神様は死んだ、って。ドラケンが、死んだ。
何も聞かされていなかったオレに飛び込んで来たのは、思ってもみなかった訃報の知らせだった。
東卍が解散してから自分の夢をガムシャラに追い続けてきた。バイクいじりが好きだったドラケンも好きな事を生業にして、順風満帆とは中々行かないけどお互い良かったな、なんて話をして。
全てが順調だと思っていた。喧嘩から足洗って、カタギとして生きて、それがこれからも続くと思っていた。
葬式の時に久々に会ったイヌピーは、オレに事の経緯を話してくれた。梵に入っていた事、敵の銃に撃たれて死んだ事。
一人、マイキーを諦めていなかった事。
何も知らなかった。聞かされていなかった。
同じ龍を頭に刻みながら、オレはドラケンの力になれなかったのだ、とその時に悟った。
話を聞いている間、涙は出なかった。いや、訃報を聞いた時から涙なんてものは出なかった。信じられなかったのだ、死んだという事実そのものが。
厳かな雰囲気に包まれた式場に足を踏み入れ、啜り泣く人々を掻い潜り、死体が納められた棺の中でまるで眠るように目を瞑り収まるドラケンの姿を見た瞬間、初めてこの世にアイツがいなくなった事を実感して膝から崩れ落ちた。
流れないと思っていた涙が、自然と頬を伝って流れ落ち、その時初めてオレはようやくドラケンの為を思って涙を流した。
そこからは止めどなく溢れる涙が止まらない。今だって、その姿を思い出すだけで雫が目から溢れ出てくる。
ドラケンは、オレの中であまりにもデカい存在だった。
初めて尊敬した人間だった。初めて背中を預けた戦友だった。ガキの頃から一緒に育ったようなもんで、良い事だって悪い事だっていつも一緒だった。
オレの生きる指標は、いつだってドラケンだった。
心が抉られるような感覚に陥る。何故、どうして、そんな事を自問自答した所で答えなんて出ないのは分かっている。それでも、誰かに問いたくなる。縋りたくなる。そんな時に思い浮かぶ顔すら、アイツなのだ。やるせない気持ちが胸の中で渦巻く。
一対の龍を失った今、感じる喪失感。
それはまるで、居場所を奪われようで。
神様というやつは時に残酷だ。祈った所で帰ってくるはずもないアイツを思い、今日も零れそうな涙を上を向いて堪える。
太陽も、月も、星も、セピア色に染まる。
ドラケンのいないこの世界は、色の持たないまるでモノクロの世界のようだ。
満たされない心を抱え、今日もオレは生きている。