冥府の夜空 真っ白な玉座が赤く染まってゆく。とぷとぷと溢れる血が階段をつたい、床を這い広がって未練たらしく兄弟の元へと近づく。けれど、それが彼らに届くことはもはや無かった。
主人を失った王の間で、息子達は生者だけに与えられた特権として、その呼吸を荒く響かせていた。
「終わりましたね、やっと」
「ああ」
二人は熱く甘やかな視線を交わし、肩を組み寄り添い合う。それはまるで一つのレリーフのように美しい形をしていた。玉座を背にした彼らの一歩が、冥府の夜明けを告げていた。
勝利を知らされた民衆は喜びに湧き、誰もが人目を忘れて涙を溢した。その光景は、先王の支配がどれだけ民の心を凍てつかせていたかを如実に表していた。
本来であればこれからが正念場、国の立て直しと平和の維持こそが難しい局面とも言えるのだが、功労者達はそれらを承知で一夜の宴に身を任せた。
1978