初夜の話くぽ。
ナカに埋めた指を開いてみれば、充分と思える隙間ができた。ねとりと濡れて湿ったソコはいやらしく糸を引いて私の細い指に絡みついてくる。熱くて、ふわふわ。
「ん……もういいね?」
ここまで長かった。季節がいくつも巡るほどには。
暴れるゴリラをなだめすかすところから始まり、服の上から触れるだけで一悶着。
その下の、肌に直接触れた時に瞬発的に殺されなくなるまでに一悶着。
さらにプライベートゾーンへの進出、穴との接触、指を埋めてナカに触れるまで、狭いソコを根気よく慣らしていく過程……と、六章仕立てくらいの、結構しっかりとストーリーが練られているソシャゲ程度には時間を掛けた。
食事やお世話で甘やかすという課金もした。
しかし賢明な諸君はご存知だろうが、SSRが引けるなら課金は実質無料なのである。
「も、はい……る?」
不安と期待とを滲ませて、熱に浮かされたような湿った青が一心に見詰めてくるという絶景は、紛うことなきSSR新規スチルであった。
「いけそう……いい?」
尋ねればこくんと、いっそ幼いような仕草で合意をされて喉の奥が詰まる。
口腔内に溜まっていた唾液を思わずごくりと飲んでしまった。
さあ新章突入!
いざ!
引き抜いた指にまとわりついた潤滑ローションで汚れるのも厭わず己の衣服を寛げて、出番を待ち続けた剛直を取り出す。
輪にした指をくちくちと二三度往復させて硬度を確認すると共にローションをまとわせれば何時になく元気だ。そのやる気満々、意欲充分具合に嫌でも自覚する。
ああ、入りたい。ずっと入りたかった。
キミのナカに!
……気が昂っていたのは認めよう。
だって、だって!もうずっとずーっと、それだけを思って、下拵えをしてきたのだし!
だから、気が急いていて、そう、少し……ほんの少しだけ、乱暴だった……かも。
ぷちゅりと粘液の音をさせてその先端がロナルドくんの穴の縁に接触した時に、思ったよりも強く押し付けてしまった。
いきなりぐっといったから、先端が少しめり込んだ。途端に。
「ひっ、ま、待て!」
ずりずり!
反射的に叫んだロナルドくんの腰が逃げる。
先程まで熱い窄まりに接触していた先端が空気に晒されてヒヤリと感じた。
あ、離れてしまった……
残念ながら、その腰を引っ掴んで引き戻すだけの力は私には無い。……ので、何も考えずにずいっと膝を進めた。
また距離が埋まる。
己のものを掴み、再び押し付けようとする私にロナルドくんはややパニックを起こしてまた逃げた。
すかさず膝でにじり寄る。
逃げる。
寄る。
逃げる。
寄る。
5度目の移動で遂に壁際に追い詰められて彼は動けなくなった。結果オーライ。
「座位がいいの?」
背中をベッタリ壁に着けてこれ以上逃げられない体制のロナルドくんに、入れるならそうなるだろう。その背中はつい先程までシーツに沈んでいたので正常位での挿入を想定していたけれど。このまま入れたいならそれでもいい。もうとにかく早く入れたい。
急かすように、どうする?と聞けば目の前の綺麗な顔は一瞬くしゃりと歪んで、それを隠すように両手で覆われてしまった。
それは……
完全な拒否の、よう、だった。
あ……これは、もしかして……
や……っ、やってしまった!!!
己の失敗を悟っても後の祭り。
真っ赤な顔と潤んだ青い瞳をすっかり掌で覆い隠してしまったロナルドくんを見て、頭に昇っていた血がサーっと降りてくるような心地がする。
ああ、ダメだ、こんなつもりじゃなかった。
もっと優しく丁寧に、最高の夜にしてあげるつもりだった。
ロナルドくんを童貞ゴリラと揶揄ってやった事は数しれないが、その手垢のついていないまっさらな身体を愛していた。そして、それを初めて拓くのが私だという事に……例えようのないほどの興奮と喜びを感じていた……と言うのに。
顔を覆ってぴくりとも動かなくなってしまった彼を、絶望感とともに見詰める。
これまでゆっくり、じっくり、時間をかけて来たけれど、最後の最後で気が急いた。……私の落ち度だ。
もう、これ以上は……嫌、かな。
無理を、させるつもりは、決して、無い。
1度ぐっと頬を引き攣らせて、それから腹にも力を入れて、ようやく、掠れた声で言えた。
「ご、めん、や……めとく?」
正直に言えば、ちょっと、かなり、随分、難しいけれど……そこはまあ何とか年の功ってやつでグッと耐えれば何とかこう、が、我慢が、出来る……で、出来る……かも、しれないし。
内心そんな葛藤をしながらようよう紡いだ言葉に、返ってきたのは……
「は!?え!やだ……っ!」
反射的に出てしまったのがありありと窺えるロナルドくんの大声。
「えっ!?」
思わぬ力強い否定に驚いていたら、顔を覆っていた掌がおずおずと開いて、指の間から潤んだ青がこちらを見詰めてくる。
「や、やめたくねぇ……」
「えっ!あ、そ、そうなの?」
意外な答えに驚いて思わず確認してしまったけれど。
こくん、と頷かれて本当にホッとする。ふにゃりと力が抜けて崩れ落ちそうな身体を耐えていたら、ロナルドくんが再び口を開いた。
「けど……」
言いにくそうに続けるその顔は、まだ指の向こうだけれど、はみ出した耳が真っ赤に染っている。
「うん?」
言ってごらん?出来るだけ柔らかく響くように気を付けて促せば、ゆっくりとしゃべりだした、その内容が……
「やっ、ぱり……ちょっと怖いから」
「ぐ、う、うん……」
こ、怖かったんだ?いきなり入っちゃいそうだったもんね?私のが。そっか、こ、怖かったのか……へぇー?
その事実があまりに畏怖欲を満たしてくるから思わず仰け反ってしまいそうになった。危ない。
ここで死ぬ訳には……と思った矢先、であった。
「手ぇ、握ってて……ほし……」
そろりとその顔から離れた両手が、おずおずとこちらに差し出される。
不安そうな、でも赤く染まり少しの期待を滲ませる顔。とろりと垂れた眉に、確かな欲望を孕んだ瞳。緩く開いた唇の、赤いこと……!
「ウッ、グゥ……!」
スッナァアァァアァ〜!
「は?え?何?……は!?なんで死んだ!?」
慌てるロナルドくんの声だけ聴こえる。
いや、そりゃあ死ぬって……!
SSR狙いで一発UR来ちゃった感じ。神引きしたわ。何?そのスチル破壊力やばすぎるんだが?チートキャラか?
「キミがびっっっくりするほど可愛くて死んだんだよ!」
言わせるんじゃないよ!
戻りながら叫べばぽかんと間抜け面を晒す目の前の美丈夫に、笑ってしまった。
ふっと空気が緩んで、そして。
「じ、じゃあ、手、繋いで……続き、しよっか」
「ん……」
もう、大丈夫そうだった。
ぎゅっと指と指を絡めた両手。
ぴとりと寄せた身体は熱くて、でも緊張の解けた自然体の柔らかさだ。
きゅっと少しだけ繋いだ手の指先に力が込められて、引き寄せられる。
目と目が合えば、可愛くて綺麗な歳下の男の子が、大好き!を駄々漏れにしながら、ふんにゃりと笑って言った。
「へへ、怖くねぇ」
いや、これは、ダメだろう。
「尊死」
「ド、ドラ公ー!?」
スッッッナァーッ!
崩れた身体を涙目で掻き集めるロナルドくんに、今晩はあと何度殺されるのか気が気では無いけれど。
この手が繋がっている限り、きっと、最高の夜になるのは間違いがないのだった……
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トロフィー獲得『初夜』
新規スチル『UR:閨のロナルドくん』
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しかし、この時の私は知らなかったのだ。
これから先延々と、ログインボーナス(意味深)にUR新規スチルが来まくるバグがデバックされない事を…………
END