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    BL1NDF0RL0VE

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    BL1NDF0RL0VE

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    世界にブラッドリーしか居なかったネロの話
    ※魔法舎軸ですが現実の人物名が出てきます

    #ブラネロ
    branello

    お前と地獄の話がしたい「この世界にも天国や地獄ってあるんですか?」

     魔法舎中庭での訓練中、ふと、賢者さんから尋ねられた。

    「あるよ、地獄。俺は旦那様と奥様に拾ってもらうまで、地獄にいた」

     シノがくい、と猫のような丸い顎でネロを指した。別にシノはネロに話すことを強いているわけではない。お前の代わりに俺が話した。だから話すも話さないも、自分の好きなようにしたらいい、と大きな赤い目で、待ってくれているのだ。なんかこういうところ、あいつに似てるかもな。いや、そうじゃなくて。

    「あー……まぁ俺も似たようなもんだよ。賢者さんが聞きたいのはそういうのじゃなくてさ、もっとこう……」

    「祈りや信仰として、天国や地獄といったものが、この世界でも信じられているかということか?」

    「そういうことなら中央の奴らに聞けばいい。俺たちに聞いても面白くないぜ。ファウストとネロを見てみろ、夢や希望がどこにある」 

    「シノ!」

    「はは、シノの言うとおりだよ」



    「ネロの好きな本を教えてください」

     どうしたリケ、本なんか読んでえらいなあ。またミチルたちと勉強してるのか? だけど、そういうのはルチルとかに聞いた方がいいと思うぜ。と、頭を撫でようとした手をかわされる。

    「そうじゃなくて、ネロの好きなものが知りたいんです。僕はまだ読み書きがあまり得意ではないけど、でも、ネロの好きな本を読んでみたいんです」

     読書は好きだ。東の国で暮らすようになってから、本を読んで過ごす時間ができた。1人きりの部屋で、物語に耽るのは贅沢な生活に思える。”普通”っぽくて、気に入ってる趣味だ。しかしネロの部屋に本棚はない。本を開き、普通の暮らしをなぞってみたところで、結局それに興味も愛着も持てなかった。今まで読んできた本は、荷物のどこかに置いてある気もするし、店を転々とする間に手放してしまった気もする。

    「『ライ麦畑でつかまえて』って知ってるか?サリンジャーの」

    「初めて聞きました。古い本でしょうか?」

     俺の生まれた場所は北の国でも治安の悪い所だった。ろくでなしの家だったから、ひとりで生き抜くためになんでもした。誰もが生きるのに必死だった。毎日顔を出す露店で食べ物を盗み、市場ですれ違う人から財布をすった。生きることに犠牲が必要だった。

     だが、俺の地獄はこんなところではない。俺の地獄にはいつだってあいつがいた。俺が信じたのは、お前だけだった。ひとりになって、今さらまともぶって、何の意味があるのだろうか。正しさが何なのか、頭ではわかっているつもりだ。まともになりたい。でも、なれないこともわかりきっている。

     代わりなんてできやしなかった。あんただけだったんだよ。

    #

    「ネロ、お前本とか読まねえよな」

    「別に、盗賊で生きていくのに、本なんて読んだってしょうがねえだろ」

    「まあそうだけどよ。『ライ麦畑でつかまえて』とか、読んだことないのか」

    「ねえよ。それ読んだら腹が膨れるのかよ」

    「情操教育だよ。いつか読んどけ」


     そう、古い本なんだ。昔の受け売りだ。


     俺はまだサリンジャーを読んだことがない。あいつが牢に入ってから、やっと手にとった本は、引き出しの中で何十年もしまわれている。でも俺の地獄に本はない。

     ネロ! この本はまだ僕には難しくて、今は読めないけれど、いつか絶対に読み終えてみせます。その日がきたら、またいっしょに好きな本の話をしましょう!

     俺にいつかは来ない。俺はいまも地獄にいる。サリンジャーは引き出しの中で、埃を被ることも許されず、何百年もしまわれている。
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    44_mhyk

    SPOILERイベスト読了!ブラネロ妄想込み感想!最高でした。スカーフのエピソードからの今回の…クロエの大きな一歩、そしてクロエを見守り、そっと支えるラスティカの気配。優しくて繊細なヒースと、元気で前向きなルチルがクロエに寄り添うような、素敵なお話でした。

    そして何より、特筆したいのはリケの腕を振り解けないボスですよね…なんだかんだ言いつつ、ちっちゃいの、に甘いボスとても好きです。
    リケが、お勤めを最後まで果たさせるために、なのかもしれませんがブラと最後まで一緒にいたみたいなのがとてもニコニコしました。
    「帰ったらネロにもチョコをあげるんです!」と目をキラキラさせて言っているリケを眩しそうにみて、無造作に頭を撫でて「そうかよ」ってほんの少し柔らかい微笑みを浮かべるブラ。
    そんな表情をみて少し考えてから、きらきら真っ直ぐな目でリケが「ブラッドリーも一緒に渡しましょう!」て言うよね…どきっとしつつ、なんで俺様が、っていうブラに「きっとネロも喜びます。日頃たくさんおいしいものを作ってもらっているのだから、お祭りの夜くらい感謝を伝えてもいいでしょう?」って正論を突きつけるリケいませんか?
    ボス、リケの言葉に背中を押されて、深夜、ネロの部屋に 523

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    ada

    REHABILI盗賊時代のブラネロの話 / 捏造注意 / 身体の関係がある遠い噂で、西の国で絢爛豪華な財宝や金品が展覧されると聞いた。筋は確かな情報のようで、近頃街が色めき立っている。こんな美味い話、頭が聞き漏らす訳もなく作戦は決行された。
     盗むのは自らの手が良いと宣う頭に付き合うのは相棒であるネロの役目だ。招待された者しか入れないというその会場である屋敷に、招かれた客と偽り出向く事になった。
     普段は見てくれから粗暴なのが分かるような男の出立ちだが、今回は仕立て屋で身を整える気の入り様から、潜入すらも楽しんでいる事が分かる。正直、動き易ければ拘りのないネロだが、ブラッドリーは長考し続けネロを着せ替え続けた。
    「よし、いいんじゃねえか」
    「これが駄目でももう着替えねえぞ」
    「なにくたびれてやがる、早えんだよ」
    「俺は今回従者なんだろ? なら別になんだっていいじゃねえか」
    「あのなあ。従者がどんなモン着てるかで主人である俺の程度が分かるだろ」
     従者の装いという事で首が詰まっているのが息苦しい。仕上げと言わんばかりにタイを手際良く締めるブラッドリーはずっと上機嫌だ。
    「よし、あとはお前が俺様に傅きゃ完璧だな」
    「馬鹿言え、やんねえよ」
     頭の機嫌がいいに越し 2630

    cross_bluesky

    DONEエアスケブひとつめ。
    いただいたお題は「買い出しデートする二人」です。
    リクエストありがとうございました!
    中央の市場は常に活気に満ちている。東西南北様々な国から商人たちが集まるのもあって、普段ならばあまり見かけることのないような食材も多いらしい。だからこそ、地元の人々から宮廷料理人まで多種多様な人々が集うという。
     ちなみにこれらは完全に受け売りだ。ブラッドリーはずっしりと重い袋を抱えたまま、急に駆け出した同行者のあとを小走りで追った。
     今日のブラッドリーに課された使命は荷物持ちだ。刑期を縮めるための奉仕活動でもなんでもない。人混みの間を縫いながら、目を離せば何処かに行ってしまう同行者を魔法も使わずに追いかけるのは正直一苦労だ。
    「色艶も重さも良い……! これ、本当にこの値段でいいのか?」
    「構わねえよ。それに目ぇつけるとは、兄ちゃんなかなかの目利きだな。なかなか入ってこねえモンだから上手く調理してやってくれよ?」
     ようやく見つけた同行者は、からからと明朗に笑う店主から何か、恐らく食材を受け取っている。ブラッドリーがため息をつきながら近づくと、青灰色の髪がなびいてこちらを振り返った。
    「ちょうどよかった、ブラッド。これまだそっちに入るか?」
    「おまえなあ……まあ入らなくはねえけどよ。せ 1769