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    kmkz310_gtk

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    病弱美少年シャオ捏造話です、マジで捏造。たぶん続く。

    病弱美少年シャオ捏造話この話は、私が墓まで持っていこうと思っております。本来ならば、私は口封じのために殺されてしまってもおかしくない立場でございました。しかし、将軍様の御慈悲で生かしていただいております。ええ、あの方は、数々の武勲を立てた勇猛さで尊敬されておりますが、性根のお優しい方なのです。

    私は若い頃、大変名誉あることに、シャオ様のお母上の侍女しておりました。私の仕える奥様は、美しく聡明でお優しい方でございました。そして、旦那様の奥様方の中でも最も家柄がよく、ああ、私は政治のことはよく分かりませんが、そのことは旦那様にとって一番重要なことであったのだと思います。旦那様は、奥様に対して丁重に接しておられましたが、愛していたのは奥様の家柄だったのではないかと、密かに私たちは思っておりました。

    奥様がご懐妊されたとき、シャオ様がお産まれになったとき、私たちは誰もがホッとしたことを覚えております。奥様はもともと丈夫な方ではなく、後継の男児を切望されている旦那様に応え、何度も出産できるような身体ではございませんでしたから…
    シャオ様にはご兄弟がいらっしゃいましたが、旦那様はシャオ様を後継者にすることに拘っておられました。奥様の家柄のことがあったのでしょう。

    私は、乳母係の侍女と一緒に、シャオ様の養育係を申し付けられました。
    幼少のシャオ様は、それはもうお可愛らしく、まるで女の子のようでございました。今の厳(いかめ)しい将軍様からは誰も想像できないでしょう。あの立派な角も、小さい頃は触れれば折れてしまうような、細やかなもので、シャオ様の腹違いのお姉様方が戯れに小さな花を飾り付け、かわいいかわいいと持て囃すものですから、恥ずかしがり屋のシャオ様は真っ赤になってお部屋に閉じこもってしまうのでした。
    シャオ様は奥様と同様、お身体が丈夫ではありませんでした。シャオ様を立派な軍人様に育て、跡を継がせたい旦那様は国中から医者を呼び寄せ、シャオ様の体質を改善させようとしておりました。中には医者とはいえない怪しい者もおり、よく分からない施術を受けて余計苦しむシャオ様を見て、奥様も私たちも心を痛めておりました。心優しいシャオ様は、父上の期待に応えようと文句も言わずに耐え、そのような健気な姿を見て私たちは何ができましょうか。ただただ、見守ることしかできませんでした。
    奥様は、シャオ様をご出産されてからますますお身体の具合が悪くなり、ほとんどをベッドで過ごされておりました。この頃は、旦那様とはほとんど会話もなされていなかったように思います。
    当たり前ですが、奥様はシャオ様のことをとても心配されておりました。旦那様からの重圧に押しつぶされそうになり、他のご兄弟からの嫉妬や嫌がらせを受けながらも日々の鍛錬や治療に耐え、同年代のお友達を作ることもできず孤独に過ごされるシャオ様を可哀想に思われた奥様は、シャオ様の慰めになるよう、可愛らしい獣を贈られました。
    ふわふわとした毛に覆われ、賢そうな瞳をしたその獣は、最初はシャオ様の両手に収まるほどの大きさでしたが、すぐに大きくなり、クンクン鳴きながら常にシャオ様の後をついて回っておりました。シャオ様はたいそう可愛がっておりました。思えば、シャオ将軍の一番最初の忠実な部下はあの獣だったのではないでしょうか。
    しかし、嗚呼!なんということでしょう。悲劇が起こったのです。いつものように鍛錬のために旦那様の元へ向かわれたシャオ様が、血まみれで戻っていらっしゃったのです。私たちは、最初、シャオ様が大怪我をされたのだと思い、驚き、混乱しました。しかし、よく見るとそれはシャオ様の血ではありませんでした。俯いたシャオ様が、小さい声で「父上…が、ぼくに…」と、あの獣の名前を呟き、そして静かに涙を流しはじめて、私たちはすべてを察しました。あの獣の血です。あの可愛らしい、シャオ様の忠実なしもべを、旦那様はシャオ様に殺せと命令されたのです。その獣がお前の弱さの根源だ、と。その時のシャオ様は、旦那様に逆らうことなどできませんでした。誰が責めることができましょう。避けることのできない悲劇だったのです。
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