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    ナンデ

    @nanigawa43

    odtx・dcst・ユニオバ

    何でも許せる人向け 雑食壁打ち

    ☆こそフォロ 絵文字で応援する 🐣 🐴 🐬 🐐
    ポイポイ 84

    ナンデ

    ☆こそフォロ

    龍スタ

    2人のデートに毎回誘われて一緒に行くゼノと、誘われるけど「それって変じゃない!?」と断固抵抗の意思を見せるSAIお兄ちゃんの話です。

    家族写真は今度こそ笑顔だけで「え、ヤダよっ」
     七連勤を果たして休日、着替えもせずにベッドの上でまどろんでいたSAIの元に騒がしいの代名詞である弟がやってきた。それも、麗しの恋人を連れて。
    「なぜだ?今日は休みだと千空に聞いている。SAIも見たいと言っていただろう、去年スイカたちが話していた藤棚だ」
    「言ったけどっ!」
     掛け布団を掴んで離さないSAIの腕を、龍水がぐいぐい引っ張る。SAIは弟の斜め後ろに立つ、麗しの恋人に(この名称はSAIの感想ではなくて、SAIの勤める第三研究所の復活者の面々がつけたニックネームだ。ちなみに龍水のことは龍水坊ちゃん。第三研究所に勤める実に三分の二が旧七海財閥の人間であることが要因だろう)助けてくれと目で訴えるが、涼しげな顔でSAIを助けようともしないし、そもそも龍水を止める気もないらしい。
    「ていうかっ、藤棚って……デートだろうっ?君たち二人で行けばいいじゃないか」
    「デートだからSAIも連れていく」
    「なんで!?」
    「家族でピクニックしてえんだとさ」
     ようやく口を開いたと思ったら、SAIではなく龍水のための助け舟だ。さすが稀代のスナイパー様は援護射撃がたいへんお上手。家族のワードを出されてはSAIもこれ以上強く拒否できない。
    「……家族でピクニック。本家の恒例行事だったっけ」
    「ああ、楽しそうだったな。俺たちは写真でしか様子を伺い知ることはできなかったが」
    「そうだね……」
    「だから行こうっ!フランソワに頼んで弁当も用意した。カメラも頼んだぞ!」
    「もしかしてスタンリーが抱えるそのデッカいのって」
     スタンリーが口角の端を上げる。煙草を吸っていないのは他人の家だからだと思っていたが、単純に手の中の荷物のために手を空けられないからだったのだろうか。
    「五段重だって。さっきちらっと覗いたけど、美味そうだったよ」
    「ねえ、成人男性三人で五段重って……ピクニックは大食い大会じゃないんだから」
    「三人?」
     SAIの手から掛け布団が落ちる。その拍子に龍水は幾分軽くなった実兄を腕の力で引き揚げて、近くに引き寄せた。
    「あのさ……カメラも、用意してるんだよね」
    「ああ、しっかり手配してあんよ」
    「でも、龍水……手ぶらで来てるよねっ?」
    「俺が弁当持ってやってるし、龍水はアンタを抱えてかなきゃだかんね」
    「カメラってどこっ?」
     リン、リーン。弟は鳴らさない、SAIの家のドアベルの音が狙いすましたかのように鳴った。SAIは龍水を見る。スタンリーを見る。部屋のドアを見て「まさか」と呟く。まさかだなんて思ってもないのに。本当は、こう思ってる。
    「やっぱり」
    「何がやっぱりなんだい?というより、もしかしなくても寝坊かな、SAI。きみにしては珍しいね」
     ドアの奥から現れたのは予想通りの見知った顔、何なら実弟である龍水よりも高い頻度で顔を合わせている知己である。Dr.ゼノ、それとも今SAIの部屋の入口に、いつもよりラフな格好で大きなカメラを抱えて立っている男のことはゼノ・ヒューストン・ウィングフィールドとでも呼んだほうがいいだろうか?
    「家族と言ったろう?」
     龍水が満面の笑みを浮かべている。スタンリーはと言うと「遅かったじゃん」「三脚が思ったより重くてね」だなんて既にゼノと談笑を始めている。
    「いや、ゼノは家族……」
     家族じゃない、なんて言い切ることは、SAIには出来なかった。麗しの恋人サマが聞いたら悲しむことを口にしたらどうなる?少なくとも今、この部屋は鳥小屋みたいに騒がしく、弟とゼノのダブルステレオでのマシンガン・トークの始まりだ。さすが稀代のスナイパー様、弾を打ち出すのはいつも君、だなーんてつまらないジョークごと、言葉を胸の内に引っ込めてSAIは休日を諦めた。
    「五分待ってよ、着替えるから」
     SAIが喜ぶ弟の後ろに立つスタンリーに目をやると、弟によく似た顔で笑っていた。なるほど、SAIの今日の予定は、この男が弟の恋人になった時点で決まっていたようなものだろう。さすが稀代のスナイパー、嵐のような実弟の麗しの恋人にして、破天荒な天才科学者の幼馴染を務めているだけはある。狙った獲物は逃さない、決めたことは覆さない。芯のありすぎる人物がまた一人、七海の系譜に加わったわけか。
    「ていうかさっ!ゼノはいいの?幼馴染のデートについていくってさ……」
    「ゼノは毎回誘ってる」
    「この間も三人で靴買いに行ったんだよな」
    「今度はSAI、きみも行こうじゃないか」
    「だからっ!僕は弟のデートについていくのはイヤなんだってば!」
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    作者からのリプライ

    ナンデ

    らくがきアレルノ 通常END後
    貴方の為に生まれた、これは運命 生まれは変えられない。ルノーは自分の生まれた家柄にも、立場にも何の不満も有りはしなかったが、それでも自分の生まれからくる宿命と憧れからくる仄かな夢とを天秤にかけて、夢を諦めたことがある。
    「ルノー、ありがとう。俺を信じてくれて……」
     戴冠式が終わって、夜。熱気の冷めない城下町と違って、グランコリヌの城にあるアレインの部屋にはしんとした夜の空気が満ち満ちていた。ルノーはベッドに腰掛けるアレインの頂きに窓から差し込む月明かりが反射して、天然の王冠のような煌めく輪があるのを、立ち尽くしたまま、見ていた。
    「アレイン陛下……」
     アレインの部屋、とは、呼ばれの通り、彼の自室であった。急遽運び込まれたキングサイズの天蓋付きのベッド以外は、アレインがこの城から去った日のまま、子どもサイズの椅子や、勉強机などが放置されていた。埃は、積もってなかったのだと言う。何も減ったり、増えたりしても居なかったらしい。それはガレリウスの中にいたイレニアが、存在を奪われて尚、最愛の息子の帰る場所を護り続けたのか、それともガレリウスがグランコリヌ城自体にはなんの執着もなく、維持を侍女たちに任せきりにしていたのか。今となっては、もう知る術もない。ガレリウスはアレインが討ち倒し、その過程でイレニアは魂だけではなく、姿形をもこの世から失くした。
    1878

    ナンデ

    らくがき手放したことなんてなかったよ

    前世記憶有り・現代世界転生・年齢逆転のアレルノ
    呟いたものをふわっと小説にしたふわっとした小話なのでふわっと読んでください。ふわふわ。
    千年隣に居させて欲しい、貴方の蒼と魂の ルノーの未練は永くアレインを独りにしたことだった。未練は後悔と混ざりあって執念に変わる。生きていた頃と同じように、ルノーの魂は熱く燃えて、魔法ではなく科学が蔓延り、馬ではなく低燃費軽自動車が走り回る世界に生まれる時に「今度こそ、あの方を置いていきたくない」と大層踏ん張った。その結果が、これだ。
    「ルノー……久しぶり」
    「陛下……」
    「はは、良かった。覚えていてくれたんだな。……もう陛下じゃないし、殿下でもないけど」
     いたずらっ子のように微笑む、かつての恋人は見るからに上等のスーツを着ていた。薄青のシャツに、あの紋章を思わせる濃い青のネクタイをしめている。目元には少し皺が寄っていた。慣れた着こなしと落ち着いた表情は、大人の男そのものだった。問題は、ルノーが着ているのが学生服だと言うことだ。県内でも有数の進学校の創立当初から変わらないレトロな学ランに、夏休み明けに新調したスニーカー。抱えているのは教科書が詰まったナイロンリュックで、これは高校入学の祝いに祖父母に買って貰ってから一年半と少し、大事に使っているものだった。
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