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    2niwt_bb

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    ※みんな仲良し

    そうだ、ラブホ行こう。続続 真剣な面持ちで何を言い出すのかと思えばと、開店前の時間に匋平の話を聞いてあげていたキャストたちは、一様に顔を見合わせた。
     ここは、砂糖菓子のような甘いひと時を提供する夜の城、クラブキャンディ。場所は、キャスト控え室の一角。
     基本的に女の花園であるこの場所に、黒服たちが立ち入ることはほとんどない。もちろん、キャストを呼びにだったりで入ることはあるが、長居は無用。用件を済ませれば、早急に退散するのが、暗黙のルールである。
     匋平とて、そのルールに従って、仕事をこなしてきていたが、この花園のルールは、ここにいる彼女たちが決めるもの。挨拶もそぞろに、どこか浮かない顔をする匋平を、彼女たちはあれよあれよと控え室へと引き入れた。
    「ラブホ行けばいいじゃん?」
    「まあ、そうだよね〜」
    「あれ? でも、ラブホって未成年いけたんだっけ?」
    「十八からだった気がするけど、匋平くんなら大人っぽいし、バレないでしょ」
    「それもそうだね〜」
     そうして、ジュース飲む?、お菓子食べる?、おっぱい揉ませてあげようか?、などと散々もみくちゃにされた後、何があったのかお話してごらんと、彼女たちの巧妙な話術に引っ掛かり、匋平は、それとなく事の次第を話してしまっていたわけである。
     当然、彼女たちが黒服全員にこういうことをするのかと言えば、答えはノーだ。顔が良くて、なんと聞けば未成年。依織は歳を誤魔化していたのだが、そういう当たり前を、まだきちんと認識できていなかった匋平のおかげで、同い歳だとバラされるハメになったのはまた別の話として、少し喧嘩っぱやいところはあるが、女は大事にするものだという昔気質なところも、それを押し通せるだけの力があるのなら、格好良いものだ。慣れない敬語を口に馴染ませて、大人のフリをしながら頑張る姿も見てきた彼女たちにとっては、恋愛対象、というよりは、どちらかと言えば、弟や息子のような存在なのだろう。
     それなりに陰鬱な大人たちが多い夜の世界で、カラリと太陽のように屈託なく笑い、裏表なく接してくる少年は、そうして、その相棒と揃って、彼女たちのお気に入りになっていた。
     そんな匋平が、ひどく思い詰めた顔をしている。それに加えて、今日は、珍しく依織がいない。依織とて、キャストに優しく接してはいるのだが、精神年齢がちゃんと年齢と同期している匋平に対して、思考までもがすっかり老成している依織は、匋平の前以外では、ほとんど大人と変わらない振る舞いを見せてくる。つまり、嬢と黒服の境界を、違うことなく線引きしてくるのだ。
     鋭い彼女たちは、そういうところを敏感に感じ取る。それも含めて、依織も匋平も等しく可愛い存在ではあるので、同じように可愛がってはいるのだが、やはり、構いやすいのがどちらかと言えば、匋平なのである。依織がこの場にいたなら、匋平は後頭部を軽く小突かれて、持ち場に引きずられていかれるのだろうが、そんな依織が、今日は不在。
     これは構い倒すチャンスだと言わんばかりに、彼女たちは匋平を控え室へと連れ込んだ。
     そうして話を聞き出した彼女たちは、なんの衒いもなく、先ほどのアンサーを匋平に投げ掛けたのである。
    「ラブ、ホ……?」
    「あれ? ヤンチャな匋平くんでも、ラブホはまだ行ったことなかった?」
     匋平の話を要約すれば、アパートの壁が薄すぎて、カノジョと満足にセックスができないというものだった。
     青少年の悩み、と胸躍らせていた彼女たちの期待を裏切ることなく、なんとも可愛らしいエピソードを披露してくれた匋平に、彼女たちはにっこりと笑顔を向ける。
     叶うものなら、もう少し適切なアドバイスを与えてやってほしいものだが、たとえ匋平の相談を受けたのが常識のある健全な大人であったとしても、返せる答えなんてこの程度のものだろう。
    「そう、か、その手があったか!」
     大人では簡単にたどり着く結論も、まだまだ子どもな匋平には、少し遠回りだったようだ。いいことを聞いたとばかりに勢いよく立ち上がって、サンキューなと話を聞いてくれていた彼女たちの頬に流れるように唇を寄せると、早足に控え室から飛び出していく。
    「あはは、匋平くんってほんと、」
     可愛いよねぇ〜、そんな背中を見送って、控え室にいた彼女たちの声が重なる。
     ソファから立ち上がる直前の、あの、キラキラした瞳。思春期真っ盛りの性欲の旺盛さもさることながら、相手が苦しそうなのが嫌だとぽつりと漏らした少年の苦悩が、全てうち払われたと言わんばかりのあの輝きに、彼女たちは満足そうに声を弾ませた。
     あの歳でそこまで思えるのならば、彼のカノジョは、余程愛されているのだろうと、彼女たちの中で匋平の株がますます上がっていくのだが、もちろんそれは、匋平の知るところではない。
    「あっ!」
    「ん〜?」
    「ラブホ、男同士はダメかもって、教えてあげたほうが良かったかな?」
    「あ〜たしかにぃ」
    「でも大丈夫じゃない?」
    「え〜? なんで〜? ダメだったとき、かわいそうじゃん」
    「そこは依織くんが、どうにかするでしょ」
    「あ〜〜」
     確かに。いよいよ開店時間が迫り慌ただしくなってきた控え室の中で、彼女たちの声がまた綺麗に、重なった。
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    DOODLE匋依 / デキてる / ちょっとはやめのクリスマス小話
    クリスマスソングも弾かないで 街がイルミネーションに彩られている。
     地上26階から見下ろすと、ひかりのつぶてを纏う木々はまるで海の底に沈んだ流れ星のようにみえた。いつもより思考がロマンティックになっているのは場の空気に酔っているからだ。首筋に細く湿った吐息がかかる。煙草と石鹸と匋平の香水のかおり。はだけたバスローブのした、膚を撫でる手つきはやさしかった。

     これまでクリスマスというものに特別な思い入れをもったことはなかった。年に何度かある掻き入れ時のうちのひとつで、年の瀬も近いから人々が浮足立って賑やかしい、その空気感が心地いい。依織にとってクリスマスとはながらくそういうイベントだ。
     もちろん楽しみもあって、弟たちとパーティもすれば、プレゼントを贈り贈られすることもある。先代翠石が存命だったころも同様で、ど派手な宴会(あれはパーティと形容できるものではない)が行われ、大量の酒がふるまわれたあげく、泥酔した組員たちによるビンゴ大会などが催されていた。若いころの依織はどちらかというと会の裏方に回ることが多く、宴もたけなわのころには邸のキッチンなどで一服するのが常だった。そういうときに決まって親父がひょっこりと顔を出し、「袖の下っちゅーやつや」などと冗談を言いながら贈り物をしてくれたのを覚えている。いつまでもガキじゃねぇんだと嫌がる依織の心情を思いやってかプレゼントとは言われたことはなかったが、あれは間違いなく親父からのクリスマスプレゼントだった。だから依織にとってクリスマスとは家族のためのイベントだ。
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