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    ume_suisyou

    エレリ

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    포이포이 3

    ume_suisyou

    ☆조용하게 팔로우

    原作軸 古城エレリ

    まぼろしみたいな ? …いま、唇に触れたのって、…まさか?

     ふわり、とからだが宙に浮いたと思ったら、ぐいん、と背中から地面に引っ張られていく感覚がした。同時に遠くの方から「エレン!」と叫ぶリヴァイ班の先輩達の声が聞こえて、そのなかで、一番近くで聞こえたのが「チッ」という舌打ちの音で、だから、ちょっと安心してしまう。
     ああ、あの人が来てくれた。
     ふわりと香る石鹸の匂い。視界にさらりと靡く黒髪のシルエット。彼の首元のクラバットが、エレンの頬を撫でた。そして、次の瞬間にそれは起きた。ふに、と柔いものが唇に触れる。ほんの一瞬だった。
    「エレンッ!」
    「兵長!
     ぼうっとするエレンを世界は無視して回っていく。まるでそんな出来事はなかったみたいに、ぐるり、ぐるりと。
    「…ったく、世話かけさせやがって」
    「……へい、ちょう?…あの、……」
     パシュッと乾いた音が四方から鳴って、班の先輩方が駆けつけてくれたのだ、と察する。エレンは、ワイヤー操作の凡ミスで落っこちた恥ずかしさ––––だけではないのだが、真っ赤な顔をマントの袖で隠そうとした。と、その身じろぎも許されないくらいに力強く、ぎゅうっと身体を抱える腕に力がこもるのを感じた。
    「あの…、へい、ちょ?」
    「派手に落ちたな。訓練兵五位が聞いて呆れる」
    「…す、すみませ…!」
     エレンに言いたいことはあれど、自分の身体を抱えている張本人からそう言われては、立つ背がない。抱えられているこの姿勢だって、俗に言うお姫様抱っこのそれだ。たしかにみっともない落ち方だった。訓練兵時代に鍛えたことの何も活かせちゃいない。だって、そんな余裕がなくて…、
     もっと気になることがあったのだ。身体が落っこちていくあの瞬間。
     覚えているのは、ああ、落っこちている。と身体が理解したこと。同時に、ああ、情けねえな。と脳みそに冷や汗をかいたこと。ただでさえ厄介なガキが、こんな単純な訓練で、さらに面倒をかけるわけにはいかないのに…と肩身がきゅうっと狭くなった。
     もういっそ、このまま抵抗せずに地面に頭を打ちつけて、死んでみたらどうだろうか…なんて思って、…いや、きっとそれも叶わないのだろう。と、まるで無重力みたいなスローモーションの世界で落っこちながら、エレンはそんなふうに思ったのだ。
     今は人間の姿だけど、巨人の力を宿したこの身体だ。ちょっとばかし背の高い木の上から落ちたって、たぶん死にやしない。だろう、けど、この身体の厄介なのは、ちゃんと痛みを伴うってところだ。痛覚は、普通の人のそれと変わらない。頭っからと言うのは回避しようとかろうじて空中で体制を整えて地面に背中を向けてみたけれど、落ちてしまうのはもう避けようがない。
     鈍く、痛く、響く衝撃を身体に覚悟した。ドン、という衝撃を。
     しかし、実際エレンが背中に感じたものは、覚悟した百分の一くらいの、とん、と触れる振動だ。同時に、ふわり、と石鹸の香りが鼻腔に漂ったのだ。
     トサッ…と抱えられる確かな重力の実感を伴って。
     これは。あの人だ。
     そう思った直後。
     唇にあの感触があった。ふに、と。–––たしかに。
    「兵長…、…あの、」
    「動きが散漫だ。ここに来た時はもう少しマシな動きだったろう。巨人化の実験続きで生身の身体が鈍ったか?てめえの訓練メニューを仕切り直す必要があるな」
     エレンを抱えているその人はいつもよりよく喋る。立て続けに言葉の隊列をつくって、エレンの身体を抱えながら、疑問だらけのエレンの視線と言葉を妨げる。
    「えっと…オレ、今……?」
    「なんだ。ぼうっとしやがって。身体だけじゃなく脳みそまで鈍ったか?エレン」
     ぐいん、と身体を持ち上げられて、ぐっ、と顔を近づけられる。エレンの目の前に迫ったその唇は、いつも通りの潔癖で厳格な兵士長の口調で、淡々としたものだ。
    「俺の感覚では地面に接触する前に間に合ったと思ったが。さては、頭を打ったか?」
    「……はい。…あ、いいえ!?、多分」
    「返事がおぼつかねえな。念のため医務室に連れて行け、ペトラ」
     ハイッと答えたペトラの高い声がエレンの右後方で響いて「さあエレン、こっちよ」と腕を取られる。ぼうっとしたエレンをよそに、テキパキと世界は回っていく。
    「しばらく寝かせておけ。容態に変化があれば即時俺に連絡しろ」
    「ハイッ!了解しました兵長!」
     エレンは世界に置き去りにされた気分だ。まだ頭がふわふわしている。たった今、自分に起こっこと。その感触を忘れないうちに脳内に思い描く。
     ふにっ。と、たしかに触れたのだ。そのリアルな感触がまだ唇に残っている。
    (オレ、へいちょうと––––キスっ…したのか!?)
     リアルな名残にぼっと赤く頬を染めるエレンをよそに、まわりの世界は何もおかしなことなんて起きてないぞと言いたげな顔をしている。訓練中にヘマをした新兵を兵士長が助けた。それ以上のことは起こっちゃいない。リヴァイ兵長本人も、救護にあたったペトラも、周囲に居合わせたエルドもグンタもオルオも。居合わせた皆がすんとした佇まいをしていて、何もかも変わりない。まるですべてまぼろしみたいだ。
    (気のせい、か––––?…いや、)
     エレンはぶんぶんと首を振った。そんなわけない。何も起こってないなんて。あれがまぼろしだなんて、
     そんなわけない。その証拠がさっきのよく喋る[#「よく喋る」に傍点]彼だ。
     エレンは、この古城に来てしばらく経つ。最近、上官についてやっと分かってきたことがある。
     あの人がよく喋る時。それは決まって、––––何か、大事なことを、どうしても誤魔化したい時。
     
     *
     医務室は、消毒液のツンとした匂いがする。草木で擦り剥いた肩に器用な手つきで包帯を巻かれながら、エレンは、実家の地下室をぼんやり思い出した。あそこも同じ匂いがした。ガキの頃に喧嘩するたび両親に手当てされて、そのたび同じ匂いを嗅いだ。
    「ワイヤーが木に引っかかったのよ、それで空中でバランスを崩して、地面に叩きつけられそうになったところを、兵長に助けられて、間一髪だったね」
     そんなふうに状況を振り返るペトラのつむじを見下ろして、エレンは「えっと……ハイ」と懐かしい匂いを鼻腔に感じながら頷く。
    「もうちょっと兵長が遅かったら、地面に直接落っこっちゃってたかも。私達がもっとサポートに付ける位置にいるべきだったわ。ごめんね、エレン」
    「いえっ…!それはっ!単なる自分の凡ミスなので…先輩方に余計な迷惑をかけて…ほんとに、情けないっていうか…申し訳ないです」
    「そんなふうに言わないでっ!失敗も訓練のひとつ、必要な経験だよ」
     さ、できた。ペトラは包帯を巻き終わったエレンの右肩をポンと叩いて、立ち上がった。まだぼうっとしているエレンに向けて、心配そうに眉を下げて言った。
    「まだ調子悪そうだね…兵長が心配してたとおり」
    「……兵長が?」
    「うん。言い方こそぶっきらぼうだったけどあれは相当エレンのこと心配してたと思うよ。…やだ、そんな顔しないでよ。エレンもわかってたでしょ?」
    (あのリヴァイ兵長が、オレを。…心配。)
     ぽうっと自分の顔が照れ臭さに染まっていく気配がして、ペトラにそれを悟られないようにエレンはそっと俯いた。それはペトラの目には、こくん、と頷いたように見えたらしい。「そうでしょうっ」とペトラは嬉々として言った。
    「エレンもここに来てしばらく経つものね。リヴァイ兵長のあの独特の優しさに、気づいてきた頃じゃない?」
    「……ハイ。」それはエレンも感じている。
     この古城来てから、あの人の見えにくい優しさをじんわりと感じていく日々だ。最初は同じ空気を吸っているというだけで身体がカチコチに緊張したのが、毎日顔を合わせて、隣にいることが少しずつ身体に馴染んでいく。同時に、口汚い言葉に隠された、不器用な優しさを感じ取れることも多くなった。
     さっきだって、脳みそまで鈍ったか?なんて、普通に聞くとちょっとひどい言葉だ。でも、そのくせ抱きかかえてくる腕にはしっかり力がこもっていたし、身体を離す瞬間には意外と大きい手のひらがエレンの背中を労るように自然な仕草でそっと撫でたりしたの…そういうボディータッチが案外日常的にあって、エレンはそのたび何とも言えない感情に襲われる。畏怖、と表現するのがしっくりくるかもしれない、とエレンは思っている。なんてったって彼は人類最強のリヴァイ兵長で、昔からの憧れの人だ。触れられると、とにかくエレンは心臓が跳ねる。
     とくん、と身体の奥がいつも熱くなる。
     でも、さっきの出来事はそれだけじゃない。とてもそれだけじゃ説明できないし、収まりがつかない。
    「それだけ、ですか?」
    「え?」
    「あの時起こった事って。それだけ、ですか?」
    「…どういう意味?」
    「オレの身体を兵長が抱えて、そのとき何か…他に変わったことは……」
    「いいえ?私達のところからは何も見えなかったけど……なにかあったの?」
     こてん、と首を傾げたペトラが次の瞬間に「まさかっ!?」と叫んで目の前で立ち上がったから、エレンは危うく椅子から転げ落ちそうになった。
    「まさか、兵長に怪我させたとか!?」
    「ああいえ!!そういうわけではないです!!…なんでもありません」
     こうも徹底的に周囲の反応が普段通りだと、まるで本当に、何もなかったみたいだ。気のせい…か?自分の唇にゆびで触れて、その名残をたしかめる。包帯の下がずきりと痛んだ。
    「具合はどうだ、エレン」
    「あっ…、」
    「兵長」カタンと席を離れたペトラが、エレン本人に代わって状況を報告する。「傷は深くありません、巨人の能力もあって回復は早そうです。ただ、少し痛みがあるようで…」
    「わかった。今日の訓練はエレン抜きで掃除に変更だ。ペトラ、お前も加わってこい。分担はエルドに聞け」「了解しました!」トンッと気持ちの良い敬礼でペトラは去っていく。リヴァイとふたりきりになって、エレンは、なんとなく自分の嗅覚が敏感になったような気がした。なつかしい消毒液の匂いに、花蜜を帯びたような甘い石鹸の香りが混じる。さっき抱きかかえられた時に感じたのと同じ香り。
    「気分はどうだ」
     コツ、と近づいてくる足音に、甘い香りが濃くなっていく。
    「あ…、だいじょうぶです。ふらつきも治って…」
    「そうか。ならよかったが。すこし傷を見せろ」
    「…? 包帯を巻いてもらったばかりですが」
    「必要なら俺が巻き直してやる。いいから見せろ」
     くい、とエレンのシャツをはだけて、肩まわりの包帯を弛めて解く。浅く擦りむいたような傷痕に、リヴァイはぴくりと眉をすこしだけ動かした。
    「なあエレン。お前、ここに来てしばらく経つだろう。最初よりかは、巨人の力の使い方も幾分上達している」
    「……ハイ」
     今度は、エレンの瞳を真正面から覗き込む。青い三白眼が、戦闘の時とはちがう、どこか甘い光を帯びて微かに揺れている。
    「これしきの傷、ほんとうはすぐ治せるだろ」
    「……治したくなくて」
     甘い光がエレンを包む。ああ、見透かされている。と諦めると同時に、エレンはほっとした。やっぱりさっきの出来事は、たしかにあった[#「たしかにあった」に傍点]のだ。そう確信できたとき、シュウっと柔い蒸気が右肩を覆って、つるんとした肩が包帯の隙間から顔を出した。傷ひとつない。
     傷を治さなかったのは、わざとだ。その出来事を、エレンは自分の身体に残しておきたかった。
    「まどろっこしい真似をしてペトラに世話をかけるな。確かめたいことがあるなら、言葉にして聞いてこい」
     ゴクン、とエレン喉が鳴る。リヴァイの眼差しが、いつものそれよりもとんでもなく優しい。こんな、こんなことって、
    「えっと…あの時……兵長は、わざとだったんじやないかって」
     こんなことがあるのか。あのリヴァイ兵長が、
    「オレを助けようとして覆いかぶさって、顔が近づいたところまでは偶然だと思います。でも…そのあと、」
     オレにキスをするなんて。
    「……唇がぶつかりそうになった瞬間、兵長なら、避けようと思えば避けられたんじゃないかな…って…」
     カタン、と席を立ってエレンが一歩踏み出せば、リヴァイはそこに佇んだまま、エレンをじっと見つめ返してくる。互いの身体が触れあうくらいの近さで、うなじから、彼の匂いがする。隠しきれない思いを滲ませた瞳と、真正面から目があう。
    「一体……なんで…オレにキスなんかしたんですか?訓練中に、兵長ともあろう人が…何考えて、」
    「お前の目はでけぇな……と」
     リヴァイは気まずそうに、すこしだけ目を逸らす。自分の目の前のエレンと、背後の医務室の壁とを交互に見て、負け惜しみのようにちいさく舌打ちをこぼす。
    「お前こそ、今、何を考えてやがる。てめえの監視役の上官を壁に押し付けて」
    「オレはただ、確かめたいだけです」
     エレンは顔を近づけていく。すこし開いたくちびるに、互いの息づかいを感じる。ふわり、と甘い香りがした。

     避けられなかったのか、避けなかった、のか。
     答えは、もうすぐ。
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