「叶羽君、機嫌が良いね。」
友人からの言葉で気付く。
機嫌が良く見えるのか、と。
別に自分に興味が無いわけではないのだろうが、自分より他者に意識が向いてしまうことが職業柄にもあるものだから…自分のことは他者に言われなければ気付けないことの方が多い。
「お前に、そう見えるのであれば…そうなんだろう。」
「また、ひねくれた言い方だね。」
友人、萩前翔真は面白そうに笑う。
「あぁ…別に、君の機嫌が良いから特別、何かしようと言うわけでは無いよ?……知っての通り、」
「分かっている。」
10年くらいの付き合いではあるが、俺なりに彼のことは理解しているつもりだ。
彼は特別優しい人間で、他者を馬鹿にしたり陥れるなどという思考を持ち合わせていない人間である…と、認識している。
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