デフアロ 初書きどうしてこうなったんだ。
心の中でひっそりと溜め息をついたのが実際にも出ていたらしい。そろそろ店仕舞いの時間だということもあり、賑やかだった酒場も閑散としてきた。こちらも清算をして出たいと言うのに、自分の腰に抱きついて離れようとしない酔っぱらいにはほとほと困り果てる。
それが密かに想いを寄せる相手ならなおさら、どうしたらいいのか…女性ならばスラスラと美辞麗句も出てくるというのに、この体たらく。伊達男の名が廃るぜ。人の気持ちも知らず、ヘラヘラと笑いながら抱きつく男が可愛くて、憎らしい。複雑な想いを込めつつも髪を少々乱暴にすいた。
「おら、いい加減出るぞ」赤く染まった頬を軽く叩きながら促すと、ふにゃりと笑っただらしない顔がこちらに向く。酒気をおびてトロリと潤んだ瞳は、とても美味しそうで折角正した理性がグラリと傾く。いかんいかんと自制を呼び起こしていたのに、思いがけない言葉が俺を襲った。「チューして…」
1644