Sweet Collapse Time 【レオトリ】Sweet Collapse Time
君がそこに居るだけで僕の視線は君以外を排除してしまう。
無意識にフィールドで君の姿を探して、見つけた時の高揚感はきっと、恋と呼ぶにふさわしいのかも知れない。ただ只管、君へのアピールに投げ付けるナイフを煩わしそうに避け乍ら、ちらりと視線が僕に向けられる度心臓が煩い。追いかける呼吸なのか、興奮から漏れ出る吐息なのか分からない位僕の息が上がる。君ばかりを追いかけているから、順調に発電機は直っていく。
《これじゃ、エンティティーに僕殺されちゃうかな?》
僕は彼の背中を追いながら、過った不吉な予感に僅かに苛まれるも、それ以上に君の姿を追いかけたい衝動の方が強かった。
君が逃げ込んだ、小屋へと入るなら君は既に小屋の外のパレットの前で、僕の様子を伺った。
本当なら、こんな見え見えの誘導に応える事は無いけれど僕は、敢えて彼がしようとしていることに応える為、彼へと距離を詰めたなら案の定パレットは僕の額を殴打した。
『いたた……やっぱりパレットぶつけられる痛みは慣れないや』
額を抑えふら付く僕の耳に重い鐘の音が響くなら、パレットの向こうで呆れた顔で溜息を吐く彼が言葉を発した。
『わざとぶつかってきたろ?トリックスター』
『あ、バレた??』
『……見え見えだ』
そう言って、何故か彼はパレットを乗り越え僕の前に立った。
『逃げないの??』
『もうゲートは開かれた。
アンタから逃げる理由も無いだろ??
それに、あれ程熱烈に俺を見て追いかけて来る
アンタの視線が気になってたから』
『レオン、君に会えて嬉しかったんだ……』
『……はいはい』
躊躇いがちに彼に触れようと伸ばした手を力強く握られ、僕はそのままレオンの腕の中へと引き寄せられたなら、彼の腕の中ゆっくりと顔を上げ、求める様に顔を寄せ、それに応える様に唇を重ね僕を抱く腕が強まった。
『ねぇレオン……僕の名前、呼んで』
『……ジウン』
僕は彼が名を呼んだことをきっかけに、
握っていたバットを床へと落とし、彼の頭を抱くように両手で強く抱きしめて濃厚な口づけに酔った。
あぁ、低く煩わしい鐘の音が無情に響く。
何度も何度も悔いのない様に彼の唇を貪るも
その度に焦燥感が溢れて来る。
触れているのに渇いていくなんて……。
『レオン……もっと』
『ジウン……んッ』
『ふ、ッ、ぅ……ん』
焦燥感は増し、もっと彼の全てを感じて居たいと
言う欲望にどんどん満たされて行く。
もっと、もっと君を感じたいよ……レオン。
僕は欲望に塗れたまま押し入って来る彼の舌を
夢中で吸い舌を絡め濃厚に唾液を混ぜ合った。
ゴゴー……ン
何度目かの低い鐘の音に僕は些か焦り
唇を離し彼の頬を撫でた。
このままだと、彼はエンティティーの餌食だ。
嫌だな……それは。
『レオン……もう時間がない。
君の身体があの忌々しい黒足に貫かれる前に……選んで。僕が君を奪うか……、君がゲートに走るか……お願い、早く……』
『……まぁ、今からゲートに向かうのは難しいかも知れないな』
『あはは……レオン、君ってのは……残酷なのか優しいのか分かんないね』
『それはお互い様だろうジウン……ただ、後もう少しだけでいい。もう少しだけ……君を味わわせてくれないか』
意地悪な笑顔で、君は再度僕に口づけた。
そのまま僕は彼に口付けられながら、彼の頭に回していた片腕を降ろし、隠し持つナイフの柄を握り込み、彼の温もりから緩やかに離れた。
疲れ切った様な笑顔を互いに浮かべ、僕はナイフの切っ先を彼へと向けた。
今度は違う形で君に会いたいな……レオン。
空を裂くような幾つもの風切り音を響かせ
倒れ行く君の姿を静かに見つめた。