ネイビーとグリーン出勤の支度をする水島の前で、金森は手持ちのネイルを並べ始めた。
「どの色が良いと思う?」
「ネイルは分からん」
「そう言うと思ったわ。ならどの色が好き?」
「自分の好きな色を選んだらいいんじゃないか?」
「今日はアンタに選んで欲しい気分なの」
「……」
にこにこ笑顔で食い下がってくる金森とは対照的に面倒くさそうに表情をしかめる水島は、ほんの一瞬だけ視線をネイビーに向けて、合理性が働いた指でグリーンを指す。
「この色なら髪色と補色になる」
「なるほど、良いチョイスね」
ありがとう、とお礼を述べた金森は化粧台のある部屋に戻ってしまった。
「先に行ってるぞ」
一言声をかけて部屋を出る。直通のドアがある駅までは少し遠いが歩けないほどではない。
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