冷雨 土砂降りが祟ってか、その日の客足はほとんどなかった。深夜に掛けて雨がひどくなるなんて予報が出ていたこともあって早めに店は切り上げることになって、低気圧に唸りながら自宅で酒を煽っていたのが、いつの間にやらソファで寝てしまっていたらしい。ピンポーンと、不意に響いたチャイムの音で目が覚めた。
重だるい瞼を持ち上げ、ぼんやりと天井を見上げる。ピンポーン、二度目のチャイムで、ようやく状況を呑み込む。
のろりと身体を起こして、背もたれの向こうを覗き込むようにしてモニターを見るも、映し出されたエントランスに人影はない。二度続けざまにあった呼び出し音だが、三度目はなく、イタズラかと舌打ちをして時計を見遣れば、時刻は深夜2時過ぎ。酔っぱらいかと頭を掻いて欠伸一つ。いつもならまだバーにいる時間ではあるが、雨のせいか、妙にすっきりしない。
2315