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    HCmn_M

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    SCP-1917-JPパロ🍁❄♀

    彰人、ありがとう。
    ごめんなさい。愛している。
    こんなになっても、ずっと、お前だけを。

    それが、冬弥と交わした、最後の言葉だった。

    あの夜を越えてみせる、と。最初はオレ1人の。そして、2人の夢になり、やがては4人の夢になった、その目標を、オレ達は叶えることができた。ずっとオレの横で共に歌ってくれた彼女と喜びを分かち合い、いつまでも冷めぬ熱に溶け合ったのを、今でもはっきりと思い出すことができる。

    夢を叶えたら、指輪を贈ろう。
    それは高校を卒業してから、心に決めていたこと。これからも、相棒として、そして、伴侶として、共に生きていきたいと。そう伝えよう、と。けれど、それは叶わなかった。

    あの夜を越え、夢を叶えた途端、冬弥の体はまるで電池が切れたように、まるで、己の役目はこれで終わりだとでも言うように、みるみるうちに衰弱していった。立ち上がることが難しくなり、食事を自らの手で取ることができなくなり、ひと月経つ頃には病院のベッドで寝たきりになった。

    そうして、大好きな歌を口ずさむことすら困難になった冬弥は、弱々しい声で、最後の言葉をオレに告げる。

    感謝と、謝罪と、愛の言葉を。

    この時には、彼女自身、自分の死を悟っていたのだろう。その日の夜から、冬弥の瞼は閉じたまま。辛うじて彼女に取り付けられた機械の波形が揺れることで、その命が潰えていないのだと、なんとかわかる状態になった。



    それを知覚したのは、星空を眺めていた時だった。
    彼女がきっと旅立って行ったのだろう空を、高い所が苦手な冬弥はちゃんと天まで行けたのか、と仰ぎ見て心配していると、その予感はやって来た。

    「……え」

    直感とも言えるそれ。根拠はないのに、なぜかそうしなければならないという、使命感。そして、何より。

    「…………冬、弥……?」

    彼女がいる、という確信がオレの中に生まれたのだ。そんなはずはないと、冷静さを保っている理性が声を上げていたような気もするが、それを上回る衝動がオレを動かした。

    強く地を蹴る。冬弥がいる。冬弥が。
    一心不乱に足を動かし、走るオレの手の中には、いつの間にか一丁の拳銃が握られていた。

    走って、走り続けて、夜もとっぷりと深けていき、もう空が白け始めてもおかしくない時間帯のはずなのに、空は未だ暗いまま。オレはただただ走り続ける。冬弥がいる場所は、考えずともあの不思議な直感が教えてくれた。

    そうやって駆けて、もうすぐ冬弥のいるそこに着くというところで、その場所に不釣り合いな白衣を着た男が、そこに立っていた。男はぶつぶつと何かを呟くと、オレに向かって言い放つ。

    「君は、この先にいる少女に会いに来たのか?」
    「……は、少女……?」

    それは冬弥のことだろうか。
    オレがわかるのは、この先に冬弥がいる、その一点だけである。しかしながら、高校も卒業し、成人している彼女が世間一般的に『少女』と呼べるかと問われれば、首を傾げてしまう。もちろん、少女から成長した彼女もオレにとっては世界で一番愛らしい女性ではあったが。

    「少女が誰かは知らねぇけど、オレは冬弥に用があるだけだ」

    そうだ、オレはこの手で、彼女をこの銃で撃ち抜かなければならない。
    覚悟を決め、拳銃を強く握り締めた。



    《とある職員のメモ》

    20 ██/██/██

    SCP-1917-JPが出現。場所は██都██にある、地元民からは████ストリートと呼称される通り。
    職員は直ちに特別収容プロトコルに従い、近隣都市部を閉鎖。住民の避難誘導を開始。

    やはり影響を受けた生物、人物は夜明けが知覚できないという異常事態を肯定的に受け止め、混乱は見られなかった。

    今回の出現したSCP-1917-JPの人型実体は髪の長い10代半ばと見られる色白な少女である。

    ██:██
    SCP-1917-JP-Aと思しき男性がSCP-1917-JPの元に到着。すぐさま特別収容プロトコルに従い、彼をSCP-1917-JP-A対象者とし、Eクラス職員として臨時雇用した。

    SCP-1917-JP-A対象者は20代前半と見られる青年である。
    彼はこれまでのSCP-1917-JP-A対象者と同様、SCP-1917-JPの殺害の必要性を感じていることが確認されています。

    以下、SCP-1917-JPとSCP-1917-JP-A対象者の会話である。

    【会話ログ1917-JP-██】
    会話者
    SCP-1917-JP(容貌は██氏に酷似)
    SCP-1917-JP-A対象者(██氏の恋人)

    [音声記録開始]
    財団職員██:では、会話を始めてください。

    対象者:ん、あぁ、いいのか?……██(SCP-1917-JPのオリジナルである少女の本名)、お前、そこで何やってんだよ。

    SCP-1917-JP: ██(SCP-1917-JP-A対象者の本名)?何って、踊ってるんだ。朝が来るまで。私はこうして、ここで踊っている。このまま、次を朝を、私は迎えたい。

    対象者:(1分の沈黙)そう、か……。でも、██、それはダメなんだ。朝は……お前に、次の朝は、もう……だから██……。

    SCP-1917-JP:██は、嫌なのか?私がここでこうしているのは……。

    対象者:んなわけあるか。お前と話せてオレだって嬉しいに決まってるだろ。お前の意識がなくなってから、何回夢に見たと思ってんだ。オレだってできるならずっと、こうしてお前と……。

    財団職員██:██さん、SCP-1917-JPはあなたの恋人とは別存在です。

    対象者:(2分の沈黙)わかってはいるんだ、オレの愛した██はもう、どこにもいない。だから……。

    SCP-1917-JP:██、もしも、お前が朝を望むのなら……どうか、お前の手で止めてほしい。

    約5秒後、SCP-1917-JPは無事SCP-1917-JP-A対象者により射殺され、同質量の生理食塩水へと置換されました。

    [音声記録終了]

    【補遺】
    これにより、SCP-1917-JPの影響は取り除かれ、影響を受けていた生物、人物は夜明けを知覚すると共に、影響下にいた時の記憶を失った。しかし、SCP-1917-JP-A対象者であった青年に対するSCP-1917-JPを殺害した時の記憶を消す如何なる試みも、未だ成功してはいない。

    また、SCP-1917-JP-A対象者であった青年はSCP-1917-JP殺害後もその影響から脱しておらず、変わらず夜明けが知覚できないことが明らかになった。彼自身、このことについての異常性は理解しているものの、概ね肯定的に事態を受け入れているように見える。



    SCP-1917-JP
    オブジェクト名:夜が明けるまで踊らせて、それがダメなら貫いて
    オブジェクトクラス:Keter
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