可哀想に
目の前にいる群青色の彼は口を半開きにしながらぼーっとしている
きっと毎日の様にガブ飲みしている薬が無いせいだろう
あと、大好きな子供からかけ離れた孤島で俺と2人きりなせいでもあろう
ああ、可哀想なアユム君 1人の神父として俺は彼を救わなくちゃな
「アユム君、ほらお水飲まないと」
「…なんで、僕に優しくするんですかあああ…」
あ、これ 多分薬無いせいで…
「ちゃんと水飲まないと体調壊しちゃうよ」
「うっ…うっ…あ、覚さんだけは…僕の味方でいてくれるんだ…」
何やら変な勘違いをされてるようだが一応ビジネスパートナーとして揶揄う…仲良くさせてもらってるのだから、まあ良いだろう
「ぼ、僕、こんないきなり…目が覚めて、気がついたら何も無い孤島で…」
「うんうん」
「あ、覚さんは僕、僕だけに、こんなに良くしてくれて…」
「うんうん」
「いつもはうっとおしいのに、こんな時だけよく…」
「…」
「うっ、ううう〜〜〜ッ……!!!」
「うわ汚っ、じゃなくてほら ハンカチ使いな?」
「あっ、あうっ、ありがとうございますっ……ズビッ…」
貸した(絹素材の高い)ハンカチが鼻水と涙だらけになったのは置いといて、彼も余程ストレスが溜まっているのだろう
8割は俺のせいだと思うけど
この孤島に2人きり、という状況に至るまでのアレコレは省くがまあ大変だった
まあ、大変なのはこれからの状況なのだが
食料や水分、汚れた体と服をどうするか
この隣にいる俺のハンカチをグッチャグチャにしているアユム君(本名 猗夜真鷚 実年齢23歳)をどう働かせるかとかね
…まあ俺は特級呪詛師だからなんとかなるであろう
「…そ、そういや覚さん…」
「ん?」
「今から、ど、どうするんですか?」
どうやら彼も同じ事を考えていたらしい
「どうするもこうするも、君は大嫌いな俺と協力して頑張るしかないよ」
ニッコリ、とアルカイックスマイルで応える
『いやだ…』と顔に出している彼の顔がとても面白い
「…ホント、なんでこんなことにぃ…」
「仕方ないよ、今日から俺と一緒に頑張ろうね なに、いつもしてる事と変わりないよ 君は俺の為に頑張ってくれたらいいだけだからね」
ギュッと彼の手を両手で握る
また『いやだ…!!』の顔をしている
俺のことが大嫌いな彼だ
多分、落ち着いたら「帰りたいです!!!嫌です!!!いーーやーーだーー!!!僕、覚さんの為に毎日毎日身を粉にして頑張ってるんですよ!?!?!?ワーーーーッッッ!!!」とか言い出すんだろう
「…か……」
「か?」
「か、帰ったら、これ、時給分貰えますか…?」
………いやチョロいなコイツ…
(「覚さん!!!森奥に人が!!!」
「いや居るわけないじゃん何言ってんの」
「いたんですって!!!変な前髪の人が半裸で!!!」
「何言ってんの?」)