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    kaoruhana03

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    kaoruhana03

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    ネームレスサバイバー(貴方)がトリックスターに初めてメメントされる夢風小説

    初めてのメメント・モリ【トリスタ×アンノウンサバイバー】私は究極の選択を迫られていた。

    この世界では、死なんてまるで息をするぐらい簡単に訪れる。
    それは、地獄の様で、生存者と呼ばれる私達は罪人の様だ。
    処刑人に等しいキラーと呼ばれる殺人鬼達に良い様に命を弄ばれ蜘蛛足の禍々しいあの女神に何度も命を蝕まれる。
    そして今まさに、命を奪わんと私ともう一人倒れ込む傍にその人は立って居た。

    『これ、見える??』

    そう呟かれ満身創痍の身体に鞭打ち震えながら
    私は、どうにか上半身のみを擡げて、その人を見つめた。

    奇麗に染め上げられた青い髪は、幼さを引き立たせ
    その姿はまるで、穢れを知らない青年の様な見た目をしていた。
    ふわふわの上着の下はただただ彫刻の様に美しい裸体が見えた。
    ただ、その身体には何度も人を殺めたであろう血が滴り妖艶ささえ、兼ね備えた美術品の様だった。
    それが彼、トリックスターこと、ハク・ジウンだ。
    その彼の手には、スマホが握られ画面には黄色いドクロのマークが刻まれていた。

    『糸杉の……メメント・モリ』

    『そう、よく言えました……だから君に選択させてあげるよ。君とこの子どちらか一人は逃がしてあげる。その代わりどちらかが僕のオファリングに従う……この意味わかる?』

    『私か、その子が……貴方に殺されるって事……だよね?』

    『そう、その子も君も僕のナイフの雨に、
    どんな声を聞かせてくれるのか、考えただけでゾクゾクしちゃう』

    私は少し離れて倒れ込む仲間へと這いずろうとするも、そこに割って入る様にトリックスターは立ちふさがり、私の目の前にしゃがみ込んだ

    『相談何てさせないよ……"君が"決めるんだよ……君とあの子の生か死かをね?』

    『そんなっ……』

    相談何て事を考えてしまった自分も、この世界に汚染されてしまっている。
    実に愚かしい行為だが、それ以上に残酷な一言を口にしてもその表情は、悦楽に浸り笑むトリックスターの異常性に私はゾッとした。
    少なくとも彼は元は普通の人間だった筈。

    直接彼を目にしたわけではないが、何度かテレビで見たトリックスターはとても優しげに笑い、楽しそうに歌って踊っていた、そんな彼が殺人鬼だなんて
    今でも信じられないが、この表情が殺人鬼だと私に自覚させる。
    私は唇を噛みしめ、ちらりと倒れ込む仲間に視線を送ればそれを感じ取ったのか僅かにびくんと怯えたように震えていた。

    『……』

    『決めがたいよね?生き返る前提でもさ?君がもしあの子を僕の生贄にするなら
    きっと、あの子は君に不信感と憎悪を向けて来るんだろうからね??
    何故、どうして?ってさ?悪態を吐き散らすかもね?それとも必死に君に助けを請うのかな?あぁ、それはそれで堪らないね?
    少なくとも君に対していい気分ではいられないよ……ね?
    ほら、言って御覧?君はどうするの??』

    『……ッ!?』

    正直死ぬことに慣れなんて無い。
    殺される行為を当たり前と、思う何て一生ある訳無い。

    チェーンソーで切り裂かれるのも、首を絞めて殺されるのも、激しい電撃で焼き尽くされるのも、どれも恐ろしく怖くて、その衝撃は、痛みは、口では言い表せない程に苦痛と恐怖で彩られるのだから。
    正直そんな死に方を味わいたい生存者何ていない。
    私だって……嫌だ。死にたくない……。

    『あ、……あ、あ』

    『唸ってばかりじゃ決まらないよ??どうするの?』

    彼は急くように私の背中に、羽根の様に薄いナイフを浅く突き立てた。

    『ぁ"う――……ッ!?』

    私の呻きにトリックスターは一瞬眩い色合いの瞳を大きく見開いた後にっこりと美しい笑顔を見せた。

    『決めないと君の身体がナイフの剣山になっちゃうよ?』

    『ぅ……なる』

    『ん??なぁに?』

    『私が……犠牲に、なる』

    『ふッ、ふふ、アハッハハ、ははははっっ!!!
    体裁に負けたの??それとも、あの子は君の親友か何かの??死ぬことを自ら進んで立候補何て愚かしい事良くするね??
    僕なら自ら死ぬなんて御免だよ……遠慮なくあの子を僕は差し出すのに君は自己犠牲が強いんだね??』

    『違う……違う!!私は人の心を失いたくないだけ!!貴方みたいに同じ人間を殺して、快楽を得る殺人鬼と同じ思考で片づけないで!!』

    そう吐き捨てる私の言葉に、トリックスターの笑顔が消えた。不意に私の身体は持ち上げられ、すぐそばにあった地下室がある小屋へ運び込まれ
    薄暗い階段を降りたなら、血と不気味な軋みが蠢く四つのフックが並ぶそこへ、私の身体が放り投げられたなら、べっとりと服に何の血か分からないそれが浸み込んで行った。

    『大人しくするんだよ??あの子をゲートに置いて来たら僕と君の二人だけの儀式の始まりだから……あぁ、逃げようとしても良いよ?
    それは結局、人を裏切る行為なんだから。
    君の心にあるでしょ?"約束は破っちゃダメ"そんな道徳心が……。だから、あんなに雄弁に吐いた言葉の所為で、君はここから動けない。自分を否定できないからね?』

    『……逃げないわよッ』

    『ふふ、いいよ。うん、わかった……。
    だったら早く君と二人きりになりたいから
    良い子で待ってて……』

    彼は薄暗い階段を一段足で踏みしめた後、ウィンクと共に投げキッス迄置いていった。
    私は目には見えずとも、忌々しい空を舞うハートを震える片手で地面に叩きつけた。
    その仕草にトリックスターは楽し気に笑みを浮かべ、その姿が見えなくなった。
    取り残された私は、辺りを見渡しその異常な光景を目の当たりにしては恐怖に苛まれた。

    殺されるんだ……私は今から……。

    そう、実は儀式で殺されるなんて今までなかった。
    運が良いのか要領が良かったのか……私は何度目かの儀式で常脱出を果たしていた。
    目の前で人が殺される様を見た事はある……怖くて物陰で震えただけで何もできなかった。
    でも、今は一人は救える……見捨てたくは無かった。
    確かにトリックスターが言うよにただの自己犠牲かそれとも偽善か今はもうどちらかとも
    解らない。恐怖感に身体が無意識に激しく震えた。
    私は身体を丸めアチコチ痛む身体に呻いた。

    ゴー…ン

    重く響く鐘の音が聞こえた。
    ゲートが開きコラプスが始まった。
    それと同時に私はトリックスターの手によって殺される合図でもある。

    カツン、カツン……地下の階段を踏みしめる彼の足音が響く。
    ダメだ怖い……でも、幼子の様に震えて泣きじゃくるなんて情けない姿を
    アイツに何て見せてやるものですか。私は唇を強く噛み震える身体を必死になだめた。

    カツッ

    私の目の前にトリックスターの足が見えた。
    私はゆっくり頭を上げて彼の表情を見つめた。
    彼の表情はどこか情事を思わすような色気を纏い、
    私の前に片膝をついたなら、右手が私の顎を掴んで
    強制的に顔を起こされるなら苦しさに微かに私は呻いた。

    『んッ……』

    『やっと二人きりだよ……コラプス切れで
    エンティティ何かに君が連れ去られる前に、僕に君の全部頂戴ね?』

    そう言って彼の指先がスマホ画面の糸杉のメメント・モリに触れた。
    それは一瞬画面の中で燃え尽きて認証されたなら彼は立ち上がりクルクルと器用にナイフとバットを回転させたなら無数のナイフが私の身体を貫いた。

    途切れ途切れの私の呻きが彼の耳に届く度、
    トリックスターの表情は色めき立った。
    私の意識が途絶える前に、額に突き刺さったナイフの感触を最後に私の意識が一気に遠のいた。
    あぁこれが初めてのこの世界での死なんだ……。
    ぼんやりそんな思いを意識下で感じ、もう見えない筈の視界には薄っすらと胸元に突き刺さるナイフの感触と共にハァハァと荒い息を吐いて両手を見つめる彼が見えた気がした。そのままトリックスターは私の冷たくなった身体に歩み寄り、そっとその身体を抱えるも、すぐさま私の身体は彼の腕から消え去った。

    彼は消え去る私の残骸に跪いて、名残惜しそうに
    空を手繰り寄せるしぐさと共に小さくまたねと呟いた声が響いたようだった……。

    それさえ私の妄想なのかも知れないけれど……。

                       END
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