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    idea_beecham

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    idea_beecham

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    DD身内向け
    ※ものすごい捏造
    ※これは全然真実ではないただの二次創作
    ※解釈違いあったらごめんなさい

    ショーン秘話 これは、復讐ではない。言うなれば、自殺だ。
     死者の迷宮、その案内人の数歩前でショーンは心の中で呟いた。あの日、彼の全てを奪った死者の迷宮は、未だに冒険者たちを飲み込んだままそこに鎮座している。
     …仲間が心臓を穿たれ、アンデッドにさせられたあの日。ショーンは傷つき倒れ、一瞬にして肉が腐っていく仲間を背に、本能的にその場から駆け出した。幸いして、いや不幸だったか、彼は癒し手であった。敵から逃げ延びるには、十分の距離を保っていたのだ。
     彼は仲間を見捨てようだとか、自分だけが助かろうと思っただとか、そんな理性的な考えを持っていたわけではない。ただただ、死の恐怖から逃げ果せたのだ。足を動かす間、なにも見えなかったしなにも聞こえなかった。ただ感じるのは、迫ってくる死の恐怖のみであった。
     一心不乱に足を動かし地上の光をその目に浴びたとき。彼は、絶望した。自分の愚かさと、失ったものの大きさに。

     それから数日経って、再び彼はこの地に立った。
     仲間たちは、まだ腐臭漂う迷宮の中で彷徨っている。魔道士二バスの秘術により、腐った肉体を携えて仮初の魂を植え付けられ、自他の見分けもつかずに這いずり回っている。
     …到底、自分一人では復讐など果たせはしない。ショーンは、それをわかりきっていたのだ。彼は白魔道士であり、癒しの術に自信はあれど戦う術は1つ、2つしか知らない。だから、これは緩やかな自殺なのだ。
     彼の仲間を見捨てた自分との決別。そして、あわよくばアンデッドになった彼らの血肉にでもなれば…それでいい。絶望した、男に生きる道などありはしない。それならば最期に彼の地を荒らし、少しでも二バスに痛手を加え、仲間の血肉にでもなってしまいたい。
     そう思いながら、案内人に声をかけようと一歩踏み出したとき、声をかけられた。

    「あなた、癒し手でしょ?」
     振り返ると、若いミコッテ女性が自分を見上げている。
    「そこのヒトは護り手、そっちが攻め手、あたしは攻め手…うん!おあつらえ向けだね!」
     彼女が周りを見渡した。傍らには、同じく突然声を掛けられたのであろう、二人の男性が並んで肩を竦めている。
    「よし!あたしイデア、あんたは?」
     凛とした声が響く。彼女から差し伸べられた手を、ショーンは握らなかった。生を感じる温もりに、触れることを恐れたのだ。
     震える手を握りしめ、絞るように声を出す。無意識に力が入り、噛み締めた歯から血が出てしまいそうだ。色を無くして乾燥した唇を開く。
    「……悪いが、俺は誰かと共に行く気はない…。」


    ───────
    「…悪いけどッ!ショーンは渡さないからなッ!」
    「ノクティたちと、これからも一緒にいるんだから!」
     は、と意識が戻る。現か幻か、響いたかつての仲間の声は、この場にいる皆に聞こえていたようだ。かの魔道士二バスを討った今、そこら中にひしめくアンデッドたちは次々に倒れ伏していく。術が解け、ただの死体になった肉体は動く術を持たずにただの肉になっていった。その中に、かつての仲間がいたのだろうか。損傷の激しい肉体では、個体を判別することは難しかった。
     ぐらりと視界が揺らいで、ショーンは頭を抑えた。…視界が揺らいだのではない、涙があふれたのか。そう気づいたのは、嗚咽が漏れたと同時であった。
     ふと、思い出した。自分が彼らと過ごした日々のことを。護り手のあいつは、いつも柔和なやつだった。攻め手の彼女は、戦いにストイックであった。その相方は、ふざけているように見えて本当は誰よりも真面目だった。
     ──フラッシュバックする。共に戦った日々を。ショーンに向かいくる敵を押しとどめ代わりに傷を負った彼の優しい笑顔を。前線で命を張り、毎日術を研究した彼女を。酒を勧めてきたくせに、一番弱かったあいつを。癒した傷を治すとき、彼らはいつも笑顔で礼を言った。
    『ありがとう、ショーン。』
    『頼りになるよなあ!お前!』
    『あなたも、無理したらダメだよ。癒し手がいなかったら…私たちのこと、誰が治してくれるの?』
    『だから、死なないでね。』
     思い出した彼らの笑顔は、生気に満ちていた。

    「……すまない、…お前たちを忘れたわけじゃないんだ…。ただ、俺には…新しく、守りたいものが出来てしまった。…それだけなんだ…。」

     小さく、祈りを捧げる。止めきれなくて溢れた涙が、ポタリと落ちて床を濡らした。シミになったそれは、紛れもなく生きている証だ。
     大きな掌が背中を摩る。横を見れば、アウラ族の男性がいた。大柄な彼の掌は、温かい。背中にじんわりと血潮の通う温もりが伝わり、それが移るように背中が熱を持って全身に広がる。
     手首を掴まれる。肩に手を置かれる。見なくとも、ミコッテの女性、エレゼンの男性が自分自身に触れたのがわかる。
     伝わる温もりは、かつて自分自身が諦めたものだ。そして、ここに鎮む彼らが亡くしたものだ。
    「願わくば、彼らにクリスタルの導きがあらんことを…。」
     そう呟いたのは誰だったのか。ショーンは、涙を拭って星界に還っていく彼らに、ほんの小さく笑いかけた。


    ──────────
    「ううう〜〜〜〜っ!!みんなが…!みんながき゛て゛て゛か゛た゛〜〜〜っ!!」
    「まぁ〜〜た始まったよ、ヒック、ショーン酒弱すぎ!ック、こんな弱いヒト、あたし、見たことないもんね!」
    「うんうん、そうだねイデアちゃん。とりあえず、温泉のお湯をコップに入れて飲むのはよそうか〜」
    「うわーーーんッ!ノクティも……ショーンくんが生きててよかったよぅーーーーっ!」
    「あーあ、ノクティくんまで泣きだしちゃったよ…ご近所迷惑だよ〜?…まあいいか、生きてこそ。…だしね〜」


     ────今も彼らの声は胸に響く。色褪せはしても、消えることはない。明るい笑い声が、名を呼ぶ声が、途絶えることはない。
     それでも、ショーンはエオルゼアの地を踏み締める。名前を呼ぶ、イデアたち仲間の声が聞こえるたび、生きる喜びが湧き上がるからだ。
     自分を必要とする誰かのため。……生きる理由なんてものは、それで十分だ。そう思っては、未来を見つめるのだ。


    「………俺が温泉の、歌姫だ…ッ!!聞いてください。『運命の赤い薔薇』…。」
    「ヒュー!!ショーンいけーー!」
    「あーあ、面白いことになっちゃって…。」
    「明日になってもショーンくんには、歌のこと言わないであげてね…かわいそうだから…。」
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