バレンタインデー学パロ鯉月 甘ったるい香りが辺りに漂う。毎年毎年、失敗や成功を重ねながら何度も嗅いだ甘さだ。そこに、これ以上ないほどの恋心と、貴方と幸せになれたならという切ない願望をエッセンスとして加えてやる。
これが果たして美味しいのかどうか、自分じゃあなかなか判断はつかない。毎年流す涙が、甘さを洗い流してしまっているからだろうか。
この鞄には、綺麗に包装されたチョコレートが身を潜めている。今年こそはと張り切って、照れくさい言葉を添えながら渡すつもりで持ってきたはずなのに。それなのに今年もまた、こんなものを彼に渡す訳にはいかないと思ってしまった。
こんな自分が、あんなにキラキラとしている彼の隣を歩けるものかと、自分で自分を罵倒した。鞄の底。空になった弁当箱に下敷きにされているそれが隙間からこちらを覗いているようで、慌てて鞄を閉じて目を逸らした。
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