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    su133115zu

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    su133115zu

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    いつかの12月26日の癒着

    クリスマスではない日「おい吸うなって言ってんだろ。」
    「おかしいだろ俺ん家だぞ、しかも今更。なんでそんなカリカリしてんの?」
    「昨日イルミネーションだかなんだか知らねえけど道が死ぬ程混んでたんだよ。揃いも揃って公道タラタラ歩きやがって。なんだってんだ、ただの平日だろうが。あーあ、早くクリスマスはしゃぐカップル全員有罪になる法案可決されねえかな。」
    「お前それ絶対取り消すなよ。いつか彼女とクリスマス過ごした次の日自首しろよ。」

    悪事の打ち合わせで訪れた馴染みのヤクザの住処、ソファの隣でジッポをカチャカチャいわせて深く白い息をついた家主に苛立たしさを隠さずに吐き捨てる。
    別に大門だって喫煙者であるし突然心を入れ替えて嫌煙家になったわけではない。本日日勤の大門はロッカールームで夜勤帰りの弟と鉢合わせ、弟から嗅ぎなれた苦くべたべたしたタールの臭いがすることに気がついたのだ。まさか自分に染み付いたものが知らぬ間にうつってしまったのだろうか。いや一緒に住んでいるわけでもあるまいしそんなはずはない。しかし万が一というものもある。恐る恐る問いかけてみると、なんのことはない。今さっきまでの夜勤シフトで共に過ごした同僚が警察官の癖にとんでもないヘビースモーカーで、その臭いだろうとのことであった。
    たばこって想像の10倍すぐ臭いうつるよな、兄ちゃんも経験あるよ。あれ本当にウゼェんだよな。空気を介して他人のテリトリーにズカズカ土足で踏み込んでくるんだ。パーソナルスペースもなにもあったもんじゃない。喫煙者ってやつはどこまでも自分勝手な連中だよ、それが自分に認められた当然の権利みたいな顔をして非喫煙者の隣で吸い始めるんだから。それに臭いなんて染み付いちまえばおしまいだ。形がないもんだから払って落とせもしない。立つ鳥跡を濁さずが出来ない、行儀の悪い連中なんだぜ。お前もそう思うだろう弟。
    既に喫煙者である自分のことは高く高く棚に上げて一番身近な自己中の塊みたいな喫煙者のことを頭に描きながらそんなことを懇々と言い聞かせたのだ。本当はすっかり白い煙には慣れきってしまって顔面に吹きかけられさえしなければあとはところ構わずたばこをふかして肺がんでくたばろうがどうとでも好きにしろという具合であるのだが。大門だって始めのほうは近寄るなクセェから!としきりに手を払ってたばこ臭さと胡散臭い男の両方を追い払おうとしていたのだ。それが次第に気にならなくなったのは自分にも同じ臭いが染み付いてしまったからであろうか。
    慣れたと言うのならこのクズ男のクズな行いの数々もだ。昨日は聖なる夜、キリストの誕生日だか命日だかわからないがそういう日であったはずだ。クリスマスプレゼントとの縁が切れてもう軽く10年は経つ大門にとっては正真正銘ただ1年365日あるうちのたった1日であった。彼女がいる年にはそれなりに凝ったプランのデートなんかをしたものであるが、それにしたって行く店の手配に喜ぶプレゼントの吟味、その支払いは全てこちら持ちで見返りは特になしという慈善事業の強要のようなゴミイベントに辟易していたので、クリスマスは全く待ち遠しいものでも特別な1日でもなかった。1年のうちこの時期だけただの街路樹や鉄柵をピカピカ無意味に光らせて集客しようという謎の商戦にも飽き飽きしていたのだ。いつかの彼女が蛾のようにしきりに光る木々を見に行きたがるものだからわざわさ人混みの中歩いて連れていってやった。そうしたらどうだ、星みたいで綺麗などと甲高い声でほざくではないか。お前が今馬鹿みたいに口を開けて見つめている光こそ東京の空から星を奪っている犯人だとどうしてわからない?色とりどりに輝く光はただ並び立つ女の愚かさを煌々と照らしだしただけであった。
    だからもう何年も前の12月26日、なんの用があったのかはもう忘れたが男の住まう部屋へと足を踏み入れた大門は玄関を入ってすぐの廊下に無造作にいくつも転がされたハイブランドの箱に躓きかけて、なんなんだこれは、この人道を外れたヤクザが真っ当に季節のイベントをエンジョイするとは何事かと思ったのだ。
    こんなとこに置いとくなよ邪魔くせえな。と軽くつま先で小突くと、おい傷つけんなよ売り物なんだから。そう奥から苦情が飛んできた。男は出迎えもせずに暖かいソファで寛いでいるらしい。随分といいご身分ではないか。こっちはおいそれと外に出られないお前の都合で寒い中ここまで来てやってんだぞ。

    「売り物だぁ?いつからパチモンのせどりなんて効率悪いシノギ始めたんだよ。」
    「パチモンじゃねえよ。全部正真正銘のホンモノ。」
    「なに、これ全部クリスマスの貢ぎ物?」
    「そんなとこ。」
    「ふうん、すげー健全にカップルイベント楽しんじゃってるじゃん。こんなに何貰ったんだよ。全身ヴィトンで固めるつもりか?ITバブルマンじゃん。」
    「いや全部財布。」
    「は?」
    「6人くらいに全く同じ財布強請るじゃん。1個だけ使って後は売るんだよ。そうすりゃちゃんとプレゼントを使ってくれるいい彼氏になれるし金も入る。いい商売だろ?」
    「せどりで合ってんじゃん。」
    「そこは否定してねえだろ。」
    「ほんとキモいことするよねお前。」

    開いた口が塞がらないとはこのことか。刑事罰も課せられない地味な悪事働いてんじゃねえよ。司法で罪に問われない分余計にタチが悪いしダサい。外面は何とかなるかもしれんが人間としての徳が地に落ちる行為だからな。お前の地獄行きがより確かなものになるだけだそ。こんなクズにひっかかったせいで貴重な時間と金を無駄にしてしまって可哀想に。きっと大層な美人揃いなのだろう。
    この男はハードボイルドを気取っている癖に個人情報の売買だとかネットオークション詐欺だとか随分ちゃちな、本当にちっぽけな犯罪を積み重ねて地道に金を集めているのだ。それで義理人情がうんたらとそれっぽいことを語り出すのだから笑ってしまう。いつか舎弟ができた日には一から十までお前の流儀とやらを教えてやれよ。今やってるこすいシノギを全部伝授してやって、それでもでかい顔で兄貴風を吹かしていられるか見ものだな。

    当時は本気でドン引きしていた。この男のセコい犯罪ひとつひとつを発見する度に一々新鮮な気持ちで驚き、ドン引き、絶句していた時期のことをリビングの端の方に積まれた10に満たないくらいのNIKE×Off-Whiteのスニーカーの箱を視界の端に捉えて思い出した。今回もまたすごいものを貢がせている、定価こそ2万弱だがコレクターがこぞって買い集めるのでプレミアがつくのだ。運が良ければ10万を超すだろう。ざっと数えて箱は8つ、ひとつはコイツが身につけるとしても70万だ。大門の月収より高い額を1日で稼ぐ手腕に羨むでも妬むでもなくただ呆れてしまった。
    昔より効率いいせどりしてんじゃねえよ、悪事で成長を見せるな。努力の方向がまるで間違っている。その熱意をもっと世のため人のために向けろよ。

    「今年もぼろ儲けじゃん。俺にはポールスミスの財布買って。」
    「なんでだよ仕事の度に金は渡してるだろうが。」
    「は?たまにはいいだろ、日頃の感謝を示せよ。」
    「そういうのは政界の大物が受け取るもんなんだよ。ただの巡査が調子乗るな。」
    「国家権力をコスパよく使おうとしてんじゃねえよみみっちいな。」
    「わぁーったよ。ったく…ほんとに金のかかる男だよお前は。」
    「当たり前だろ。お前俺の人生握ってる自覚ある?」
    「あーあーはいはい。責任はとるよ。」
    「言ったからな。次から俺の生活費言い値でお前が全部賄え。」
    「なんでだよ!」
    「適当に口から出まかせ言うからそうなるんだよ。出来ない約束してその場を凌ごうとすんな。」
    「お前は命運を握られてる相手に対する態度ではないだろ。もっと下手にでてこい。」

    何年か前哀れな綺麗どころ達に抱いた憐憫はどこへやら。今では献上品を売り払った金で自分へ金品を寄越せと強請る言葉を吐くまでになってしまった。男のモラルもへったくれもない行為を咎めることもせず、まるで共犯者のようなセリフを吐くように。なんでもないことのように。
    これは決してこのゲス野郎に絆されているわけではない。慣れただけだし諦めただけだ。長い間不本意ながらこのヤクザの傍で数々のしょぼい犯罪を見てきた結果、慣れて一々驚かなくなっただけ。そして何を言おうと右から左の男に使う時間と体力と酸素が無駄だと、そう判断しただけの話。何度言っても素知らぬ顔で吹きかけられた白い煙と同じように。
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    su133115zu

    DOODLEドブ兄 Twitterにあげたやつと一言一句同じ
    バレンタイン 仕事帰り、醤油が切れそうから買ってきてという同居人からの要望に重いもんはクルマある時にしろって言ってんだろうがと愚痴りながらも渋々了承し、スーパーに寄った大門の両眼は赤地にデカデカと黄色く印字された大安売りの文字に釘付けになっていた。赤い垂れ幕のかかった大きなワゴンにはこれでもかと様々なチョコレートが雑に積まれて山になっている。本日は二月十七日、茶色く甘ったるい洋菓子の世間的な賞味期限が切れてもう三日は経つ。まだこんなに残ってるのはおかしいだろ、普通はイベント当日までに捌けるように発注するんだよ、担当者が桁を間違えでもしたのだろうか。どれもこれも商品のバーコードの上に半額シールがこれまた雑に貼り付けてある。俗に言う投げ売りだ。年間を通してスーパーで売られているものと比べて少々高級そうなチョコレートが三桁代で買える、大門も甘党ではないにしろイベントにかこつけて美味いものが安く食えると言うなら大いに結構だと思う。チョコレートも酒のつまみになると聞くし。こんなチャンスは一年のうちで今の時期しかありえない。ワゴンの上の方、他の重みで潰されていなさそうなものを二つ慎重に選んでカゴに投げ入れ、目当ての醤油の方へと向かう。
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    su133115zu

    DOODLEいつかの12月26日の癒着
    クリスマスではない日「おい吸うなって言ってんだろ。」
    「おかしいだろ俺ん家だぞ、しかも今更。なんでそんなカリカリしてんの?」
    「昨日イルミネーションだかなんだか知らねえけど道が死ぬ程混んでたんだよ。揃いも揃って公道タラタラ歩きやがって。なんだってんだ、ただの平日だろうが。あーあ、早くクリスマスはしゃぐカップル全員有罪になる法案可決されねえかな。」
    「お前それ絶対取り消すなよ。いつか彼女とクリスマス過ごした次の日自首しろよ。」

    悪事の打ち合わせで訪れた馴染みのヤクザの住処、ソファの隣でジッポをカチャカチャいわせて深く白い息をついた家主に苛立たしさを隠さずに吐き捨てる。
    別に大門だって喫煙者であるし突然心を入れ替えて嫌煙家になったわけではない。本日日勤の大門はロッカールームで夜勤帰りの弟と鉢合わせ、弟から嗅ぎなれた苦くべたべたしたタールの臭いがすることに気がついたのだ。まさか自分に染み付いたものが知らぬ間にうつってしまったのだろうか。いや一緒に住んでいるわけでもあるまいしそんなはずはない。しかし万が一というものもある。恐る恐る問いかけてみると、なんのことはない。今さっきまでの夜勤シフトで共に過ごした同僚が警察官の癖にとんでもないヘビースモーカーで、その臭いだろうとのことであった。
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