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    薄荷🌿

    @hakka1186

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    薄荷🌿

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    !暗い話!解決まで書いてない!
    DV彼女と付き合ってる花(大学生)の話。花の心がかなり壊れそうになってる。公式にない設定を捏造してます。花から洋に無意識矢印が向いてる。

    ⚠暗い⚠ 花→(無意識)洋 玄関を開けると奥から微かなカチカチという音がして、頭痛がした。皺が寄った眉間を抑えながら靴を脱ぎ、カバンを置いてふすまを開ける。
    「ただいま」
    「……あっ」
    「買ってきたんかコレ」
     取り上げたカッターの刃が汚れていた。足元でくずおれている彼女の細腕には幾つもの傷と跡がある。痛いだろうに。何度言ってもやめないからハサミもカッターも捨てて、包丁を仕舞っている棚にはダイヤルキーを付けた。その番号が記念日でも誕生日でもないと知った彼女は荒れた。なんと言って宥めたらいいのか分からなくて、その時はただ蹴られるのに耐えた。痛みは大したものじゃないし満足するまで蹴らせたらそのうち泣き崩れるから抱きしめてやれば可哀想なほど謝るからどうにも出来ない。
    「××、腕だせ。手当すっから」
    「要らないっ」
    「バイ菌入る、跡になっちまうし」
    「もうなってるもん、今さら優しくしても意味ないから」
    「優しくとかじゃねーけど」
    「じゃあ何っ、同情?」
     そうかもしれない。
     カッターをガムテープで巻いて捨てる。棚から救急箱を取りだして腰をおろした。実家から持ってきた救急箱をこんなに使うとは思わなかった。喧嘩もしないし要らないだろと言った俺に、何もケガは喧嘩だけじゃないと笑った親友とはもう半年近く会ってない。
    「今日は大学行けたんか」
    「行ったけどっ、また皆こっち見てきて、無理だった」
    「見るぐれーするだろ、ビジンが来たぞってよ」
    「うるさい、うざい。みんな睨んでくるのっ」
     うるさい。うざい。そんなこと言われたらそれが誰だろうと頭に血が上る人間だと自覚していた。でもここ最近はなんとも思わない。相手が恋人だからだろうか。
     傷の手当てがやたら手慣れているのも一度怒りを買ったことがある。よく喧嘩をしたから慣れてるだけだと伝えても上手く届かなくてその時は台所に向かおうとするのを力尽くで止めた。力尽くといっても腕を掴めばそれで終わる。跡にならないように最低限の力で抱きしめるように抑えて、金切り声を耳元で聞きながら考えていたのは男の手だった。手当てに慣れてるというのは半分嘘だ。何度も手当てされたから順序を覚えているというのが正しい。
    「ン。おわり。飯食うか?」
     包帯をテープで留めて救急箱を閉じる。立ち上がろうとしたらあぐらの上に跨られてキスされた。唇を舐められて反射的に口を開けると生ぬるい舌が滑り込んでくる。舌がやたら甘かった。またミルクティーしか飲んでないんだろう。
     つれてって、と囁かれると体が勝手に動いた。横抱きにして二歩くらい先にある洗濯物まみれの布団に彼女を下ろす。腕に生傷があるのに体を動かすのは良くないと思うけど言ってもどうせ伝わらない。拒んで機嫌を損ねるのは面倒くさい。
    「……あ」
    「なに」
     冷や汗が滲んだ。体を起こしてテーブルの上に置かれた紙の小箱を手に取る、空だった。
    「わりい、ゴムきれてた」
    「えー……、じゃあ生でいーよ」
    「よくねえ」
    「危険日じゃないからヘーキ」
     その言い方が嫌いだ。子供ができるのが危険で、できないのが安全。確かに今の生活で子供が出来たらマズイけど、そういうことじゃなくて、家族が増えることを危険とするのが嫌だ。
     それに嘘をつかれてる。先週がセイリだったから今日は妊娠しやすい日のはずだ。
    「今シてーなら買ってくる」
    「なにそれ。私がしたがってるみたいじゃん」
    「んなこと言ってねーよ」
    「言ってるっ、なんで嘘つくの!」
    「ついてねーって」
     落ち着けよ、と口が勝手に言っていた。それが引き金になって半狂乱で言葉が飛んでくる。正直それの半分も耳に入って来なくて、俺はただ自分の発言を思い返していた。
     落ち着けよ、なんて今まで言われたことしかなかった。最近の俺の言動はすこし洋平に似てる気がする。今日の出来事を質問したり、手当てをしたり、感情的になるのを宥めたりするのはいつだって洋平だった。洋平は俺に対してそういう態度をとっていた。
     今、俺が彼女に抱いてる気持ちで洋平が俺に接していたのだとしたらどうしよう。中学時代に自暴自棄になってた俺と、喚きながら怒っている彼女が重なる時がある。俺は洋平たちに支えてもらったのに、俺は目の前の人を何も支えてやれていない。洋平はどういうふうにしてくれたっけ。笑っていた気がする。でもその顔が思い出せない。声も、思い出せない。
    「飯、作ってくる」
     縋ってくる彼女を布団に残して台所へ向かった。酷い言葉を吐かれてる気がしたけど頭に入ってこない。長い爪で引っかかれて手の甲に血が滲んだのは辛うじて気づいた。
     廊下に置きっぱなしのカバンから野菜を取りだして流し台に置く。冷蔵庫に入れるものを移して、ぬるくしてしまった肉はもう今日のうちに使うことにする。
     腰をかがめてダイヤルキーに手をかける。数字を回していたらふと視界が歪んだ。解除のキーは「1023」だ。今日の日付だった。
    「よーへー……」
     今日は親友の誕生日だ。
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