入した時の箱――に入れた状態で二時間ほど冷やしておいた。
    『今日発売の王様プリンのコンビニ限定トロピカル味、買ってきたよ』
     スマートフォンでゲームをしているならラビットチャットの通知が邪魔をしてしまうだろうかと危惧したが、用件が王様プリンなら許してもらえるはずだと思い直す。
    『まじで? そーちゃん神!』
     王様プリンが勢いよく回転するスタンプが連打されている。王様プリンのことがなくても、元々、機嫌がいいタイミングだったのだろう。すぐに食べるかと訊いたら、今すぐに食べたいと返ってきた。ここで間違ってはならないのは、食べる場所の指定だ。いつものように彼がリビングに向かう前に、壮五にとって都合がいいように誘導しておく必要がある。自分の買いものもあったから壮五の部屋にプリンがあるということにする。実際、少し前に冷蔵庫から持ってきておいたので間違ってはいない。
    『スプーンもあるから、プリンが冷えてるうちに身ひとつでおいで』
     ……なんだか言い回しを間違えたような気がしなくもないが、身ひとつで来てほしいのは本心だから、まぁ、いいだろう。彼も特に気にすることなく『すぐ行く』と返してくれたし。あぁ、早く、神扱いより恋人扱いされる立場になりたい。
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    sakura_bunko

    MOURNING最初ははるこみ新刊にしようと思っていたのが、別のを書きたくなったので続きを書くのを一旦白紙にしたもの
    ただ、これの着地点も考えてはいるので、どこかで本にするか、短編集に入れるかなりしたい
    無題 十八年近く生きてきて、何度か「変なところで勘がよくて怖い」と言われることがあった。そのたびに、失礼なやつだなと笑い飛ばしたり、どこが変なんだよとむくれたりしたけれど、自分の勘のよさに鳥肌が立ったのは、たぶん、これが初めて。
     それでも、勘がいいイコール正しいルート選択ができるとは限らないから、世の中って難しい。もっとこう、勘のよさを活かして、正解だけを選べないものだろうか。
     こんなときだけ、普段は信じてもいない神様に縋りたくなってしまう。あぁ、神様、今すぐ俺とこの人だけでも五秒前に戻してください! ……なんて。
     手のひらがしっとりしてきたのは、自分の手汗か、それとも、腕を掴まれているこの人の汗か。汗なんてかかなさそうな涼しい顔をしているくせに、歌っているとき、踊っているとき、それから、憧れの先輩アイドルに会ったときは、見ていて心配になるくらい汗をかく。ちょっとは俺にも動揺して、同じくらいの汗をかいてみればいいのに。そう思ったのが、最初だった気がする。なんの最初かは、恥ずかしくて言葉にしづらい。
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