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    su133115zu

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    su133115zu

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    旧ヘッダー

    食事 手元の弟とのトークルームに落としていた視線をほらよ俺に感謝しろ。とでも言いたげなドヤ顔とテカテカのパスタに放り投げる。オリーブオイルが絡んでキラキラ光るパスタと、散らされた輪切りの唐辛子。焦げたにんにくのなんとも食欲をそそる匂いが鼻腔を擽る。ムカつくほど完璧なペペロンチーノだ。

    革張りのソファにどっかりと腰を下ろし、大仰に脚を組んだ冗談みたいに目付きの悪い男が麺の太さが乳化が鷹の爪が云々とペラペラペラペラ囀っている。聞いてもいないのに。弟にLINEを返す片手間、適当なところで適当に頷いてふうん、と適当に相槌を打ってやった。おいまだ話終わってねえぞ。なんて声を無視してフォークを手に取る。
    セオリー通りにクルクル巻こうとしてもオリーブオイルで滑って上手くいかず、痺れを切らしてそのままズルズルと啜った。

    「きったねえな!ラーメンじゃねえんだから啜るなよ!油が飛ぶだろうが!」
    「いいじゃん。お前ん家だろ。」
    「俺ん家だからだよ!どうだ、美味いだろ?」
    「普通に美味いのが普通に腹立つ。」
    「素直じゃねぇなあ大門。」

    調子に乗る男を黙殺してパスタを食べ進める。咀嚼。嚥下。喉を通る。腹に入る。消化。吸収。小麦粉の炭水化物はエネルギー源に。にんにくの鉄分は血液に。人間の細胞というのは、半年前に食べたもので構成されているのだといういつだかに弟が披露した豆知識が何故か唐突に思い起こされた。
    今日という日の大門は何で構成されているのだろうか。弟と、両親の思い出と、恩人への感謝と。その中に目の前の男から受け取ったものはどれくらいあるだろう。もう随分の付き合いになる。昔の大門が今の光景を見たら卒倒しそうだ。いつかこのパスタが大門の血肉となるように、男の言葉も大門を構成する一部になるのだろう。無責任に調子のいいことを次々と投げかけ、半年後には我が物顔で大門の内側に居座るのだ。じわじわと侵食されている気分になって、胃の上のほうがずっしりと重だるくなった。
    次の休みは弟とパスタ食いに行くか。這い寄る予感に気づかないふりをして、弟へのLINEを打ち込んだ。
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    su133115zu

    DOODLEドブ兄 Twitterにあげたやつと一言一句同じ
    バレンタイン 仕事帰り、醤油が切れそうから買ってきてという同居人からの要望に重いもんはクルマある時にしろって言ってんだろうがと愚痴りながらも渋々了承し、スーパーに寄った大門の両眼は赤地にデカデカと黄色く印字された大安売りの文字に釘付けになっていた。赤い垂れ幕のかかった大きなワゴンにはこれでもかと様々なチョコレートが雑に積まれて山になっている。本日は二月十七日、茶色く甘ったるい洋菓子の世間的な賞味期限が切れてもう三日は経つ。まだこんなに残ってるのはおかしいだろ、普通はイベント当日までに捌けるように発注するんだよ、担当者が桁を間違えでもしたのだろうか。どれもこれも商品のバーコードの上に半額シールがこれまた雑に貼り付けてある。俗に言う投げ売りだ。年間を通してスーパーで売られているものと比べて少々高級そうなチョコレートが三桁代で買える、大門も甘党ではないにしろイベントにかこつけて美味いものが安く食えると言うなら大いに結構だと思う。チョコレートも酒のつまみになると聞くし。こんなチャンスは一年のうちで今の時期しかありえない。ワゴンの上の方、他の重みで潰されていなさそうなものを二つ慎重に選んでカゴに投げ入れ、目当ての醤油の方へと向かう。
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    su133115zu

    DOODLEいつかの12月26日の癒着
    クリスマスではない日「おい吸うなって言ってんだろ。」
    「おかしいだろ俺ん家だぞ、しかも今更。なんでそんなカリカリしてんの?」
    「昨日イルミネーションだかなんだか知らねえけど道が死ぬ程混んでたんだよ。揃いも揃って公道タラタラ歩きやがって。なんだってんだ、ただの平日だろうが。あーあ、早くクリスマスはしゃぐカップル全員有罪になる法案可決されねえかな。」
    「お前それ絶対取り消すなよ。いつか彼女とクリスマス過ごした次の日自首しろよ。」

    悪事の打ち合わせで訪れた馴染みのヤクザの住処、ソファの隣でジッポをカチャカチャいわせて深く白い息をついた家主に苛立たしさを隠さずに吐き捨てる。
    別に大門だって喫煙者であるし突然心を入れ替えて嫌煙家になったわけではない。本日日勤の大門はロッカールームで夜勤帰りの弟と鉢合わせ、弟から嗅ぎなれた苦くべたべたしたタールの臭いがすることに気がついたのだ。まさか自分に染み付いたものが知らぬ間にうつってしまったのだろうか。いや一緒に住んでいるわけでもあるまいしそんなはずはない。しかし万が一というものもある。恐る恐る問いかけてみると、なんのことはない。今さっきまでの夜勤シフトで共に過ごした同僚が警察官の癖にとんでもないヘビースモーカーで、その臭いだろうとのことであった。
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