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    ナンデ

    @nanigawa43

    odtx

    何でも許せる人向け 雑食壁打ち

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    ナンデ

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    龍スタ

    2人のデートに毎回誘われて一緒に行くゼノと、誘われるけど「それって変じゃない!?」と断固抵抗の意思を見せるSAIお兄ちゃんの話です。

    家族写真は今度こそ笑顔だけで「え、ヤダよっ」
     七連勤を果たして休日、着替えもせずにベッドの上でまどろんでいたSAIの元に騒がしいの代名詞である弟がやってきた。それも、麗しの恋人を連れて。
    「なぜだ?今日は休みだと千空に聞いている。SAIも見たいと言っていただろう、去年スイカたちが話していた藤棚だ」
    「言ったけどっ!」
     掛け布団を掴んで離さないSAIの腕を、龍水がぐいぐい引っ張る。SAIは弟の斜め後ろに立つ、麗しの恋人に(この名称はSAIの感想ではなくて、SAIの勤める第三研究所の復活者の面々がつけたニックネームだ。ちなみに龍水のことは龍水坊ちゃん。第三研究所に勤める実に三分の二が旧七海財閥の人間であることが要因だろう)助けてくれと目で訴えるが、涼しげな顔でSAIを助けようともしないし、そもそも龍水を止める気もないらしい。
    「ていうかっ、藤棚って……デートだろうっ?君たち二人で行けばいいじゃないか」
    「デートだからSAIも連れていく」
    「なんで!?」
    「家族でピクニックしてえんだとさ」
     ようやく口を開いたと思ったら、SAIではなく龍水のための助け舟だ。さすが稀代のスナイパー様は援護射撃がたいへんお上手。家族のワードを出されてはSAIもこれ以上強く拒否できない。
    「……家族でピクニック。本家の恒例行事だったっけ」
    「ああ、楽しそうだったな。俺たちは写真でしか様子を伺い知ることはできなかったが」
    「そうだね……」
    「だから行こうっ!フランソワに頼んで弁当も用意した。カメラも頼んだぞ!」
    「もしかしてスタンリーが抱えるそのデッカいのって」
     スタンリーが口角の端を上げる。煙草を吸っていないのは他人の家だからだと思っていたが、単純に手の中の荷物のために手を空けられないからだったのだろうか。
    「五段重だって。さっきちらっと覗いたけど、美味そうだったよ」
    「ねえ、成人男性三人で五段重って……ピクニックは大食い大会じゃないんだから」
    「三人?」
     SAIの手から掛け布団が落ちる。その拍子に龍水は幾分軽くなった実兄を腕の力で引き揚げて、近くに引き寄せた。
    「あのさ……カメラも、用意してるんだよね」
    「ああ、しっかり手配してあんよ」
    「でも、龍水……手ぶらで来てるよねっ?」
    「俺が弁当持ってやってるし、龍水はアンタを抱えてかなきゃだかんね」
    「カメラってどこっ?」
     リン、リーン。弟は鳴らさない、SAIの家のドアベルの音が狙いすましたかのように鳴った。SAIは龍水を見る。スタンリーを見る。部屋のドアを見て「まさか」と呟く。まさかだなんて思ってもないのに。本当は、こう思ってる。
    「やっぱり」
    「何がやっぱりなんだい?というより、もしかしなくても寝坊かな、SAI。きみにしては珍しいね」
     ドアの奥から現れたのは予想通りの見知った顔、何なら実弟である龍水よりも高い頻度で顔を合わせている知己である。Dr.ゼノ、それとも今SAIの部屋の入口に、いつもよりラフな格好で大きなカメラを抱えて立っている男のことはゼノ・ヒューストン・ウィングフィールドとでも呼んだほうがいいだろうか?
    「家族と言ったろう?」
     龍水が満面の笑みを浮かべている。スタンリーはと言うと「遅かったじゃん」「三脚が思ったより重くてね」だなんて既にゼノと談笑を始めている。
    「いや、ゼノは家族……」
     家族じゃない、なんて言い切ることは、SAIには出来なかった。麗しの恋人サマが聞いたら悲しむことを口にしたらどうなる?少なくとも今、この部屋は鳥小屋みたいに騒がしく、弟とゼノのダブルステレオでのマシンガン・トークの始まりだ。さすが稀代のスナイパー様、弾を打ち出すのはいつも君、だなーんてつまらないジョークごと、言葉を胸の内に引っ込めてSAIは休日を諦めた。
    「五分待ってよ、着替えるから」
     SAIが喜ぶ弟の後ろに立つスタンリーに目をやると、弟によく似た顔で笑っていた。なるほど、SAIの今日の予定は、この男が弟の恋人になった時点で決まっていたようなものだろう。さすが稀代のスナイパー、嵐のような実弟の麗しの恋人にして、破天荒な天才科学者の幼馴染を務めているだけはある。狙った獲物は逃さない、決めたことは覆さない。芯のありすぎる人物がまた一人、七海の系譜に加わったわけか。
    「ていうかさっ!ゼノはいいの?幼馴染のデートについていくってさ……」
    「ゼノは毎回誘ってる」
    「この間も三人で靴買いに行ったんだよな」
    「今度はSAI、きみも行こうじゃないか」
    「だからっ!僕は弟のデートについていくのはイヤなんだってば!」
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    ナンデ

    DOODLEギャメセレ
    この道も天に続いてる  縁、というものを手繰り寄せてギャメルは報われてきた。妹の病気というこの世の終わりにも等しい絶望に打たれ、人の道を外れた自分のそばに居てくれた親友に支えられ、他人の悲鳴と怨嗟の泥に塗れて形を無くしていく最中に太陽のような王の行軍に救われて、セレストに出会った日、ギャメルは自分が今度こそ裁かれるのだと思った。グリフォンの羽ばたきの音は強く、迷いなく、空を駆けてギャメルに届き、その背に乗る女の子は天使のような風貌をしていた。だからギャメルは可愛らしい天使の口から自分の故郷の状況を聞いた時、王は許しても天はギャメルを許さなかったのだと……そう思った。
    「急いで!まだ間に合う!」
     だけれど、セレストはギャメルの手をひいて、ギャメルの人生の来た道を戻っていく。辿り着いた故郷で斧を奮って昔のギャメルによく似た「奪う者」をなぎ倒していく。病で痩せ細った妹の手を握り、「大丈夫ですよ」と微笑む。巻き戻して、やり直しているみたいだ、とギャメルは思った。自分が歩いた泥の道をセレストが歩き直すと花が咲く。ああ、そうだ。ギャメルはこう生きたかったのだ。妹の前で泣くのではなく笑って、彼女を救い、親友の弓を人でも神にでもなく、正しく獲物に向けて自分たちの明日の糧にするために使わせて、奇跡のように現れた清らかな王子様に罪ではなくおとぎ話を見せたかった。何より、何よりも、ギャメルはセレストにとって素敵な男の人として出会いたかった。朗らかで明るくて、優しくて、真っ直ぐで、心根の美しい青年として、セレストに出会いたかった……。
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