黄金の原はいまや遠く 金の穂が平野に揺れる。
大樹や杠たち農耕チームが日夜をかけて拓いた小麦畑は実りの季節を迎えていた。視界一面に広がった穂が戯れに吹き抜ける風に波打つ様子はさながら黄金の海のようだと小さく笑みがこぼれる。
「羽京、ここに居たのか」
覚えのある低い声に名を呼ばれ振り返った。
鮮やかなオレンジのコートを羽織った未来の船長が風に飛ばされないよう帽子を押さえながら歩み寄ってきている。
「龍水。なにかあった?」
「コハクが気になる航空写真を見つけてな。すぐ出れば日暮れまでに戻れる距離だったからクロムと調査に行って欲しいんだが、」
「そっか。すぐに戻る……」
そうして隣まで来ると、自分と同じように黄金の原へと目線をやった龍水に言葉が止まる。波立つ穂を見て穏やかに緩む目元には、なんとはなしに似た感想を思っているような気がした。
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