あなたの嫌は本当の嫌じゃないでしょう 自宅に戻ってきた七海建人は、上着を脱ぎネクタイを外すとそれから手を洗いに行った。暑かったので顔も洗った。鏡に映った自分の顔を少し眺めた。
それからリビングに続いているキッチンへ行き、冷蔵庫を開け水を取り出してグラスに継ぎ、一杯を飲んだ。
フーっ
息を吐いた。
今日、自分は何故あんなに怒ってしまったのだろうか。
五条がふざけたことをしたり、煽るようなことを言ったりするのは今に始まったことではない。それでも家で二人きりのときは、そのふざけにも煽りにも多少甘いものが混じって、七海はため息をつきながらも何だかんだと相手をするし、結局は笑ったりもするのだが。
他に人がいるとき、たとえば高専では、しばしば五条のそれはタガを外す。あれはどういう心理なのだろうか。
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