主従逆転「よいか?今からそなたが主で余が従者だ」
その言葉に眩暈を覚える、一体何故こんな事に。
ディオンは普段からわがままを言うタイプではない、だから望みがあるのならば何であろうと叶えてやりたいと確かにテランスは思っていた。しかし此度のディオンの望みにテランスは素直に頷く事が出来なかった。
「公務として、では駄目なのですか?」
「余が自ら視察に赴いたとあらばありのままを知る事は出来まい。」
ディオンの言っている事は正論でテランスには言い返す言葉が無かった。彼はこの国の現状を知るために視察に行きたいと言った、ありのままのこの国の現状をこの目で見て知りたいと。ディオンはこのザンブレクの皇子であり民衆や部下達から崇拝にも似た信頼と敬愛を寄せられる人物である、そんな彼が公務で訪れるとあらば街を上げての歓迎が迎える事など想像に難く無い。ディオンが知りたいのはありのままだ。
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