Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    ryrinrin

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 3

    ryrinrin

    ☆quiet follow

    数日前に盛り上がってたムンナイ導入から広がったただの妄想。天道の元カノに思う事はないけど、天道の初めてが自分じゃない部分に思う事がある桜庭はいる。絶対。

    Stardust.それは初めて身体を重ねた日、桜庭がボソリと言った一言だった。

    元医者らしくこういった事は不用意に行うことではないと、ムードもへったくれもなく説き伏せられてへいへい、なら桜庭が思うようにしてくれと手を上げて降参した。
    男同士なんてやり方はさっぱり分からない、けど桜庭はそういった知識も何となくは持ち合わせているんだろう。それに、きっと俺は桜庭を抱く方。桜庭は抱かれる方。話し合いが無くとも流れる雰囲気からそう察した。
    抱かれる側の方が、負担は恐らく大きい。なら桜庭が苦痛にならないように、桜庭自身が思うようにさせてやった方がいいと、初夜までの主導権を向こうに委ねた。
    何事も計画の上で完璧にこなそうとする彼奴らしく、桜庭は二人のオフの日までを計算してわざわざ日時に場所まで指定してきた。
    そうして迎えた当日、よろしく頼むとお互いベッドの上で向かい合い頭を下げて本当にムードも何もなく始まったその行為だったが、結局好きな人の身体を前にしたらそんな事も関係なくその甘い雰囲気に酔いしれて、余す事なく桜庭の身体を暴いた。
    俺の下で乱れる桜庭はあまりに綺麗で、可愛くて、愛おしくて、快感を拾って流れる涙一滴すら勿体ないと思う程。その涙を指で、唇で掬い上げてはなるべく優しく労るように、それでいて全ての愛をぶつけるように桜庭の身体を抱いた。
    お互いグズグズになるまで抱き合って、気持ち良くなって、そうして果てて、初夜にしては上出来な位の時間を堪能して、愛おしさを募らせたまま昂った熱が徐々に引くのを感じていた時、俺の腕の中に収まっていた桜庭が放った一言は、やっぱりこの雰囲気にはあまり似つかわしくない一言だった。

    「君は抱くのが上手いんだな」
    「え?褒めてんのか?」
    「一応褒めてるつもりだが」

    向き合って抱き締めている桜庭の表情は、特段何かを思っているような表情はなくただ本当に所感を述べているだけであるようで、とりあえず苦痛は無かったのだと言う事だけは読み取れた。
    桜庭のその一言は、そういう事なんだろう。とりあえずは安心して良さそうだ。

    「君は昔付き合っていた人がいただろう」
    「あー…まあ、それなりには」
    「だから手慣れているんだろうな」
    「えっなに。桜庭ちゃんヤキモチ?」
    「違う。別に付き合っていた相手がいた事はどうでも良い」
    「そこはちょっと位妬いてくれてもいいじゃん…」

    ふいっと顔を背けてモゾモゾと俺の腕の中で身体を反対側へと向けた、桜庭の後頭部を眺める。
    毛質が細く艶のある黒髪が綺麗で、俺より身長が数センチ高く普段は見られない旋毛がまじまじと見られるのはこうして二人で眠る時位だ。こうして素直に俺の腕の中に収まる桜庭は、可愛いと思う。
    まるで猫のように気まぐれで、こうして腕の中に大人しく抱かれている事は早々ない。大抵、鬱陶しいとこの手を振り解かれる事が凡そ八割。今日は雰囲気もあるのか二割の中に入ってはいるが、これも今の会話で解消される可能性もある。
    それは嫌だなぁ、とつい腕の力を強めると表情の見えない桜庭からの一言に俺は驚く事となった。

    「ただ…君の初めてが僕じゃない事が少し寂しいだけだ」

    ボソっと小さな声で言った桜庭はもう寝る、とその体勢を寝る体勢へと切り替えようと収まりの良いポジションを探して体を動かした。
    いやいや、ちょっと待て。そんな爆弾発言をして俺を置いていくな。
    確かに誰かと付き合ったのも、その上での様々な行為も初めてではない。キスも、それ以上も。
    それに対して桜庭は、全てが初めてだった。誰かと付き合う事も、キスも、今日のような行為も。
    それがあけすけに言葉にされて、愛おしさの上に優越感が上乗せされる。
    俺の恋人がこんなにも愛おしい。男からみても男前で、綺麗で、可愛い。
    このまま一人取り残されて寝られる筈がないだろう、とほんの少しの抵抗心で桜庭の頭に額をグリグリ押し付けた。

    「お前そんな可愛いこと言い放って寝るのは卑怯だろ…!」
    「煩い。何も卑怯ではないだろう。僕はもう疲れたから寝る」
    「ええー…俺を置いて寝んなよ…」
    「喧しい。君も早く寝ろ」

    そう言って桜庭は、抱き締める俺の腕を少し抓った。地味に痛い。でもその痛みすら今は愛おしい。
    そうして程なくすると桜庭は一人夢の中へと旅立った。よっぽど体力を消費したのか、すぅすぅと規則正しい寝息が聞こえてくる。

    なぁ、桜庭。確かに俺はこういう事するの初めてじゃないけどさ。キスも、それ以上の事も、こうして二人で同じベッドで眠る事も、幸せだなって感じたのはお前が初めてだよ。
    この幸せは桜庭が初めて教えてくれた事なんだ。
    きっと桜庭もそうなんだろうな。こうやって二人でさ、二人だけの初めてが増えていくといいな。

    段々と迫り来る眠気が瞼を下ろそうとする。微睡みの中、俺は桜庭の体をもう一度抱き締めた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works