暁薛ワンドロワンライ お題なし コンビニを出た薛洋は、雨が降っているのに気が付いて舌打ちをした。
傘立てから適当な傘を拝借することにして、シンプルな持ち手の紺色の傘を手に取った瞬間、コンビニの自動ドアが開いて、声をかけられた。
「君、それは私の傘ですよ」
面倒だな、と思いながらも薛洋はとっさに笑顔を作って振り返った。
「悪かったよ、お兄さん。俺の傘にそっくりだったから間違えたみたい。あーあ、俺の傘はどこに行ったんだか……。きっと、悪い奴に持っていかれちゃったんだな」
薛洋は、大仰に肩をすくめつつ、声をかけた男に傘を返した。
傘の主は、すらりとした高身長で、清潔感にあふれる身なりをしていた。優し気な雰囲気と凛とした空気が同居する、美しい男だ。
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