傘はいいよ最近はなんか晴れが多いから やられた。
先ほどまでキッチンで夕飯の仕込みをしていたはずが、長閑な景色に突如として放り出されてしまった。苦々しい思いでネロはこめかみを押さえる。精霊の気配からして、南の国のどこかだろう。
長めのミルをさっさと入手しておくべきだった。いまさら悔やんでも遅い。目の前では憎たらしいくらい機嫌よく元凶の男が笑っている。
もはや習慣と化しているつまみ食いに対する制裁として、胡椒を思いっきり振りかけた。そこまではもう定番のやりとりだ。しかしくしゃみをして飛ばされる寸前、ブラッドリーが腕を掴んできたのは完全に予想外だった。いや、油断していた。
ボルダ島の領主から初めて招待を受けたとき、そういえば言っていたような。次に胡椒をぶちまけられたら、絶対に道連れにしてやる、とか何とか。あのときすぐに特製のミルを備えておけばよかった。これまではなんとか難を逃れていたが、ついにブラッドリーの企み通り、ネロは巻き添えを食らう羽目になったのだった。
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