2022/02/13 春を目前にしたこの季節がなぜかいちだんと冷えこむ気がするけれど、人々がどこか浮かれた調子なのは街全体が赤やピンクのリボンで染められているからかもしれない。以前会った日から少し間を空けて訪れた幼なじみのアトリエは、人払いをしてくれたのか誰もいなかった。静かで落ち着いた空間だけれど、あちこちに見えるのは今まさに進行しているコレクションの一端なのだろう。ここを訪れるとき、よく知る友人の知らない一面に触れるかのようで、槙はいつも背筋が伸びる。この場所は神楽のテリトリーであって、たとえ本人から招かれても許されても、槙は神楽のそこには入れない。それを寂しいとは思わない。そうではなくて、ただ、ここに立っていて恥ずかしくないようにしたいと思うのだ。
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