Wedding Anniversary 鮮やかな紫色の花は圭介を驚かせた。真っ赤な花束を抱えてくるものとばかり思っていたのだ。
特徴的な花の形は愛らしく、しかしこの色はあまり馴染みがない。圭介は不思議に思った。
「チューリップ?」
「おう、可愛いだろ」
圭介は靴を履いたままの真一郎から紫の花束を受け取った。手元には金色のリボンが巻かれ、花は薄ピンクの包装紙と透明なセロファンに包まれる。花束は顔が埋められそうなほど大きかった。
「でけぇ」圭介は言った。
「他には?」
「きれい、かわいい、でかい」
「雑に扱うなよ」
花束を抱えて廊下を行く圭介の背を、スニーカーを脱ぎ捨てた真一郎は仕事終わりの疲れた表情で追いかける。
花の中に名刺大のカードが差し込んであった。飾られたアルファベットが並んでいる。圭介は背後で上着を放る真一郎に見えないよう、カードにそっとキスをし、それをまたチューリップの中へ戻した。
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