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    【フェルヒュー】口付けの理由エーギル領からの手紙に深刻な話でもあったのか、フェルディナントはしばらく手紙を手放さなかった。あまりにも集中したせいで体が前に傾き、長い髪の毛が視野をさえぎられ、ややもするとティーテーブルのティーカップにぶつかるところだった。彼がどこまで傾いていくか見守っていたヒューベルトが注意を与えなかったら。

    「ああ、ありがとう」

    フェルディナントはさっと頭をもたげてその手紙の次のページをめくった。お茶が飲みきる前に溢すかもしれないと思い、紅茶を飲むことも忘れなかった。
    しかし、頭を深く下げるとカーテンのように垂れる長いくせ毛は、姿勢を直しても元の位置に戻ることはなかった。ヒューベルトはフェルディナントが髪を後ろに流すのを待った。しかし、全ての集中力を手紙に注いでるフェルディナントには、頬に触れた髪の毛は大したものではなかった。
    ヒューベルトの手にも処理すべき仕事がいくつかあった。しかし、一度気になることが目に入った以上、これからもずっと気になっていくだろう。結局、ヒューベルトは手を伸ばしてフェルディナントの横髪を後ろに流した。

    「うむ?」

    当事者は最初から不便だと思わなかったが、ヒューベルトはそれを見てすっきりした。

    「ふふふ…ヒューベルト、学生時代に君の前髪がどんなに私の目に障るようにしたか知ってるか?」
    「貴殿から直接おっしゃったことも何度かありましたね」

    全く耳を傾けてなかったけど。

    「前髪を切ってくれてありがとう。その後君の顔を見るたびに良い気分になる」

    「いつもくしと手鏡を持ち歩き、端正とした貴殿が、髪を長く伸ばしたあまり、こちらの手間までかけさせるとは…別にありがたいことではないですな」

    私の仕事が増えました、という話ににフェルディナントは笑いを浮かべて手紙から目を離した。

    「でも好きだろう、私の髪を触ること。ヒューベルトが損をするとは思わないけど?」
    「...否定はしません」

    ヒューベルトは再びフェルディナントの耳元に手を伸ばして耳の下の髪まで丁寧に耳にかけた。 丸い耳輪を何度も指で撫でて、耳たぶとほおを柔らかく擦った。このまま手を引くのが惜しくて、その頬に唇を当てたヒューベルトは、フェルディナントの首筋をくすぐってから手を離した。
    するとフェルディナントはヒューベルトをつかまえて、チュっと音が出るように口付けた。ヒューベルトはそのまま止まって、自分の行動が彼にはキスを求めているように見えたのか振り返ってみた。別にフェルディナントに返しを望んでしたわけではなかった。ただ手に触れる距離に彼がいて、唇が当たるに適当な位置に彼のほおがあったから。やや一方的だったけど。しかも今までフェルディナントがずっとそのような理由で唇を寄せてきたので、ヒューベルトもそれを真似しただけだった。

    しかし、この些細な誤解を解きたいという気持ちは、満面に笑みをたたえた顔を見ればどうでも良くなるのだった。両頬を包んでくる手の暖かさに、頭の中の複雑な考えはあまりにも簡単に溶け込んでしまった。ヒューベルトはまもなく到来する喜びを期待しながら瞼を閉じた。
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