ティンときたやつの供養のやつ。「おっさんって"エイユウ"なの?」
── そう言われた時、体温が少し下がるのを感じた。
その冒険者と出会ったのはザナラーンの片隅で、サボテンダーに生きたままかじりつこうとする位腹が減っていたらしいのをぎりぎりで止めたのが最初だった。
初心者冒険者らしくズタボロの装備で地図を変な方向に読んでいたのがあまりに不憫だったからつい世話を焼いてしまったら、流れで妙に懐かれてしまった。
おっさん、おっさん、とまぁ無礼も大概だが、それでも自分がどう呼ばれているかよりも単純な【いい人】として認識されているらしいのは随分気が楽だった。
── 自分が英雄などと持て囃され始めてから幾分か経つ。
最初こそ面映い様な気持ちだったが、そこに過度な期待、尊奉、皮肉、畏怖、侮蔑まで乗ってくるのが分ればそんな接頭辞は荷物以外の何物でもない。
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