どうして、こんなことになってしまったのか。
何度も考えたそれをまた考えながら、東雲彰人は体の奥から込み上げてくる熱にぶるりと腰を震わせた。彰人の手の中には勃ち上がった自身のペニスと、同じく勃ち上がった、けれど彰人のモノよりも色白な相棒のそれ。あぁ、まさか自分のモノでないモノを握ることになろうとは。去年の自分が知ればきっと卒倒するだろう。
ぐちゅぐちゅと2人分の我慢汁がいやらしい音を立てて、ぬるぬると擦れ合って生まれる摩擦を気持ちのいい刺激へと変換していく。手を動かしながらちらりと向かい合わせに座っている相棒を盗み見ると、彼は快感に白い頬を赤く染めて目を瞑り、小さな唇から同じ男とは思えない声を出していた。
「……んんッ、んぅ……ぁんッ♡」
普段の落ち着いたものとはかけ離れたそれは甘い毒のように彰人の体を駆け巡り、中心を熱くさせる。だが、冬弥は男で、相棒で、これはただの性欲処理だ。冬弥が自分では上手くできないから、相棒として手伝ってやっているだけだ。そう暗示をかけるように、毒に犯され思考力が削ぎ落とされていく頭で彰人は繰り返す。
事の始まりはとある日曜日の朝。いつものように練習をしようと冬弥と待ち合わせ場所で落ち合った時だ。到着した時点で、冬弥の様子が変だった。シャツの裾を引っ張り、足をモジモジと擦り合わせて、どこか怯えているような、困っているような表情をしていたのだ。彰人が思わず、どうかしたのか、と問うと、冬弥が震える唇を開く。
「体が、変なんだ」
「変?」
聞き返すと、こくん、と頷いた彼は握っていたシャツをペロリと捲ってそこを彰人へと晒す。顕にされたそれに、彰人は青朽葉を見開いた。まさか、相棒とは言え、他人のその状態のモノを服越しにでも見るとこになるとは、思ってもみなかった。晒されたのは冬弥の下腹部。そこは僅かに膨らみ、見ればひと目でわかるくらいには冬弥のそれは勃っていた。
「おまっ……朝勃ちなら抜いてこいよ……」
「……え?」
「……ん?」
彰人が思わず漏らした言葉に冬弥は首を傾げ、彰人もまた、冬弥の反応に首を傾げる。しかし、冬弥から放たれた次の言葉に、彰人は頭を抱えることとなった。
「…………あさだち、とは……なんだ?」
今思うと、無理のないことだった。冬弥はずっと親に支配され、管理されて生きてきた。同年代でそう言った知識を共有する相手も、性に関心を持つ心の余裕も与えてはもらえなかったのだから、仕方がないことではあった。だが、だからと言って誰がこんな未来を予想できただろうか。
「……ぁっ、だめ……あき……あき、とぉ……♡」
「ん、イキそうか?」
ギュッと腕にしがみつき、さらなる快感を求めて無意識に腰を押し付けてくる冬弥が、彰人の問いかけにコクコクと頷いて、「あきと、あきと」と助けを求めるように己の相棒の名を口にする。その切なげな声に自身ですら理解不能なドス黒い何かが胸の内に湧いて、彰人は手中の熱い欲を強く握り、シコシコと扱くスピードを早めた。
「ほら、イケよ、冬弥……っ、オレもイクから……」
「あっ、あっ……ゃぁああっ、はげしぃのっ、だめ……あきっ……、〜〜〜ッ♡♡」
「………………んっ」
ぴゅるぴゅる、と2本のペニスから白濁が吐き出されて、互いの腹を汚し合う。全力疾走をしたように荒い息を整えつつ、2人は示し合わせたように唇を合わせた。
オレ達はただの相棒で、親友で、男同士で。
これは性知識のない相棒を手伝っているだけで、それ以上でもそれ以下でもない行為。
彰人はそう言い聞かせて、何度も、何度も、慣れない絶頂に疲れ果てて無防備に身を委ねてくる相棒の唇を貪った。