イチ白い
それは僕が唯一知っている色だった。
天井も、床も、ベッドも、そこに寝ている僕ですら白い。
この部屋に存在するものは全てが白かった。
鼻をつく消毒液の匂い。
トレイの上に置かれた何本もの注射器。
僕の体を縛り付けるように貼り付けられた何本もののコード。
誰かが白いドアを開けて音もなく入ってくる。
誰かが動くたびに白衣が揺れる。
無造作に壁に貼られた写真が共鳴するように僅かに揺らめく。
僕はあれが何の写真なのか知らない。
なぜそこに存在するのかも知らない。
写真は僕のことを知っているのだろうか。
彼は動かない僕の掌に触れた。
生暖かい感触が電気信号となって僕の脳を刺激する。
僕はゆっくりと彼を捕らえた。
近くに居るはずなのに、
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