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    こちらの話の続きです
    → 「意味付け」 https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=14209130

    【フェルヒュー】意味付けと行為 ‐上‐フォドラ全域を治める統一帝国アドラステアの誕生。皇帝エーデルガルトは、長い戦争を終えた後もより大きな理想に向かって黙々と歩み出した。皇帝であり一人の個人としてのエーデルガルトの戦いはその後も続いた。ただし、長い戦の終幕を飾る「闇に蠢くもの」との戦闘は秘密裏に行われなければならなかった。

    ヒューベルトは皇帝の命を受け、戦後エーギル領に滞在していたフェルディナントを訪ねて助けを求めた。教団との戦争が終わる前、フェルディナントの求婚を拒んだことのあったヒューベルトは、エーギル領への訪問に私的な意図を込めたくなかった。しかし、ささいな誤解に端を発した摩擦は、ヒューベルト自らもそっぽを向いていたフェルディナントへの深い感情に火花を発した。フェルディナントがでヒューベルトへの変わらぬ想いを持っていたことを確認し、遂に二人は真にめぐり逢うことが出来た。


    皇帝の呼びかけに急いで帝都アンヴァルに来たフェルディナントは、臨時でベストラ邸に滞在することにした。宮城で過ごすことも可能だったが、そこには見る目が多かった。アンヴァルで過ごす間、他人に動向を詳しく明かしたくなかったフェルディナントは主人のヒューベルトさえあまり使わないべストラ邸の来客用の部屋を借りた。

    昼夜を問わず過重な業務に専念してきたヒューベルトが久しぶりに自宅に向かった理由も、やはり客を迎えるためだった。宮城にはヒューベルトが子どもの頃から使っていた部屋がある。移動する時間も節約したかった帝国の宮内卿は、ずっと宮城の個室と執務室だけを行き来していた。数ヵ月ぶりに自宅を訪れたヒューベルトを見て、ベストラ邸宅の使用人たちは戸惑った。この屋敷に客が来るなんて。それもエーギル家の人が。それでも、そのおかげで邸宅は常ならず活気づいてきた。

    客を迎える準備をしている間、ヒューベルトも自宅に留まった。顔を見ることさえ難しかったベストラ家の若い主人が、数日間家に滞在することはこれまでなかった。ヒューベルトは来客用の部屋の机と椅子を点検する際、自分の緊張している様子に気が付いた。ヒューベルトは、彼の家で客を迎えるのが初めてだった。しかもフェルディナントはただの客ではなかった。あの夜のことが思い浮かんで、ヒューベルトの顔がほてった。

    宵の口、フェルディナントは両手いっぱいに荷物を持ってベストラ邸宅に着いた。ヒューベルトを見て嬉しさのあまり名前を大きく叫んだが、荷物の重さのため走って来られなかった。そういう彼のためにヒューベルトが先に近付いた。使用人の数があまりにも少なかったため、荷物の運びにヒューベルトも一緒に動員された。持ってきた荷物をすべて部屋に運び、一息ついていたフェルディナントはあっという間に元気になり、ヒューベルトに向かってにっこり笑った。

    「素敵な部屋を用意してくれてありがとう、ヒューベルト」
    「どういたしまして。しかしこの屋敷は手入れをしなければならない所が多いです。管理に手落ちがありますのでご理解ください」
    「仕事が多いから主に宮城に泊まるだろうな。むしろ私のために気を使わせて時間を取られてないか?配慮が足りなかった、すまない」
    「そんなことは、おやめください。ここにお迎えできて嬉しい限りです」
    「ヒューベルト…」

    何か話を切り出そうとしたフェルディナントの声は、ノックの音で途絶えてしまった。夕食が用意されたという知らせだった。ヒューベルトとフェルディナントは食堂に向かって足を運んだ。

    晩餐会ではハーブを付けた山鳥の焼き物が出された。フェルディナントは料理人の腕をほめながらヒューベルトと楽しく会話した。食後はフェルディナントが特に好きな東方の着香茶が用意された。万全を期して準備したとは言えないが、この程度はなかなか良い接待だった。それが最も問題だったということに気づいたのは、食事を終えてからかなり後のことだった。

    どこかすっきりしない気持ちを抱えたヒューベルトは、暗い廊下を通ってフェルディナントが過ごす部屋のドアにノックした。やがて快活な返事とともにフェルディナントがドアを開けた。

    「ヒューベルト」

    明るい笑みがあふれるその顔をしばらく見ているところだった。ヒューベルトの手に持った燭台の光が揺れ、フェルディナントの顔に影を落とした。

    「部屋に入ってもいいですか」
    「ふふ、もちろん。君を待っていたんだ」

    フェルディナントはヒューベルトが入るようにドアを大きく開いた。部屋の中には、まだ片付けていない荷物と鞄が開け放たれたまま、あちこちに置かれていた。

    「荷物を整理していらっしゃいましたか。遠くまで足を運んで下さって随分疲れてるはずなのに、休む時に突然訪ねる失礼を…」
    「失礼だなんて」

    フェルディナントはヒューベルトの手をぎゅっと握った。ヒューベルトがその動きにどぎまぎしたせいで反対側の手で持っていた燭台が揺れた。

    「フェルディナント殿、燭台が···」
    「あ、悪い」

    フェルディナントは退いて手を離した。

    「コホン、何か用でもあるか?」
    「...」

    別に理由などなかった。

    「どこか不便なところがあるかと...」
    「ああ、大丈夫だから心配しなくてもいいよ」

    これで用済みになってしまった。ヒューベルトはさっきフェルディナントが捕まえたところが妙に気になって、あの夜の感触まで思い出した。

    一日中馬を走らせてエーギル邸を訪れたその日、二人は互い気持ちを確かめた。フェルディナントはヒューベルトが眠るまで手をつないで話し合った。その日の記憶が指の節々の感触として残っていた。できればフェルディナントと再び手を繋ぎたかった。心が通じ合った相手とは何をすればいいのか。ヒューベルトにはそういう経験が全く無かった。知識だけはあった。けれども、知識だけで体は動かなかった。ただ手を握るわけにはいかなかった。ヒューベルトはフェルディナントの行動を思い出してみた。おおらかな行動でない方なら、手をつなぎたいと相手に言うのが先であることをやっと思い出した。だが、その言葉がのどを通るばかりで、唇が離れなかった。

    「それなら…旅の疲れが癒されるためには早く寝なければなりませんね。フェルディナント殿、ゆっくり休んで下さい」

    ヒューベルトが口を開けてフェルディナントに伝えた言葉は、夜の挨拶が限界だった。「用件」を終えて帰ろうとするヒューベルトをフェルディナントが引き返した。小さく笑う息づかいが顔に届いた。

    「ヒューベルト、君さえよければ…」

    あとから続く言葉はよく耳に入らなかった。耳に耳鳴りでもするかのように、一瞬、気が遠くなった。それでもヒューベルトはうなずいた。フェルディナントの左手はヒューベルトの手の甲に触れ、右手はゆっくりとヒューベルトの頬をかばった。全身の毛がよだつようだった。ヒューベルトの左頬にフェルディナントの右頬がそっと当たった。かすかに頬と頬が押されているようだったが、最後にフェルディナントの唇が触れた。

    「おやすみ、ヒューベルト」

    耳元にくすぐったい囁きを植え付けて、フェルディナントの体がヒューベルトから離れた。 慌てた様子を見せるヒューベルトの表情をうかがうために彼の名前を呼ぼうとしたフェルディナントは、胸倉が強く引っ張られてヒューベルトの体に飛びつくようになった。 ヒューベルトとぶつからないように手を伸ばした。部屋のドアがガタガタと音を立てた。 フェルディナントの手よりも、ヒューベルトの背中がドアとぶつかる音が大きかった。両腕の中にヒューベルトを閉じ込めたような姿勢になったフェルディナントは、この単純な事故がどのようにして起きたのかをすぐ把握することができた。ヒューベルトは衝動的にとらえたフェルディナントの服をそっと手放した。

    「大丈夫か?」
    「はい…」

    ヒューベルトは深いため息をついた。フェルディナントはつい唾を飲み込んだ。ヒューベルトのゆっくりした低い音声が息と共に顔に触れてきたからだ。

    「ヒューベルトもしかして…」
    「今、それは…フェルディナント殿には日常的なことですか」
    「やっぱり驚いたね。ごめん」

    グッドナイトキス一回で敏感になったヒューベルトをどうやって宥めればいいか。秘密の言葉を交わしているわけでもないのに、ヒューベルトは慎重に見えた。

    「当然ヒューベルトにしてあげたいから…しただけだ」
    「左様ですか」

    フェルディナントにとってグッドナイトキスはそれほど大したものではなかった。幼い頃から両親や乳母からもらい、自分が兄弟や甥にもやってあげたりした。家族ではない他人にしたことは珍しいが、少なくともフェルディナントには日常に近い行動だった。しかし、ヒューベルトにはそうではなかった。それにしても単にぎこちなく不慣れなだけだろうか、フェルディナントはヒューベルトの目をのぞきながら口を開いた。

    「ヒューベルト、君も私に触れるとドキドキするんだよね?」
    「…もう…」

    しばらくじらしていたヒューベルトは、ちっと舌打ちした。

    「もうさっきから騒がしく胸がときめいているのに、そのことを知らないふりをしてわざわざ私に聞くんですか」

    頬が一瞬で熱くなって、燭台が近すぎるのではないかとフェルディナントは思い、ヒューベルトの右手を確認した。できるだけフェルディナントに当たらないように遠目に燭台を持っている彼の右腕が、かわいそうに見えた。

    「ハハ...それは...私も自分の心臓の音で騒がしくて...」

    フェルディナントはドアについた手の力を抜いた。自然に両腕がヒューベルトの肩に届いた。

    「フェルディナント殿、燭台が···」

    フェルディナントはフッと吹き、ろうそくの火を消した。ヒューベルトは暫くぽかんとして火が消えたろうそくを見た。

    「ヒューベルト」

    薄暗い部屋から光源が一つ消えると、とっさに周りが暗くなった。今の明るさに目が慣れる頃、ヒューベルトが答えた。

    「はい」
    「.....君を抱いても良いか」
    「はぁ…」

    ヒューベルトは頭をもたげながらため息をついた。

    「今の姿勢と大きく変わることはないと思いますが...いいですよ」

    ドアにもたれた背をはなして半歩フェルディナントに近づいた。
    いつぶりの抱擁だったか。ようやく伝わる相手の心音。誰の物とも言えない激しい鼓動が全身を揺さぶるように広がった。優しく触れてくるフェルディナントの髪の感触が懐かしかった。ヒューベルトはフェルディナントの背中を抱きしめて目を閉じた。

    「ヒューベルト…」

    フェルディナントの声がヒューベルトの腹の中にも響いているようだった。

    「もしかして他のことを期待してた?」
    「 .......どうしてそう思いますか?」
    「さっきあまりにも露骨にため息つかなかった…?」
    「期待していたというよりは、間違った予想をしていただけです」

    グッドナイトキスで頬に唇が触れたのだから、その次は口付けだと思うのはとても自然ではないか。ただ、ため息の意味は、フェルディナントが考えているのとはやや違っていた。

    「では、ヒューベルト、君にキスしてもいいか?」
    「はあああ.....」
    「なんでまたため息をつく?! 君がいやならやらない」

    フェルディナントはヒューベルトの顔をまっすぐに見た。ヒューベルトは眉間にしわを寄せていた。

    「正直よくわかりません」

    困った顔をするヒューベルトを見て、フェルディナントも一緒に眉を落とした。

    「手を握りたいとか貴殿の髪を触りたいと思ったことがあります。もしかしたら、こうやって抱きしめたいという気持ちも分かっています。世間でキスが持つ意味ももちろん知っています。でも、それを私個人の欲望にするのは、やはり別問題です。私がそんな状況に置かれるなんて、なかなか考えにくいですな」

    手と手が触れることと唇と唇が触れることの違いとは何だろう。何がそのような意味を作るのだろうか。そんな些細なことを知る必要のなかったかつてのヒューベルトと違い、今日のヒューベルト、すなわちフェルディナントを前にしているヒューベルトは未知の領域に足を踏み入れる一歩前に居た。そんなぎりぎりの綱渡りが、まもなく終わるだろうという予感がして、自然に緊張するようになったのだ。

    「...やったことないから知らないのは当たり前だとも思う。一応やってから考え直してみるのはどう?」

    フェルディナントが出したのは一言半句も反論できない明快な解決策だった。ヒューベルトは頷いた。フェルディナントはヒューベルトをしっかりと抱き締めてソファーに導いた。あえて移動する必要があるのかと、怪訝な表情で聞くヒューベルトにフェルディナントはこう答えた。

    「…経験上、最初は座ってやった方がよかった」
    「そうですか」

    フェルディナントは生まれて初めて気に入った相手とキスをした時、足がほぐれてその場で座り込むところだった。ヒューベルトがそういう説明を求める人ではないことに彼はほっとした。フェルディナントは左手でヒューベルトの手を、右手で彼の肩を握った。意外に従順なヒューベルトの態度に安心する一方で、キスしてから本当に何も感じなかったらどうしようと心配になってきた。目をつぶって待っていたヒューベルトは、黙っているフェルディナントを見るためにそっと目を開けた。その瞬間、フェルディナントの唇がヒューベルトの唇に触れた。

    「ぷはっ…」

    フェルディナントは我慢していた息を吐いた。ヒューベルトは微動もせず、自分の唇を指でいじった。唇をそっとつけて離れようとしたが、緊張のあまりめちゃくちゃに唇を押し込んでしまったのだ。フェルディナントは子どもに無理やり唇を近づけた親戚の大人になったような気がした。どうしても感想を聞くことができなかった彼に、ヒューベルトが逆に質問を投げかけた。

    「いかがでしたか」
    「うむ…?私に感想を聞くの?」
    「はい。先にお願いしたのはフェルディナント殿でしたから。貴殿が期待していたことと合っていましたか?」
    「君と初めてキスしたから...それ自体ですごく嬉しいが...」

    言葉尻を濁すあまり口をきっとつぐんだ。本来の意図ではもっと軽く、いや実はもっと真剣に取り組んでいたかった。しかし、キスした相手、ヒューベルトは好き嫌いも表さず、まるでこの行為を分析する態度を取っていた。フェルディナントはその態度について何かもう一言言いかけたかったがすぐやめた。口を尖らすフェルディナントを注意深く見ていたヒューベルトが先に聞いてきた。

    「キスする時···必ず目を閉じる必要はないんですよね?」
    「そうだな」
    「それでは今度は私がやってみます」

    目を開けているか閉じているかは自由だとし、ヒューベルトは目を開けていると宣言した。 ヒューベルトの唇に止まっていた親指がフェルディナントの唇に触れた。ゆっくり近づいてくるヒューベルトの慎重な表情を逃したくなかったが、鼻が触れそうな距離まで顔が近付くと反射的に目をつぶってしまったフェルディナントだった。ヒューベルトの鼻から出るやや荒い息づかいがそのまま肌に触れた。最初の口づけよりは少し長くお互いの唇に留まった。 フェルディナントは今すぐにでもヒューベルトの頭を抱きしめたかった。しかし待つことにした。ヒューベルト自らキスの意味が見出せるまで。

    「……どうだった?」

    今回は聞くことができた。

    「確かに手を握ることとも、抱擁とも違うというのはもう分かりました。もしかしたら…」

    ヒューベルトはフェルディナントの髪をやさしく包み込み、そこにキスした。
    食べ物でもない対象に口をつける行為が、どうして愛情表現とみなされるのか。唇と顎、歯、舌を使って対象の感触や味を確かめたいという行為は、幼児によく見られる特徴でもある。人はそれよりずっと複雑な表現方法と認識手段と基準を習得し、また使用することができても、根本的な認識方法を捨てられないのだろう。その脈絡からすると、すべて同じものかもしれないと考えるようになった。関心を持って愛情を抱いた対象に手を当てて触れること、その対象の名前を呼ぶこと、唇を当てること。広く見れば、その意図は同じである。 違いがあるとすれば、違う形の刺激を与えるという点だ。

    「これから何回か試みると理解できると思います」
    「それは本当に嬉しい話だ」

    フェルディナントはヒューベルトにもっと深くキスする方法を教えた。唇が触れるという点では大きく変わっていなかった。しかし、フェルディナントが教えてくれたやり方でキスすれば、唇よりももっと多くの面積の身体部位が触れたり下がったりを繰り返すことができた。ヒューベルトがこの過程を経て、キスのことを考え直し始めた頃、皮肉にも頭で何も考えられなくなった。

    ソファーの背もたれに寄りかかって互いを支えていた二人の体は、いつの間にか片方に重心が傾き滑るように横になった。フェルディナントがヒューベルトがソファーに横になるまでに少しずつ押し付けたのだ。

    「あっ.....はぁ…」
    「はぁ…はぁ…」

    長い間くっついていた唇が落ち、嘆声に近い息が漏れた。唇はもちろん、口の周りにつばをいっぱいつけていることも知らず、ヒューベルトは短く荒い息を吐いた。きちんと呼吸ができるようになると、だんだんと途絶えていた思考も働くことが出来た。

    フェルディナントは驚くほど柔らかくのびのびと動いていた。むしろ荒い動きでヒューベルトを頑なに押したり追い込んだりしていたら、途中でやめるのに適当な時を見つけることができただろう。フェルディナントは唇と唇を触れ合える数十、数百の角度を知っているようだった。その中でヒューベルトにぴったり合った暗号を合わせるために何度も門をたたいたようだった。くすぐったい感じが走ったのは唇の先だけではなかった。当ててばかりいた口をそっと開けて、ヒューベルトの唇を吸い込みながら、小さいけれど音がし始めた。お互いの呼吸だけで静かだった部屋がすぐに「ちゅっ」とする音でいっぱいになった。音が与える刺激に神経が震える感じを受けたヒューベルトが大きく息を吸うために口を開けた瞬間、自分の口に入ろうとするフェルディナントの湿った舌を認知した。その時からはまともな事故が出来なかった。差し迫ってくる刺激を受け入れることと息をきちんとすること、この二つを同時にする必要があったが、両方とも口を媒介にして行われる行為だ。ヒューベルトはどちらも上手くやり遂げられないことを認めてしまった。彼はフェルディナントが与える刺激を相殺するために必死に舌を動かして彼の動きを模倣するしかなかった。初心者にとっては非常に優しいフェルディナントだったが、彼もやはり興奮した様子だった。下手な抵抗とあふれる刺激に答えようとする努力をすべて溶かしてしまう勢いで、彼はヒューベルトの口の中をゆっくり占領していった。
    ソファーに横になってしまったのはその頃だったようだ。 ヒューベルトはこの行為が呼吸を制御し、思考を遮断する力比べに近いと頭の中で整理した。一方で興奮して呼吸が荒くなったフェルディナントを見上げることが特に気に入った。

    「ヒューベルト…」

    フェルディナントもヒューベルトも激しいキスの途中、唇が離れるたびにお互いの名前を何度も口にした。フェルディナントの熱い手のひらがまだヒューベルトの顔に残っていた。 ヒューベルトは手を伸ばして彼の首を引っ張った。豊かなくせ毛が手に触れた。このすべてが本質的に同じ行為に違いない。ただ、刺激はそれに相応するより大きな刺激を求めてきた。

    「ソファーに座っていて良かったです」
    「あはは…」

    照れくさそうに微笑んでいたフェルディナントはヒューベルトに全身を寄せた。ヒューベルトはこの重さを覚えておきたくなった。フェルディナントがかつて話したことのある「お互いに同じ気持ちであることを知ること」が何なのか、どんな感じなのか、今のヒューベルトなら分かった。この関係に雄大な目的地なんてあるはずがない。ただ限りなくお互いに向かって意味を取り交わす過程なのだ。

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