柔らかめのおそ松の髪が風に揺れる。右手でハンドルを握りながら、トントンと人差し指でハンドルを叩く仕草に、彼の苛立ちなのか緊張なのか、そんなものを感じ取ることができた。
食べ物屋、衣料品、ドラッグストアのチェーン店が立ち並び、時々錆びた歩道橋の下をくぐる。歩道の脇にひょろっとした背の高い雑草が、枯れつつも健気に風に揺れる。多分こんな風景は日本のどこにでもあると思う。でも、今、この席からそれらを見ると、特別なものに見えた。
母さんから頼まれた用事は隣の県の親戚のところに行って荷物を受け取ってほしいというもの。どっかから大量に缶詰をもらったからお裾分けらしい。
「うちは貰えるものはなんでも貰わなきゃ。だって、タダ飯食らいが六人もいるから……」
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