one afternoon「おやぁ?こんな屋上で奇遇だねぇ。カルエゴちゃんもしかしてサボリ?」
背後から降ってきた声に、ナベリウス・カルエゴは束の間の休息が破られたことを悟った。形の良い眉をきゅっと寄せて声の方向に目をやれば、案の定、校内で最も会いたくない人物がニヤついた顔でそこに立っていた。
着古した皺だらけの教師服に無精髭は伸びっぱなし、手入れしていない髪はあちこち寝癖がついたまま目元を覆い隠すまでに伸び切っていて、およそ緊張感の欠片も感じられない。古くから魔界の番人の役目を担ってきた名門ナベリウス家の血がこの男にも流れていることがカルエゴには未だに信じ難かった。
「今日は午後から休講です。叔父上こそ勤務中に屋上で一服とはいいご身分ですね。確か喫煙所以外は禁煙のはずですが」
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