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    amampanda

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    amampanda

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    書きかけで上げていた羽根をもぐ話の加筆修正完成版
    大筋も、結末も変わりませんがセリフ等は変えてます
    血の表現、少しグロ

    大丈夫な方だけどうぞ

    お前には必要ない テスカトリポカは苛立っていた。
     メヒコシティはいつも通り、ディノスを捕まえて心臓を抜き取り、神に捧げる儀式の真っ最中だ。
     いつもなら上機嫌にそれを見ているのに、眉間に深く刻まれた皺ととんとんと椅子の手置きをたたく指先は不機嫌極まりない。
     それもそのはず、先日自身のマスターでありこの異聞帯担当のクリプターであるデイビット・ゼム・ヴォイドに不可思議なことが起こったからだ。

     遡ること六日あまり。
     日々忙しなく、このミクトランでフィールドワークに勤しんでいるデイビットが、テスカトリポカを訪ねてきた。

     「久しぶりだな、マスター。」
     「…………これを、見て欲しい。」

     相変わらずの無表情だったが、突然衣服を脱ぎ始めたデイビットが珍しく焦っているのが分かり、黙ってその様子を見ていた。
     ぱさ、と落とされた衣服と晒された上半身、その背中には。

     「……羽根、か?」

     小さいながらも純白の白い翼が、デイビットに文字通り生えていた。

     「これが有害か無害か、お前ならすぐに分かるだろう?」
     「……害、ねぇ。」

     人類に向けられた純粋な悪意。
     身を書き換えられ、記憶の制限までかけ端末としてる役割を勝手に押し付けたものが、気まぐれに構築しただろう悪趣味な翼がデイビットに無害な訳はない。

     「安心しろ、計画に支障はない。まぁ、趣味は悪いがな。」

     だが、目の前の男がわずかに不安そうにしていたのは、自分の身の安全ではないことは短い付き合いの中で、十分に理解していた。

     「…………分かった、助かる。」

     そういいながら淡々と服を着直していくデイビットに、テスカトリポカは珍しく腹の底に黒い何かが渦を巻いた気がして、足早に踵を返し、部屋から出ていこうとする男に投げかける。

     「──とるか?」
     「必要ない、いや、違うな。意味が無い。」

     背を向けたデイビットの声にどこか諦めを感じて、戦神は盛大に眉間に皺を寄せた。

     これが、冒頭でテスカトリポカが不機嫌だった理由。





     一日経つごとに、翼は大きくなっていく。
     早い段階で気づいたのは、記憶するに値する出来事だと注視していたからだ。気に入りのコートは仕方ないので、自分で手直しした。
     そして、七日目の今日はデイビットの背丈ほどに成長していた。
     触れると温かい上に感覚はある。だが、自分の意思で自由に動かせるわけでは無い、ただそこに存在しているだけの後付けのパーツ。
     身体の平衡感覚がこの翼のせいで、おかしくなった。それだけがデイビットをほんのわずかに不快にさせる。
     それはさておき、今日は第七層のティカル遺跡へと向かおうと、幾分か重い足を踏み出した。
     いや、正確には踏み出そうとして、地面に崩れ落ちた。

     「よーぉ、兄弟。」

     神の権能を使った拘束であると気づいた時には動かせるのは眼球と口だけで、見上げれば、長い白金の髪が風に吹かれていた。

     「テスカ、トリポカ?」

     デイビットは今の状況を予測出来ていなかった。
     いや、思い当たる節は十分にあったのかも知れない。この数日の記憶には必要ないと、整理していただけで、つまり、らしくもなくこの神は自分が嫌がることはしないはずと油断していたのだ。

     「意味はない、無駄なことはしない方がお互い楽だと思わないか?」

     困惑しつつも、冷静に問い掛ければ、テスカトリポカは答える。神らしい迷いのない声だった。

     「無駄かどうかはオレが決める、たとえお前であっても、オレに指図することは出来ない。」

     言葉とともに、あからさまに背中に刺さる視線にやはりそうか、とデイビットは小さく息を吐いた。

     「…………手短に頼む。」
     「そんなもの、お前には必要ないだろ。」

     背中にある羽根を乱暴に掴んだテスカトリポカの声は想像以上に怒気に満ちていた。
     ぶち、ぶち、と身体の筋が切れる音が頭に響く。
     激痛が全身を駆け巡り、唇が震える。
     瞳に涙が薄い膜を張っていく。

     「──っ…っぁ……く!!!」

     背中から、翼をもぎ取られる痛みは、異物だと認識していた物は間違いなくデイビットの一部だと再認識させられた。
     皮膚が引っ張られて、ひきつり、ちぎれていく。夥しい量の血がぬるりと伝っていく感触もはっきりと感じ取れる。
     骨が折れ、筋が切れ、一際大きな音が聞こえたところで、意識が薄れていった。






     筋が切れる。骨が折れる。苦痛の声が漏れる。
     それでも、神は迷わなかった。

     「…ぐっ!!っ!テスカ、──」

     デイビットの背中から鮮血が流れ出していることに気づきながら、その翼を奪うことを諦めることは無い。もう決めたことだからだ。

     ぶち、と嫌な音を立てて、片羽根はその背中から消え失せる。
     忌々しくもデイビットの一部だったその翼を放り投げ、残った隻翼も同じように今度は時間をかけて丁寧に捥いでいく。
     噛み殺した悲鳴はもう聞こえない。

     「はは、ざまーみろ。」

     余りの痛みに気を失った血まみれの男を抱きしめて、戦神は空に向かって中指を立てる。

     「お前らなんかに、こいつは渡せない。」
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