【保鳴】スプラッシュアワー止めどなく噴き出していた汗もやっと落ち着いてきた。
日陰になっていた縁石へ腰を降ろした保科は、隣に並ぶ鳴海の横顔へチラリと視線を流した。
黒と白の前髪が快適そうに揺れている。
どうやら杞憂だったみたいやな。
恋人にバレないよう、保科は密かに胸を撫で下ろした。
デートも後半戦。真っ青な空に貼りついている白い太陽は、まだ高い。
炎天下の遊歩道では、晴れやかな笑顔が行き交っている。
保科はたっぷりの氷に浸ったレモンウォーターで再び喉を潤し、鳴海へ声を掛けた。
「時短パス使わんで終わるかと思うてたんやけど、持ち直したみたいで安心したわ。いつ、『やってられん。ボクは帰る』て言い出すかてヒヤヒヤしとったんやで」
「ふん、よくそんな見え透いた嘘をつけるもんだな。さっきも土産だとか言って何か買っていただろ」
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