窓「兄さん、まだ終わらないの?」
「あぁ、あと少しで終わるから、君は待っていて。」
「後片付けくらい、僕がやるのに…」
「何度も言っただろう?ご飯は君が作ってくれたんだから、後片付けは私に任せてくれ。」
金曜日、21時。この後見る予定の映画のDVDをセットし音量を調整し終えた花城は、手持ち沙汰になると二人の使った食器や調理器具を洗う謝憐の横でその様子を眺めていた。
花城にとって唯一で、最愛の人は皿洗いをする姿でさえ美しい。いつまでも見ていられそうだ。
しかし、次第に意地悪をしたい気持ちが芽生えてきて、最後の一枚を洗う彼の体を後ろからそっと抱きしめる。ほんの少しだけ、そんな無機物を丁寧に洗うのではなく自分に構ってほしいという欲が湧いたのだ。
「兄さん。」
「…三郎、」
『もう少しだけ待っていて』だとか、『三郎、動きにくいよ』だとか言われてしまうのだろうけど、謝憐が本気で嫌がらないことは長く生活を共にしていると分かっていた。
今日の謝憐はどんな反応をするのだろうかとワクワクしながら待っていると、彼はお皿を水切り台に置いてから手を洗い、おもむろに水を止めた。そして、側らのタオルで軽く手を拭いたあと花城の手に指を重ねる。先ほどまで水を触っていたからか、いつもは温かい謝憐の手はひんやりとしていた。
てっきりクスクスと笑いながら愛くるしい声で抗議してくるだろうと思っていた花城は、突然謝憐の手に直接触れたことに驚いて固まってしまう。決して嫌なわけではない。むしろ、嬉しくて、恐れ多くて、それでも彼から触れてくれたと言う事実が幸福で、感情に体が追いつかないのだ。
そんな花城をよそに、謝憐はさらに深く手を絡めてきた。それから、小さな声で花城に声をかける。
「…三郎、窓を、」
「ん?」
花城が聞き返すと、謝憐は少しだけ頭を上げて花城と視線を交わした。
「…窓を、閉めてくれないか?」
その瞳には、確かに熱がこもっていて、ごくりと息を呑む。
金曜日、21時。夜はまだ、これからである。
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力尽きたので、ここまでです。いつか続き書きたい。なんなら誰か続き書いてくださってもいいのですよ…喜んで栄養摂取しに行きます…🙏🙏