あの日の夜があまりにも非日常だったから、暇なときはベランダに出て外を眺めていたんだけど、全然現れないから、やっぱ夢だったのかな~ってボソッと呟いたら、何が?って上から聞こえて、え?って思ったらあの日の男がストンッてベランダの手すりに降りてきくるやつ
流石にまた非現実的すぎたからおもわず、まぼろし…?って言うと、男はプッと笑って、何それ僕のこと?現実だよ。って
んで、遠くからどこだー!って声がして、男は、またね。つって降りるやつ
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あれから外出てるときも空を眺めることが多くなって、今日も信号待ちしながらビルの上とか見てたら、何かがビルとビルの間を飛んでて、信号青になったのに引き返して思わず走って追ってしまう話
もちろん追えるはずもなく、結局すぐ見失って、一応いろんなとこ探してみるけれど見つからなくって、
行き止まりの路地裏でしゃがみこんで息を整えながら、そんなもんだよなあとひとりごちていると、上から大丈夫?って声がする
顔を上げると、あの仮面の男が目の前に立っていて、あっ…と声がでてしまう
「僕に何か用だった?」と言われて、探してたことバレてるのがわかって恥ずかしくなりつつ、何かちょうどいい言い訳も思いつかず素直に「用……用はないです…」と言うと、怪訝そうに首を傾げるので、
「その……私にもよくわからないんだけど、ただ、あなたに会いたかっただけ」と言ってしまう。そこで自分も、ああそっかって、この人に会いたかったのかって自覚する。
仮面の男は、「……そう」つって、手を差しのべてくるので、おずおずと自分の手をだすと、しゃがんでた自分をひっぱり上げてくれて、
「僕は…ジェスター。仲間からそう呼ばれてる」「ジェスター?」「また今夜、会いに行くよ」そう言ってジェスターはタンタンと壁をのぼっていってしまった。
今夜会いに行く。その言葉だけがずっと一日頭の中でリフレインしていて、いつの間にか夜になっていた。いつどこで待っていればいいのか、詳しく聞くのを忘れていたな。と思いつつ、ベランダに出た。
外は色んな雑音がどこか遠くから聞こえるだけで、自分の周りは静かだ。風は冷たいし、星なんかも見えない。
「やっぱりまぼろしなんじゃないかな」
そうつぶやくと、
「現実だって言ったじゃん」
また上から声がして、わっ。とびっくりしてしまった。
こんばんは。と仮面の男が手すりに腰かける。落ちてしまうのではないか?と思ったけれど、だからといってさすがに家に上がらせるのもおかしいし、隣にきてくれとも言うのもなんだか変だし、と一人で結論づけてそのまま前を見た。ビルの上を飛べる人だ、落ちることはないだろう。
そうしてしばらく、お互いに少し無言になってしまって、どうしたらいいんだろう…とチラっと隣にいる男を見た。男は星も見えない空を見上げている。非日常の象徴ともいえる白い仮面が気になった。
「ジェスター…さん?はどうして仮面をつけているんですか?」
「とってほしいの?」
「えっ?いえ、どっちでもいいです、見たいとかじゃないので」
「……まあ、色々とね」
顔を覚えられると困ることやってるしね。仮面の男はそう言って、仮面にコツコツと指を当てる。
「ここ、移動に使いやすいルートなんだ。黙っててくれてありがとね」
「誰かにバレたら、来られなくなりますか」
「そうだね、ルートを変えなきゃいけなくなる」
そもそも誰かに話すつもりはなかったが、少しドキっとしてしまった。私が外でキョロキョロ探したり、追いかけたりするのも、よくないことだったのかもしれない。私は、気を付けます。そう言って、手すりを握った。
「今日は何してたの?」
突然そう尋ねられて、質問の意味を理解するまで少し間があいてしまった。どうしようかな。指をくるくる動かして考えるけど、それっぽいことも思いつかず、正直に打ち明けた。
「…その、掃除用品を買いに…」
「掃除?」
「ベ、ベランダを掃除しようと思って。………汚いと来てくれないかなって」
結局あなたを探しまわってそのまま何も買わずに帰ってきてしまいました、とはさすがに言わなかったけれど、結局あなたが理由ですと言ってるようなものだった。
もっと何かいい言い訳とかあったでしょ。言ってしまったらもう後の祭りだ。恥ずかしくてうつむくと、上から笑い声が聞こえた。
「汚くないとおもうけど、そっか。うん、まあ綺麗だと服汚れなくていいしね」
それって慰めですか。私は更に恥ずかしくなって、手すりにおでこをくっつけた。どうしてだか、彼の前だとうまく言葉が出てこない。困ったな。
笑ってごめんって。彼はそう言って、私の肩を軽く叩く。
「不思議なひとだね、君って。普通こんな仮面つけた何してるかわかんない男、近寄りがたいでしょ」
私だって不思議だと思う。
気になって気になって仕方ないのだ。目を閉じても私の中のあなたは目立つから。でも、その理由はまだわからない。
「変、ですかね?」
「ううん?不審者だって叫ばれるよりいいよね」
「……さっきからうまくはぐらかされてるような?」
彼はまた声を上げてわらった。もしかしたら、ピエロの仮面なんかなくても、よくわらう人なのかもしれない。本当は。
さっきはどっちでもいいって言ってしまったけれど、ちょっと、仮面の奥の笑った顔が見てみたいなと思ってしまった。その気持ちがバレないように、私は夜空を見るふりをした。
「…今日はもう帰るよ」
「あっ、はい。お気をつけて」
彼はまた手すりにすたんっと登って私を見る。
「あの」
「うん?」
「どうして、今日来てくれたんですか?」
月明かりに照らされた白が光っているみたいだと、あの時からずっと、思っていた。
私は、見えなくなるまで、その白を見続けていた。まぼろしのようでいて、輪郭がはっきりしている不思議なひと。
彼がくれた言葉を思い返し、また会える、そんな確信を持ちながら、目を閉じた。
「僕も君に会いたかったから」
そう、これは、一番星を見つけたような、そんな。
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みたいなのが読みたいのですがどなたかかいてくださらない!?!?!?!