怪談薫
現場から自宅まで結構な距離があったので、その日はタクシーで家まで帰った。料金を支払い降りたんだが、運転手はドアを閉めようともせずその場に留まっている。
何か要件があるのかと声をかけると、運転手は「あれ、お連れの方は…」と空の座席を振り返った。僕は今日一人で乗ったので連れなどいるはずもないんだがな。顔色を悪くしながら彼は「失礼しました。勘違いだったようですね。」とドアを閉めて車を発進させた。
その後部座席に、髪の長い女の頭が見えた気がしたが、いや見間違いだろう。
翼
この間ものすごく天気の悪い日がありましたよね。その雨音に弟と妹が怖がって、その日は一緒に寝ることになったんです。
それで、さぁ寝るぞって時に二人がものすごい怯え方をし始めました。どうしたんだろうと思ったら、「ベランダに誰かいる」って言い出して。思わずそっちを見たら、カーテンの隙間に裸足の子供の足が見えたんです。
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