Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    BL1NDF0RL0VE

    @BL1NDF0RL0VE

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 8

    BL1NDF0RL0VE

    ☆quiet follow

    世界にブラッドリーしか居なかったネロの話
    ※魔法舎軸ですが現実の人物名が出てきます

    #ブラネロ
    branello

    お前と地獄の話がしたい「この世界にも天国や地獄ってあるんですか?」

     魔法舎中庭での訓練中、ふと、賢者さんから尋ねられた。

    「あるよ、地獄。俺は旦那様と奥様に拾ってもらうまで、地獄にいた」

     シノがくい、と猫のような丸い顎でネロを指した。別にシノはネロに話すことを強いているわけではない。お前の代わりに俺が話した。だから話すも話さないも、自分の好きなようにしたらいい、と大きな赤い目で、待ってくれているのだ。なんかこういうところ、あいつに似てるかもな。いや、そうじゃなくて。

    「あー……まぁ俺も似たようなもんだよ。賢者さんが聞きたいのはそういうのじゃなくてさ、もっとこう……」

    「祈りや信仰として、天国や地獄といったものが、この世界でも信じられているかということか?」

    「そういうことなら中央の奴らに聞けばいい。俺たちに聞いても面白くないぜ。ファウストとネロを見てみろ、夢や希望がどこにある」 

    「シノ!」

    「はは、シノの言うとおりだよ」



    「ネロの好きな本を教えてください」

     どうしたリケ、本なんか読んでえらいなあ。またミチルたちと勉強してるのか? だけど、そういうのはルチルとかに聞いた方がいいと思うぜ。と、頭を撫でようとした手をかわされる。

    「そうじゃなくて、ネロの好きなものが知りたいんです。僕はまだ読み書きがあまり得意ではないけど、でも、ネロの好きな本を読んでみたいんです」

     読書は好きだ。東の国で暮らすようになってから、本を読んで過ごす時間ができた。1人きりの部屋で、物語に耽るのは贅沢な生活に思える。”普通”っぽくて、気に入ってる趣味だ。しかしネロの部屋に本棚はない。本を開き、普通の暮らしをなぞってみたところで、結局それに興味も愛着も持てなかった。今まで読んできた本は、荷物のどこかに置いてある気もするし、店を転々とする間に手放してしまった気もする。

    「『ライ麦畑でつかまえて』って知ってるか?サリンジャーの」

    「初めて聞きました。古い本でしょうか?」

     俺の生まれた場所は北の国でも治安の悪い所だった。ろくでなしの家だったから、ひとりで生き抜くためになんでもした。誰もが生きるのに必死だった。毎日顔を出す露店で食べ物を盗み、市場ですれ違う人から財布をすった。生きることに犠牲が必要だった。

     だが、俺の地獄はこんなところではない。俺の地獄にはいつだってあいつがいた。俺が信じたのは、お前だけだった。ひとりになって、今さらまともぶって、何の意味があるのだろうか。正しさが何なのか、頭ではわかっているつもりだ。まともになりたい。でも、なれないこともわかりきっている。

     代わりなんてできやしなかった。あんただけだったんだよ。

    #

    「ネロ、お前本とか読まねえよな」

    「別に、盗賊で生きていくのに、本なんて読んだってしょうがねえだろ」

    「まあそうだけどよ。『ライ麦畑でつかまえて』とか、読んだことないのか」

    「ねえよ。それ読んだら腹が膨れるのかよ」

    「情操教育だよ。いつか読んどけ」


     そう、古い本なんだ。昔の受け売りだ。


     俺はまだサリンジャーを読んだことがない。あいつが牢に入ってから、やっと手にとった本は、引き出しの中で何十年もしまわれている。でも俺の地獄に本はない。

     ネロ! この本はまだ僕には難しくて、今は読めないけれど、いつか絶対に読み終えてみせます。その日がきたら、またいっしょに好きな本の話をしましょう!

     俺にいつかは来ない。俺はいまも地獄にいる。サリンジャーは引き出しの中で、埃を被ることも許されず、何百年もしまわれている。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💗💗💗💗💗👏👏👏👏👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    44_mhyk

    SPOILERイベスト読了!ブラネロ妄想込み感想!最高でした。スカーフのエピソードからの今回の…クロエの大きな一歩、そしてクロエを見守り、そっと支えるラスティカの気配。優しくて繊細なヒースと、元気で前向きなルチルがクロエに寄り添うような、素敵なお話でした。

    そして何より、特筆したいのはリケの腕を振り解けないボスですよね…なんだかんだ言いつつ、ちっちゃいの、に甘いボスとても好きです。
    リケが、お勤めを最後まで果たさせるために、なのかもしれませんがブラと最後まで一緒にいたみたいなのがとてもニコニコしました。
    「帰ったらネロにもチョコをあげるんです!」と目をキラキラさせて言っているリケを眩しそうにみて、無造作に頭を撫でて「そうかよ」ってほんの少し柔らかい微笑みを浮かべるブラ。
    そんな表情をみて少し考えてから、きらきら真っ直ぐな目でリケが「ブラッドリーも一緒に渡しましょう!」て言うよね…どきっとしつつ、なんで俺様が、っていうブラに「きっとネロも喜びます。日頃たくさんおいしいものを作ってもらっているのだから、お祭りの夜くらい感謝を伝えてもいいでしょう?」って正論を突きつけるリケいませんか?
    ボス、リケの言葉に背中を押されて、深夜、ネロの部屋に 523

    recommended works

    44_mhyk

    DOODLEねこさわ無配に絡めた妄想語りです。(フォ学パロブラネロ♀)

    カフェ「サンセット・プレイリー」の常連さんになって、カウンターでブラネロが初めて店に入ってくるところに出くわしたいなというただの語りです。
    カウンターの端っこの定位置でモーニング待ってたら、「ここかぁ、なかなか雰囲気悪くねえな」って言いながら店の扉を推し開いて背の高いやんちゃそうな顔の整ったメンズが入ってきて、そのすぐ後ろにいた灰青色の髪の女の子を先に店内に入れるよね。
    「珈琲もだけど飯がとにかく美味いらしいんだ」ってちょっと男の子みたいな口調の彼女が嬉しそうに言うよね。
     それを見た銀と黒の髪の男の子がおう、楽しみだなと子供みたいな笑顔を見せるのを目の当たりにしてウッって心臓貫かれたい。
     垂れ目の元気ないつもの店員さんが「カウンター席でいいッスか~?」って彼女たちに言って、偶然傍の席になる。
     すぐ隣からどちらの香りともつかないいい香りがふわっと漂う…食事の邪魔にならない程度のさりげない抑え目の香りが。
     それを吸い込みながら珈琲を飲んでああ…今日はいい日や…ってかみしめたい。

    「何食うんだよ」
    「うーん、これとこれで迷ってる…(モーニングメニュー指差しつつ)」
    「んじゃ二つ頼んで分けたらいいだろ」
    「冗談じゃねえ、てめえ半分こじゃなくてどっちも8割食うじゃねえか」
    「半分にするって。足りなきゃ追加すりゃいいだろ。す 675

    時緒🍴自家通販実施中

    TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」
    盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
    かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
     普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
    1852