煌めきを放つもの 自室への扉を開けようとして、コツ、と音がして動きを止めた。視線を下ろしても一見引っかかりそうなものは見受けられない。
「……《アドノディス・オムニス》」
呪文に応えて姿を現したのは、小脇に抱えられるくらいの大きさの箱。一応罠の可能性も考えて触れずに検分して、見知った魔力の気配が残っていたので掬い上げてすぐに扉の中へと入り込む。
何で扉の前に置いたのだろうか。しかも隠すように。パーティーの場で渡すでもなく、バスケットにこっそり忍ばせるでもなく。そう思いながら箱をテーブルに置いて蓋を開けると、姿を現したのは3本のカトラリー。
ご丁寧に『明日はお前の作ったフライドチキンが食いたい』と書かれたバースデーカードが添えられていた。
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